【電力】令和4年(下期) 問4|水力発電の特徴と基礎知識に関する論説問題

水力発電に関する記述として,誤っているものを次の (1)~(5) のうちから一つ選べ。

(1) 水管を流れる水の物理的性質を示す式として知られるベルヌーイの定理は,エネルギー保存の法則に基づく定理である。

(2) 水力発電所には,一般的に短時間で起動・停止ができる,耐用年数が長い,エネルギー変換効率が高いなどの特徴がある。

(3) 水力発電は昭和 \( 30 \) 年代前半まで我が国の発電の主力であったが,現在ではエネルギーの安定供給と経済性及び地球環境への貢献の観点から多様な発電方式が運用されており,我が国における水力発電の近年の発電電力量の比率は \( 20 \) [%] 程度である。

(4) 河川の \( 1 \) 日の流量を,年間を通して流量の多いものから順番に配列して描いた流況曲線は,発電電力量の計画において重要な情報となる。

(5) 総落差から損失水頭を差し引いたものを一般に有効落差という。有効落差に相当する位置エネルギーが水車に動力として供給される。

合格への方程式

水力発電の基本原理と計算式

水力発電は水の位置エネルギーを利用して電気エネルギーに変換するシステムです。

ベルヌーイの定理

水力発電所の水路において、流速\( v \)[m/s]、圧力\( p \)[Pa]、水の密度\( \rho \)[kg/m³]、重力加速度\( g \)[m/s²]、位置水頭\( h \)[m]とすると、ベルヌーイの定理は:

  • \[ h + \frac{p}{\rho g} + \frac{v^2}{2g} = 一定 \]

これはエネルギー保存の法則に基づく定理です。各項は:

  • 位置水頭:\( h \)[m]
  • 圧力水頭:\( \frac{p}{\rho g} \)[m]
  • 速度水頭:\( \frac{v^2}{2g} \)[m]

水力発電所の出力計算

水力発電所の出力や発電量を導出する公式は以下の通りです:

  • 有効落差:\( H = H_0 - h_G \)[m]
  • 発電機出力:\( P_G = 9.8 Q_G H \eta_T \eta_G \)[kW]
  • 総発電量:\( W_G = P_G T_G \)[kWh]

ここで:

  • \( H_0 \):総落差[m]
  • \( h_G \):損失水頭[m]
  • \( Q_G \):流量[m³/s]
  • \( \eta_T \):水車効率
  • \( \eta_G \):発電機効率
  • \( T_G \):発電時間[h]

有効落差について

総落差から損失水頭を差し引いたものを一般に有効落差といいます。有効落差に相当する位置エネルギーが水車に動力として供給されます。

水力発電所の特徴と現状

水力発電所の主な特徴

  • 短時間で起動・停止ができる
  • 耐用年数が長い
  • エネルギー変換効率が高い
  • 燃料費がかからない
  • CO₂排出がほとんどない

水力発電の歴史と現状

水力発電は昭和30年代前半まで我が国の発電の主力でした。その後、火力発電が主力となり、現在はエネルギーの安定供給と経済性及び地球環境への貢献の観点から多様な発電方式が運用されています。

重要ポイント:近年の日本における水力発電の発電電力量の比率は10%未満です(問題にある20%ではない)。

水力発電の計画と流況曲線

河川の1日の流量を、年間を通して流量の多いものから順番に配列して描いたものを流況曲線といいます。これは発電電力量の計画において重要な情報となります。

水力発電所の種類

  • ダム式:ダムを築いて水をためる方式
  • 水路式:河川の途中から水を引き込む方式
  • ダム水路式:両方の特徴を持つ混合方式
  • 揚水式:余剰電力で水を高所に汲み上げ、必要時に発電する方式

🔍 ワンポイントアドバイス: 水力発電の割合や特徴は時事問題としても出題されます。最新の電力調査統計等を確認し、日本のエネルギー構成比率の最新情報を把握しておきましょう。また、流況曲線の概念は水力発電所の計画において重要な要素です。

水力発電に関する問題

水力発電に関する記述として,誤っているものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
(1) 水管を流れる水の物理的性質を示す式として知られるベルヌーイの定理は,エネルギー保存の法則に基づく定理である。
(2) 水力発電所には,一般的に短時間で起動・停止ができる,耐用年数が長い,エネルギー変換効率が高いなどの特徴がある。
(3) 水力発電は昭和 30 年代前半まで我が国の発電の主力であったが,現在ではエネルギーの安定供給と経済性及び地球環境への貢献の観点から多様な発電方式が運用されており,我が国における水力発電の近年の発電電力量の比率は 20 % 程度である。
(4) 河川の 1 日の流量を,年間を通して流量の多いものから順番に配列して描いた流況曲線は,発電電力量の計画において重要な情報となる。
(5) 総落差から損失水頭を差し引いたものを一般に有効落差という。有効落差に相当する位置エネルギーが水車に動力として供給される。
まずはこの問題、水力発電に関する基本的な知識を問う問題やね。
各選択肢を一つずつ見ていこう!
水力発電の基本原理は、水の位置エネルギーを運動エネルギーに変え、
それを電気エネルギーに変換するものやね。
ベルヌーイの定理はどんな法則に基づいてるかな?
ベルヌーイの定理はエネルギー保存の法則に基づく定理です。
流体の速度エネルギー、位置エネルギー、圧力エネルギーの和が一定になるという原理ですね。
選択肢(1)は正しそうです。

解説

正解は (3) です。

各選択肢の詳しい解説:

  • (1) 正しい記述です。ベルヌーイの定理は流体のエネルギー保存則を表す基本法則です。
  • (2) 正しい記述です。水力発電所は起動・停止が容易で、設備の耐用年数も長く、エネルギー変換効率も80%以上と高いです。
  • (3) 誤った記述です。日本における水力発電の発電電力量の比率は約8~10%程度であり、20%程度という記述は誤りです。
  • (4) 正しい記述です。流況曲線は河川の流量特性を示すグラフで、水力発電の計画において必要不可欠な情報です。
  • (5) 正しい記述です。有効落差は総落差から損失水頭を差し引いたもので、この位置エネルギーが水車を回す動力となります。

水力発電は再生可能エネルギーの一つとして重要ですが、日本の電源構成においては火力、原子力、太陽光などと比べると比率は低くなっています。この比率の正確な知識は、エネルギー政策や電気事業の理解において重要です。

この問題のポイント

  • 水力発電の基本原理と特性を理解する
  • 日本のエネルギー構成における各発電方式の比率を把握する
  • 有効落差と総落差の関係を理解する
  • 流況曲線の意味と活用方法を理解する