【電力】平成25年 問15|効率とエネルギー収支から求める汽力発電所の電力量および冷却水流量の計算問題

復水器の冷却に海水を使用する汽力発電所が定格出力で運転している。次の (a) 及び (b) の問に答えよ。

(a) この発電所の定格出力運転時には発電端熱効率が \( 38 \) [%],燃料消費量が \( 40 \) [t/h] である。

\( 1 \) 時間当たりの発生電力量 [MW・h] の値として,最も近いものを次の (1) ~ (5) のうちから一つ選べ。

(b)定格出力で運転を行ったとき,復水器冷却水の温度上昇を \( 7 \) [K] とするために必要な復水器冷却水の流量 [m^{3}/s] の値として,最も近いものを次の (1) ~ (5) のうちから一つ選べ。

ただし,タービン熱消費率を \( 8000 \) [kJ/(kW・h)],海水の比熱と密度をそれぞれ \( 4.0 \) [kJ/(kg・K)],\( 1.0 \times 10^{3} \) [kg/m3],発電機効率を \( 98 \) [%] とし,提示されていない条件は無視する。

合格への方程式

熱量と電力量の関係

電力量と熱量の関係を理解することは、エネルギー変換を考える上で重要です。

キーポイント: 電力量の単位 [kW・h] は、1 kWの電力で1時間運転したときの電力量を表します。

電力量と熱量の換算関係:

\[ \begin{aligned} 1 \ \mathrm{[kW\cdot h]} &= 3600 \ \mathrm{[kW\cdot s]} \\[10pt] &= 3600 \ \mathrm{[kJ]} \end{aligned} \]

基本的な関係:\[1 \ \mathrm{[W\cdot s]} = 1 \ \mathrm{[J]}\]

電力と単位時間あたりの熱量の関係:

\[ \begin{aligned} 1 \ \mathrm{[kW]} &= 3600 \ \mathrm{[kJ/h]} \end{aligned} \]

日常生活での例: 1 kWのヒーターを1時間使うと、発生する熱量は3600 kJとなります。これは約860 kcalに相当し、約1リットルの水を0°Cから82°Cまで温められる熱量です。

発電端熱効率

発電端熱効率(η)は、投入した燃料の熱量に対して、実際に電気エネルギーに変換できた割合を表します。

定義: 燃料の熱量に対してどの程度発電したかを示す指標です。

計算に必要な変数:

  • 燃料消費量:B [t/h]
  • 発電機出力:PG [kW]
  • 燃料発熱量:H [kJ/kg]

単位時間あたりの燃料消費量:

\[ \begin{aligned} B \ \mathrm{[t/h]} &= 1000B \ \mathrm{[kg/h]} \\[10pt] &= \frac{1000}{3600}B \ \mathrm{[kg/s]} \end{aligned} \]

発電端熱効率の計算式:

\[ \begin{aligned} \eta &= \frac{P_{\mathrm{G}}}{\displaystyle \frac{1000}{3600}B \times H} \times 100 \\[10pt] &= \frac{3.6P_{\mathrm{G}}}{BH} \times 100 \ \mathrm{[\%]} \end{aligned} \]

発電端熱効率は通常、石炭火力で約40%、天然ガス複合サイクル発電で約60%程度です。残りの熱量は、主に排熱として環境に放出されます。

計算例題

例題1:電力量から熱量への変換

ある家庭で1日あたり5 kW・hの電力を消費しています。これは何kJの熱量に相当しますか?

解答:

\[ \begin{aligned} 5 \ \mathrm{[kW\cdot h]} &= 5 \times 3600 \ \mathrm{[kJ]} \\[10pt] &= 18000 \ \mathrm{[kJ]} \end{aligned} \]

例題2:発電端熱効率の計算

ある火力発電所で、発電機出力が500,000 kW、燃料消費量が200 t/h、燃料発熱量が29,000 kJ/kgの場合、発電端熱効率を求めなさい。

解答:

\[ \begin{aligned} \eta &= \frac{3.6 \times 500,000}{200 \times 29,000} \times 100 \ \mathrm{[\%]} \\[10pt] &= \frac{1,800,000}{5,800,000} \times 100 \ \mathrm{[\%]} \\[10pt] &\approx 31.0 \ \mathrm{[\%]} \end{aligned} \]

この発電所では、燃料の持つエネルギーの約31%が電気エネルギーに変換されていることがわかります。

🔍 ワンポイントアドバイス: 熱力学の第二法則により、熱エネルギーを100%電気エネルギーに変換することは理論上不可能です。そのため、発電端熱効率は必ず100%未満となります。効率を上げるためには、廃熱の有効利用(コージェネレーションなど)が重要です。

まずは、(a)問題からやな。発電所で、石炭を燃やして発電するときの問題や。石炭の発熱量は44000 kJ/kgで、1時間に40トン使うんや。発電効率は38%やとしたら、発電端出力は何MWになるかな?まずは発電出力の計算式から考えてみよか!

はい、先生!発電端出力を計算するには、燃料の熱量と発電効率から求められると思います。石炭の発熱量と使用量から入力エネルギーを計算し、それに発電効率をかければ良いのではないでしょうか?

発電端出力 Pₒ は、燃料熱量 B×H に発電効率 η をかけて求められますが、単位を合わせるための係数も必要だと思います。

ええ考え方やで!発電端出力 Pₒ は確かに「燃料の発熱量×燃料使用量×発電効率」で計算できるんや。でも単位変換も考えなあかんな。石炭の発熱量はkJ/kgで与えられてるけど、発電出力はkWやから、ジュール(J)とワット(W)の関係を思い出してみ?それと、発電効率は%表記やから、どう扱うか考えてみてな!

はい、先生!ワットとジュールの関係は、1W = 1J/sです。つまり、1kWは1kJ/sを意味します。また、発電効率は%表記なので、計算式では100で割る必要があります。

発電端出力の計算式は以下のようになると思います:

\[ \begin{aligned} P_G &= \frac{B \times H \times \eta}{3.6 \times 100} \\ \end{aligned} \]

ここで、Bは燃料使用量[kg/h]、Hは発熱量[kJ/kg]、ηは発電効率[%]です。分母の3.6は時間の単位変換(3600秒を1000で割った値)で、100は%を小数に変換するためのものです。

その通りや!よう覚えてるな!発電端出力の計算式は確かに\( P_G = \frac{B \times H \times \eta}{3.6 \times 100} \)やね。ここで、Bは燃料使用量[kg/h]、Hは発熱量[kJ/kg]、ηは発電効率[%]や。分母の3.6は、1時間=3600秒を1000で割った値で、kWに単位変換するためのもんや。100は%を小数に変換するためやな。では、具体的な数値を代入してみよか!

はい、先生!数値を代入してみます。

B = 40 × 1000 [kg/h](40トンを kg に変換)

H = 44000 [kJ/kg]

η = 38 [%]

\[ \begin{aligned} P_G &= \frac{B \times H \times \eta}{3.6 \times 100} \\[20pt] &= \frac{40 \times 1000 \times 44000 \times 38}{3.6 \times 100} \\[20pt] &= \frac{40 \times 44000 \times 38}{3.6 \times 0.1} \\[20pt] &= \frac{66880000}{0.36} \\[20pt] &\approx 185777777.8 \ \mathrm{[kW]} \\[20pt] &\approx 185800 \ \mathrm{[kW]} \\[20pt] &= 185.8 \ \mathrm{[MW]} \\[20pt] &\approx 186 \ \mathrm{[MW]} \end{aligned} \]

したがって、発電端出力は約186 [MW]となります。

ようできてるわ!計算も正確やね。発電端出力は186 [MW]や。ほんで、この発電所が1時間運転したら、どれくらいの電力量になるのか考えてみよか?単位も一緒に考えてみな!

はい、先生!電力量は電力と時間の積で表されますね。

発電端出力が186 [MW]で、1時間運転した場合の電力量は:

\[ \begin{aligned} \text{電力量} &= \text{電力} \times \text{時間} \\[20pt] &= 186 \ \mathrm{[MW]} \times 1 \ \mathrm{[h]} \\[20pt] &= 186 \ \mathrm{[MW \cdot h]} \\[20pt] &= 186 \ \mathrm{[MWh]} \end{aligned} \]

したがって、1時間運転した時の電力量は186 [MWh]となります。

その通りや!電力量は電力と時間の積やから、186 [MW]の発電所を1時間運転すると、186 [MWh]の電力量になるんや。これで(a)問題は完了やな!次は(b)問題に移ろか。発電機効率が98%のとき、タービン軸出力を求めて、さらに冷却水の必要流量を計算する問題やで。まずは発電機効率からタービン軸出力を計算してみよか!

はい、先生!発電機効率から考えると、発電端出力は発電機に入力されるエネルギーの98%ということですね。つまり、タービン軸出力(発電機への入力)は発電端出力を効率で割れば求められると思います。

\[ \begin{aligned} P_T &= \frac{P_G}{\eta_G} \\[20pt] &= \frac{P_G}{0.98} \\[20pt] &= \frac{185800}{0.98} \ \mathrm{[kW]} \\[20pt] &\approx 189591.8 \ \mathrm{[kW]} \\[20pt] &\approx 189600 \ \mathrm{[kW]} \end{aligned} \]

したがって、タービン軸出力は約189600 [kW]となります。

ええ調子やな!タービン軸出力は約189600 [kW]や。次に、このタービンの熱消費率が8000 [kJ/kWh]やったら、タービンに入る熱量(入熱)はどうなるか計算してみよか?熱消費率の意味を考えてみてな。

はい、先生!熱消費率とは、1 kWhの電力を発生させるのに必要な熱量のことですね。熱消費率が8000 [kJ/kWh]ということは、1 kWhの出力を得るために8000 kJの熱量が必要ということです。

タービン軸出力は189600 [kW]なので、1時間あたりのタービンへの入熱量は:

\[ \begin{aligned} Q_i &= q_t \times P_T \\[20pt] &= 8000 \times 189600 \ \mathrm{[kJ/h]} \\[20pt] &= 1516800000 \ \mathrm{[kJ/h]} \\[20pt] &\approx 1517000000 \ \mathrm{[kJ/h]} \end{aligned} \]

したがって、タービンへの入熱量は約1517000000 [kJ/h]となります。

よう理解できてるな!熱消費率の意味をしっかり押さえられてるわ。タービンへの入熱量は約1517000000 [kJ/h]や。さて、次はタービンからの出熱量を求めるんやけど、どう考えたらええかな?タービンに入った熱エネルギーはどこへ行くか考えてみてな。

はい、先生!タービンに入った熱エネルギーは、一部が機械的エネルギー(タービン軸出力)に変換され、残りは熱として排出されると考えられます。

つまり、入熱量から機械的エネルギーに変換された分を引けば、出熱量が求められますね。タービン軸出力は189600 [kW]ですが、これをkJ/hの単位に変換する必要があります。

\[ \begin{aligned} 1 \ \mathrm{[kW]} &= 1 \ \mathrm{[kJ/s]} \\[20pt] &= 3600 \ \mathrm{[kJ/h]} \end{aligned} \]

したがって、出熱量は:

\[ \begin{aligned} Q_o &= Q_i - 3600 \times P_T \\[20pt] &= 1517000000 - 3600 \times 189600 \ \mathrm{[kJ/h]} \\[20pt] &= 1517000000 - 682560000 \ \mathrm{[kJ/h]} \\[20pt] &= 834440000 \ \mathrm{[kJ/h]} \\[20pt] &\approx 834400000 \ \mathrm{[kJ/h]} \end{aligned} \]

よって、タービンからの出熱量は約834400000 [kJ/h]です。

素晴らしいわ!タービンに入った熱エネルギーの一部は仕事に変換されて、残りは熱として排出されるっていう考え方が大事やね。タービンからの出熱量は約834400000 [kJ/h]や。さあ、最後の問題や。この出熱は冷却水で処理するんやけど、冷却水の温度上昇が7℃、比熱が4.0 [kJ/(kg・℃)]、密度が1.0×10³ [kg/m³]のとき、必要な冷却水の流量 F [m³/s]はどうなるやろか?考え方を整理してみよか。

はい、先生!冷却水の必要流量を求めるために、熱交換の関係式を考えてみます。

タービンからの出熱量 Qo は冷却水が受け取る熱量と等しいはずです。冷却水が受け取る熱量は、冷却水の流量、比熱、密度、温度上昇から計算できます。

\[ \begin{aligned} Q_o &= c \times \rho \times F \times \Delta T \times 3600 \\ \end{aligned} \]

ここで:

c:冷却水の比熱 = 4.0 [kJ/(kg・℃)]

ρ:冷却水の密度 = 1.0×10³ [kg/m³]

F:冷却水の流量 [m³/s](求めたい値)

ΔT:温度上昇 = 7 [℃]

3600:秒から時間への変換係数 [s/h]

この式からFについて解きます:

\[ \begin{aligned} Q_o &= c \times \rho \times F \times \Delta T \times 3600 \\[20pt] F &= \frac{Q_o}{c \times \rho \times \Delta T \times 3600} \\[20pt] &= \frac{834400000}{4.0 \times 1.0 \times 10^3 \times 7 \times 3600} \ \mathrm{[m^3/s]} \\[20pt] &= \frac{834400000}{100800000} \ \mathrm{[m^3/s]} \\[20pt] &\approx 8.277777... \ \mathrm{[m^3/s]} \\[20pt] &\approx 8.28 \ \mathrm{[m^3/s]} \\[20pt] &\approx 8.0 \ \mathrm{[m^3/s]} \end{aligned} \]

したがって、必要な冷却水の流量は約8.0 [m³/s]となります。

完璧や!熱交換の基本式をしっかり理解できてるな。タービンからの出熱はすべて冷却水に移るから、その熱バランスから流量が計算できるんや。必要な冷却水の流量は約8.0 [m³/s]になるね。これは1秒間に8トンの水が必要ってことやから、かなりの量やな!今回の問題はこれで全部解けたわ。発電所の熱効率計算と冷却システムの設計は、電気主任技術者として大事な知識やから、しっかり覚えておいてな!

はい、先生!今回は発電所の熱効率計算と冷却システムの設計について学びました。発電端出力の計算、タービン軸出力の求め方、熱消費率を使った入熱・出熱の計算、そして冷却水の必要流量を求める方法まで、一連の流れが理解できました。

確かに1秒間に8トンもの水が必要というのは大量ですね。発電所の設計では、このような冷却システムの容量計算も重要だということがわかりました。ありがとうございました!

解説まとめ

(a) 解答:(1)

発電端熱効率 \( \eta \) に各値を代入すると、

\begin{aligned} P_{\mathrm{G}} &= \frac{BH \eta}{3.6 \times 100} \\\\[5pt] &= \frac{40 \times 44000 \times 38}{3.6 \times 100} \\\\[5pt] &\approx 185800 \, \mathrm{[kW]} \rightarrow 186 \, \mathrm{[MW]} \end{aligned}

\( 1 \, \mathrm{[kW \cdot h]} \) は \( 1 \, \mathrm{[kW]} \) の電力で 1 時間運転したときの電力量であるから、 \( 186 \, \mathrm{[MW]} \) の電力で 1 時間運転したときの電力量は、\( 186 \, \mathrm{[MW \cdot h]} \) となる。

(b) 解答:(2)

発電機効率が \( 98\,\mathrm{[\%]} \) であるため、タービン軸出力 \( P_{\mathrm{T}} \, \mathrm{[kW]} \) は次の通り。

\begin{aligned} P_{\mathrm{T}} &= \frac{P_{\mathrm{G}}}{0.98} \\\\[5pt] &= \frac{185800}{0.98} \\\\[5pt] &\approx 189600 \, \mathrm{[kW]} \end{aligned}

熱消費率 \( q \) より、タービンの入熱 \( Q_{\mathrm{i}} \) は、

\begin{aligned} Q_{\mathrm{i}} &= q_{\mathrm{t}} P_{\mathrm{T}} \\\\[5pt] &= 8000 \times 189600 \\\\[5pt] &\approx 1517000000 \, \mathrm{[kJ/h]} \end{aligned}

\( 1 \, \mathrm{[kW]} = 3600 \, \mathrm{[kJ/h]} \) であるため、タービンの出熱 \( Q_{\mathrm{o}} \) は、

\begin{aligned} Q_{\mathrm{o}} &= Q_{\mathrm{i}} - 3600 P_{\mathrm{T}} \\\\[5pt] &= 1517000000 - 3600 \times 189600 \\\\[5pt] &\approx 834400000 \, \mathrm{[kJ/h]} \end{aligned}

タービンの出熱 \( Q_{\mathrm{o}} \) と復水器での熱交換量が等しいため、

\begin{aligned} Q_{\mathrm{o}} &= 4.0 \times 1.0 \times 10^{3} \times F \times 3600 \times 7 \\\\[5pt] F &= \frac{Q_{\mathrm{o}}}{4.0 \times 1.0 \times 10^{3} \times 3600 \times 7} \\\\[5pt] &= \frac{834400000}{4.0 \times 1.0 \times 10^{3} \times 3600 \times 7} \\\\[5pt] &\approx 8.28 \rightarrow 8.0 \, \mathrm{[m^{3}/s]} \end{aligned}