【電力】令和6年(下期) 問4|原子力発電所で用いられるウラン燃料や連鎖反応の仕組みに関する論説問題
原子力発電に関する記述として,誤っているものを次の (1)~(5) のうちから一つ選べ。
(1) 原子力発電所では,ウラン \( 235 \) を \( 2 \sim 4 \) \( \mathrm{%} \) まで濃縮した高濃縮ウランを使い,エネルギーを取り出している。
(2) 放射線には \( \alpha \) 線,\( \beta \) 線,\( \gamma \) 線などがあり,放射線を出す能力を放射能といい,放射能を有する物質を放射性物質と呼ぶ。
(3) 原子燃料の原子核に,エネルギー値が低く速度の遅い中性子を衝突させると,核分裂を起こす。
(4) 原子燃料の核分裂により発生した \( 1 \) 個以上の熱中性子が,別の原子核を分裂させる反応が連続的に持続する現象を連鎖反応という。
(5) 減速材は,核分裂によって新たに生じたエネルギー値が高い高速中性子のエネルギーの一部を吸収させて,低速の熱中性子を得るために用いる。
合格への方程式
原子力発電の基本原理
原子力発電とは
原子力発電は、ウランなどの核燃料が核分裂する際に発生する熱エネルギーを利用して蒸気を作り、タービンを回して電気を発生させる発電方式です。
原子力発電の基本流れ
- 核分裂:ウラン235が中性子と衝突して分裂
- 熱発生:核分裂時に大量の熱エネルギーが発生
- 蒸気生成:核分裂熱で水を蒸気に変換
- タービン回転:蒸気でタービンを回転
- 発電:発電機で電気エネルギーに変換
原子の構造
核分裂を理解するために、まず原子の基本構造を知る必要があります。
原子の構成要素
- 原子核:原子の中心部(陽子+中性子)
- 陽子:正の電荷を持つ粒子
- 中性子:電荷を持たない粒子
- 電子:負の電荷を持ち、原子核の周りを回る
核分裂のメカニズム
核分裂は、重い原子核が軽い原子核に分かれる現象です。
ウラン235の核分裂反応例
ウラン235 + 中性子 → 分裂生成物 + 2~3個の中性子 + 大量のエネルギー
核分裂の特徴
- 1回の核分裂で約200MeVの巨大なエネルギーが発生
- 石炭1gの燃焼エネルギーの約300万倍
- 新たに2~3個の中性子が生成される
- 放射性の分裂生成物ができる
エネルギーの比較
原子力発電のエネルギー密度は他の燃料と比べて格段に高いです。
燃料 | 1gあたりの発熱量 | 比較 |
---|---|---|
石炭 | 約8kcal | 1 |
石油 | 約10kcal | 1.25 |
天然ガス | 約12kcal | 1.5 |
ウラン235 | 約2000万kcal | 約250万 |
原子力発電の種類
冷却材や減速材の違いにより、原子炉は分類されます。
主な原子炉の種類
- 軽水炉:普通の水を冷却材・減速材に使用
- 重水炉:重水を冷却材・減速材に使用
- 高速増殖炉:液体金属を冷却材に使用
- 黒鉛炉:黒鉛を減速材に使用
軽水炉の分類
日本で主に使用されている軽水炉には2つの型があります。
BWR(沸騰水型原子炉)
- 原子炉内で直接蒸気を発生
- 構造が比較的シンプル
- 日本の約3分の1の原子力発電所で採用
PWR(加圧水型原子炉)
- 一次冷却水と二次冷却水を分離
- 蒸気発生器で間接的に蒸気を発生
- 日本の約3分の2の原子力発電所で採用
原子力発電の特徴
原子力発電には独特の特徴があります。
原子力発電の利点
- 高エネルギー密度:少量の燃料で大量の電力
- CO₂排出なし:発電時に温室効果ガスを排出しない
- 安定供給:天候に左右されない
- 燃料備蓄性:長期間の運転が可能
原子力発電の課題
- 放射性廃棄物:長期間の管理が必要
- 初期投資:建設費が高額
- 安全性:高度な安全対策が必要
- 立地制約:適地が限定される
核燃料サイクル
ウラン燃料の採掘から廃棄物処理までの一連の流れです。
核燃料サイクルの流れ
- ウラン採掘:天然ウランの採掘
- 精錬:ウラン精鉱の製造
- 転換:六フッ化ウランに転換
- 濃縮:ウラン235の濃度を高める
- 再転換:二酸化ウランに戻す
- 燃料加工:燃料集合体の製造
- 原子炉での利用:発電での使用
- 使用済燃料処理:再処理または直接処分
世界の原子力発電
原子力発電は世界各国で利用されています。
世界の原子力発電状況
- 運転中の原子炉:世界で約440基
- 発電量割合:世界の電力の約10%
- 主要国:アメリカ、フランス、中国、ロシア、日本
- 依存度:フランス70%、ウクライナ50%以上
日本の原子力発電
日本は世界有数の原子力発電国でした。
日本の原子力発電の状況
- 運転中:現在約10基程度が運転中
- 建設中・計画中:数基が建設・計画段階
- 過去の依存度:事故前は約30%の電力を供給
- 現在の依存度:約6%程度に低下
核分裂と連鎖反応
核分裂反応の詳細
核分裂は、重い原子核が中性子を吸収して不安定になり、軽い原子核に分かれる現象です。
ウラン235の核分裂反応
\[ ^{235}U + ^1n \rightarrow ^{141}Ba + ^{92}Kr + 3^1n + 200\text{MeV} \]※この反応は一例で、実際には様々な分裂生成物が生じます
中性子の種類
核分裂で重要な役割を果たす中性子には、エネルギーレベルによる分類があります。
中性子の種類 | エネルギー範囲 | 速度 | 特徴 |
---|---|---|---|
熱中性子 | 0.025eV程度 | 約2200m/s | 核分裂を起こしやすい |
共鳴中性子 | 0.5eV~10keV | 中間速度 | 吸収されやすい |
高速中性子 | 10keV以上 | 高速 | 核分裂で生成される |
熱中性子の重要性
熱中性子は原子力発電において最も重要な中性子です。
熱中性子の特徴
- 低エネルギー:周囲の温度と熱平衡状態の中性子
- 低速度:ゆっくりと移動するため核分裂を起こしやすい
- 高い核分裂確率:ウラン235と反応しやすい
- 制御しやすい:制御棒による吸収が容易
熱中性子による核分裂の流れ
- 高速中性子が核分裂で発生
- 減速材(水など)により熱中性子に減速
- 熱中性子がウラン235に衝突
- 核分裂が起こり、新たな高速中性子が発生
- この過程が繰り返されて連鎖反応となる
なぜ熱中性子が核分裂を起こしやすいのか
中性子の速度が遅いほど、ウラン235の原子核と相互作用する時間が長くなります。これにより、核分裂を起こす確率(核分裂断面積)が大幅に増加するためです。まるでゆっくり歩く人の方が、道で知り合いと出会う確率が高いのと似ています。
連鎖反応のメカニズム
核分裂で生成された中性子が次の核分裂を引き起こす現象が連鎖反応です。
連鎖反応の条件
- 核分裂性物質:ウラン235やプルトニウム239
- 十分な量:臨界量以上の核燃料
- 適切な中性子:熱中性子の存在
- 中性子の制御:適切な増倍率
臨界と増倍率
連鎖反応の持続性は増倍率(k)で表されます。
増倍率の定義
増倍率 = ある世代で核分裂を起こす中性子数 ÷ 前の世代で核分裂を起こした中性子数
増倍率による分類
- k < 1(未臨界):連鎖反応が減少し、最終的に停止
- k = 1(臨界):連鎖反応が一定レベルで持続
- k > 1(超臨界):連鎖反応が増加し、制御不能になる危険
ウラン235の核分裂特性
ウラン235は熱中性子によって効率的に核分裂を起こします。
ウラン235の特徴
- 核分裂確率:熱中性子に対して高い核分裂断面積
- 中性子放出:1回の核分裂で平均2.4個の中性子
- 分裂生成物:質量数90~150の様々な原子核
- エネルギー放出:1回の核分裂で約200MeV
ウラン238の反応
ウラン238は直接核分裂しませんが、重要な役割を果たします。
ウラン238からプルトニウム239への変換
- ウラン238 + 中性子 → ウラン239
- ウラン239 → ネプツニウム239(β崩壊)
- ネプツニウム239 → プルトニウム239(β崩壊)
プルトニウム239の特性
ウラン238から生成されるプルトニウム239も核分裂性物質です。
プルトニウム239の特徴
- 核分裂性:ウラン235と同様に熱中性子で核分裂
- 高い核分裂確率:ウラン235より高い核分裂断面積
- 人工元素:自然界には存在しない
- 長半減期:約24,000年
減速材の役割
高速中性子を熱中性子に減速する材料が減速材です。
減速材の機能
- エネルギー減少:高速中性子のエネルギーを吸収
- 熱化:周囲温度と同程度のエネルギーまで減速
- 核分裂促進:ウラン235の核分裂確率を向上
主な減速材
効果的な減速材には特定の条件が必要です。
減速材 | 特徴 | 用途 |
---|---|---|
軽水(H₂O) | 減速能力高、中性子吸収あり | 軽水炉 |
重水(D₂O) | 減速能力高、中性子吸収小 | 重水炉 |
黒鉛(炭素) | 減速能力中、中性子吸収極小 | 黒鉛炉 |
ベリリウム | 減速能力良、中性子吸収小 | 研究炉 |
制御棒の機能
連鎖反応を制御するために中性子を吸収する材料が使用されます。
制御棒材料の特性
- ホウ素:高い中性子吸収断面積
- カドミウム:特定エネルギーで極めて高い吸収
- ハフニウム:高温での安定性
- 銀-インジウム-カドミウム合金:総合性能
遅発中性子の重要性
核分裂直後ではなく、しばらくしてから放出される中性子があります。
遅発中性子の役割
- 制御性向上:反応速度を緩やかにする
- 安全性:急激な出力変化を防ぐ
- 割合:全中性子の約0.65%
- 遅れ時間:数秒~数十秒
核分裂生成物
核分裂により生成される放射性物質について理解が必要です。
主な核分裂生成物
- 短寿命:ヨウ素131(半減期8日)
- 中寿命:セシウム137(半減期30年)
- 長寿命:テクネチウム99(半減期21万年)
- 希ガス:キセノン、クリプトン
核燃料と放射線
天然ウランの組成
天然ウランには複数の同位体が含まれています。
天然ウランの同位体組成
- ウラン238:約99.3%(非核分裂性)
- ウラン235:約0.7%(核分裂性)
- ウラン234:約0.005%(微量)
ウランの濃縮
原子力発電では、ウラン235の濃度を高める濃縮が必要です。
濃縮度による分類
- 天然ウラン:0.7%(そのまま)
- 低濃縮ウラン:3~5%(軽水炉用)
- 高濃縮ウラン:20%以上(研究炉、核兵器)
濃縮の理由
天然ウランのままでは、ウラン235の濃度が低すぎて持続的な連鎖反応を維持できません。軽水炉では3~5%程度まで濃縮することで、効率的な核分裂反応が可能になります。
濃縮方法
ウラン235とウラン238の質量差を利用して分離します。
濃縮方法 | 原理 | 特徴 |
---|---|---|
ガス拡散法 | 質量差による拡散速度の違い | 大型設備、高エネルギー消費 |
遠心分離法 | 遠心力による質量分離 | エネルギー効率良い、主流 |
レーザー法 | レーザーによる選択的励起 | 次世代技術、開発中 |
核燃料の形態
原子炉で使用される核燃料は特別な形に加工されます。
核燃料の加工過程
- 二酸化ウラン粉末:濃縮ウランから製造
- ペレット:粉末を焼き固めて小さな円柱に
- 燃料棒:ペレットを金属管に封入
- 燃料集合体:燃料棒を束ねて一体化
燃料棒の構造
燃料棒は放射線を封じ込める重要な構造です。
燃料棒の構成
- ペレット:直径約1cm、高さ約1cm
- 被覆管:ジルコニウム合金製
- プレナム:核分裂ガス蓄積空間
- 端栓:両端の密封部
放射線の種類
核分裂や放射性崩壊により様々な放射線が発生します。
主な放射線の特性
- α線(アルファ線):ヘリウム原子核、透過力弱、電離能力大
- β線(ベータ線):電子または陽電子、中程度の透過力
- γ線(ガンマ線):電磁波、透過力強、電離能力小
- 中性子線:中性子、透過力非常に強い
放射線の遮蔽
放射線から身を守るための遮蔽材料があります。
放射線 | 遮蔽材料 | 遮蔽の厚さ |
---|---|---|
α線 | 紙、皮膚 | 数cm |
β線 | アルミニウム | 数mm |
γ線 | 鉛、コンクリート | 数cm~数十cm |
中性子線 | 水、ポリエチレン | 数十cm |
放射能と放射線の違い
放射能と放射線は異なる概念です。
用語の区別
- 放射能:放射線を出す能力(ベクレル:Bq)
- 放射線:実際に放出される粒子や電磁波
- 放射性物質:放射能を有する物質
- 被ばく線量:人体が受ける放射線の影響(シーベルト:Sv)
半減期の概念
放射性物質の放射能は時間とともに減少します。半減期とは、放射能が半分になるまでの時間です。
半減期の計算例
初期放射能が1000ベクレルで半減期が10日の場合:
- 10日後:500ベクレル
- 20日後:250ベクレル
- 30日後:125ベクレル
主要な放射性物質の半減期
核燃料や核分裂生成物の半減期は大きく異なります。
物質 | 半減期 | 特徴 |
---|---|---|
ヨウ素131 | 8日 | 短期間で減衰、甲状腺に集積 |
セシウム137 | 30年 | 中期汚染、筋肉に分布 |
ストロンチウム90 | 29年 | 骨に蓄積、内部被ばく |
プルトニウム239 | 24,000年 | 極めて長寿命、α線放出 |
ウラン235 | 7億年 | 天然存在、α線放出 |
内部被ばくと外部被ばく
放射線による被ばくには2つの経路があります。
被ばくの経路
- 外部被ばく:体外の放射性物質からの放射線
- 内部被ばく:体内に取り込まれた放射性物質による被ばく
放射線防護の3原則
放射線から身を守るための基本的な考え方があります。
防護の3原則
- 時間:被ばく時間を短くする
- 距離:放射線源から離れる
- 遮蔽:適切な遮蔽材で放射線を止める
使用済核燃料
原子炉で燃焼した核燃料は高レベル放射性廃棄物になります。
使用済核燃料の特徴
- 高い放射能:新品燃料の10億倍以上
- 発熱:崩壊熱により継続的に発熱
- 多様な核種:数百種類の放射性物質
- 長期管理:数万年の管理が必要
核燃料の燃焼度
燃料がどの程度使用されたかを示す指標があります。燃焼度は、発生した熱エネルギーを初期重金属重量で割った値で、MWd/t(メガワット日毎トン)で表されます。
プルトニウムの生成と利用
ウラン238から生成されるプルトニウムも重要な核燃料です。
プルトニウムの特徴
- 人工元素:自然界には存在しない
- 核分裂性:プルトニウム239は核分裂する
- 毒性:化学毒性と放射線毒性
- 利用:MOX燃料として再利用可能
原子炉の構成と安全性
原子炉の基本構成
原子炉は核分裂反応を安全に制御するための複雑なシステムです。
原子炉の主要構成要素
- 炉心:燃料集合体が配置される中心部
- 制御棒:核分裂反応を制御
- 冷却材:熱を除去し、蒸気を発生
- 減速材:中性子を減速
- 原子炉圧力容器:炉心を収納
- 格納容器:放射性物質の閉じ込め
軽水炉の種類
日本で使用されている軽水炉には2つの主要な型があります。
BWR(沸騰水型原子炉)
BWRの特徴
- 直接サイクル:炉心で直接蒸気を発生
- 再循環系:冷却水を循環させる
- 構造簡単:蒸気発生器が不要
- 圧力:約7MPa
PWR(加圧水型原子炉)
PWRの特徴
- 間接サイクル:蒸気発生器で二次蒸気を発生
- 加圧器:一次冷却水の圧力を制御
- 放射能分離:一次と二次回路を分離
- 圧力:約15MPa
制御棒システム
原子炉の出力制御と緊急停止のための重要なシステムです。
制御棒の機能
- 反応度制御:中性子を吸収して核分裂反応を制御
- 出力調整:挿入量により出力を調整
- 緊急停止:スクラム時に全挿入
- 停止余裕:確実に未臨界を維持
原子炉の安全設計
原子炉は多重の安全システムで設計されています。
深層防護の概念
- 第1層:異常の発生防止(品質保証、保守点検)
- 第2層:異常の拡大防止(安全保護系)
- 第3層:事故の影響緩和(工学的安全設備)
- 第4層:シビアアクシデント対策
- 第5層:放射性物質放出時の防護措置
工学的安全設備
万一の事故時に安全を確保するための設備があります。
主な安全設備
- 非常用炉心冷却系(ECCS):炉心の冷却を維持
- 格納容器スプレイ系:格納容器内の圧力・温度を低下
- 非常用ガス処理系:放射性物質の放出を抑制
- 非常用電源:外部電源喪失時のバックアップ
原子炉の安全機能
原子炉安全の基本は3つの機能にあります。
原子炉安全の3機能
- 止める:核分裂反応を停止(制御棒挿入)
- 冷やす:崩壊熱を除去(冷却系)
- 閉じ込める:放射性物質の拡散防止(格納容器)
崩壊熱の除去
原子炉停止後も核分裂生成物の崩壊により熱が発生します。
崩壊熱の特徴
- 継続性:原子炉停止後も継続
- 初期値:停止直後は定格出力の約7%
- 減衰:時間とともに指数関数的に減少
- 長期性:完全に無視できるまで数年
格納容器の役割
放射性物質の最後の砦として重要な役割を果たします。
格納容器の機能
- 閉じ込め:放射性物質の外部放出防止
- 耐圧性:内部圧力上昇に対する耐性
- 耐震性:地震に対する構造健全性
- 遮蔽性:放射線の遮蔽機能
原子炉の運転制御
原子炉は精密な制御により安全に運転されます。
主な制御系統
- 反応度制御:制御棒、ホウ酸濃度調整
- 出力制御:負荷追従運転
- 温度制御:冷却材温度の調整
- 圧力制御:蒸気系統の圧力調整
原子炉保護系
異常を検知して自動的に原子炉を安全状態にするシステムです。
保護系の動作例
- 高中性子束:出力異常上昇時のスクラム
- 高圧力:冷却材圧力異常時のスクラム
- 低水位:冷却材水位低下時のスクラム
- 地震:地震感知時の自動停止
新規制基準
福島第一原子力発電所事故を踏まえた新しい安全基準です。
新規制基準の主要項目
- シビアアクシデント対策:過酷事故への備え
- テロ対策:意図的航空機衝突等への対策
- 自然災害対策:津波、竜巻、火山等
- 電源・冷却機能:多様化・独立性強化
最新の安全技術
第3世代、第4世代原子炉の安全技術が開発されています。
次世代安全技術
- 受動的安全系:電源不要の自然循環冷却
- 炉心溶融対策:コアキャッチャー等
- 水素対策:水素再結合装置
- 格納容器ベント:フィルタ付きベント設備
廃炉技術
運転終了後の原子炉の解体技術も重要です。
廃炉のプロセス
- 燃料取出し:使用済燃料の搬出
- 安全貯蔵:放射能減衰期間
- 解体撤去:設備の段階的解体
- 廃棄物処理:放射性廃棄物の処分
- サイト解放:土地の再利用可能化
放射性廃棄物管理
原子力発電に伴って発生する廃棄物の適切な管理が重要です。
廃棄物の分類
- 高レベル:使用済燃料、ガラス固化体
- 中レベル:制御棒、フィルタ等
- 低レベル:作業服、工具等
- クリアランス:放射能レベル極めて低い
国際協力と規制
原子力の安全確保は国際的な取り組みが重要です。
国際機関と条約
- IAEA:国際原子力機関による安全基準
- 原子力安全条約:原子力安全の国際条約
- 使用済燃料管理条約:廃棄物管理の国際協力
- 核セキュリティ:核物質防護の国際枠組み
🔍 ワンポイントアドバイス: 原子力発電の理解は「核分裂の基本」「濃縮度の区別」「中性子の種類」「放射線の特性」がポイントです。特に「低濃縮ウラン3~5%」「熱中性子による核分裂」「減速材の役割」「連鎖反応の条件」は頻出です。「高濃縮ウラン」という表現には注意しましょう!
原子力発電に関する問題(電力)
原子燃料の特性や核分裂反応の仕組みを理解しとくことが大事やな。
基本的な知識をしっかり確認しながら、誤りを見つけていこか。
「ウラン235を2~4%まで濃縮した高濃縮ウランを使う」って記述やけど、これはどうやと思う?
濃縮度と呼び方に注意してみてや。
原子力発電所では一般的に3~5%程度の濃縮ウランを使用するので、2~4%という数値はやや低めですが範囲内です。
しかし、「高濃縮ウラン」という表現が気になります。一般的に20%以上を高濃縮ウランと呼び、3~5%程度は「低濃縮ウラン」と呼ぶはずです。
この記述は誤りの可能性が高いと思います。
解説
正解は (1) です。
各選択肢の詳しい解説:
- 選択肢(1):2~4%濃縮を「高濃縮ウラン」と表現 → 誤り(低濃縮ウランが正しい)
- 選択肢(2):放射線、放射能、放射性物質の定義 → 正しい
- 選択肢(3):熱中性子による核分裂 → 正しい
- 選択肢(4):連鎖反応の定義 → 正しい
- 選択肢(5):減速材の役割 → 正しい
ウラン濃縮度による分類は以下の通りです:
・天然ウラン:ウラン235が約0.7%
・低濃縮ウラン:3~5%(商用原子炉で使用)
・高濃縮ウラン:20%以上(研究用原子炉、核兵器用)
商用原子力発電所では、連鎖反応を維持できる最低限の濃縮度である3~5%の低濃縮ウランを使用します。これを「高濃縮ウラン」と呼ぶのは明らかな間違いです。
この問題のポイント
- ウラン濃縮度の分類:低濃縮(3~5%)vs 高濃縮(20%以上)
- 核分裂反応:ウラン235 + 熱中性子 → 核分裂 + 高速中性子
- 減速材の役割:高速中性子 → 熱中性子への変換
- 連鎖反応:持続的な核分裂反応の仕組み