【法規】令和6年(下期) 問3|電気設備技術基準における電路の絶縁と保安措置に関する穴埋め問題

次の文章は,「電気設備技術基準」に関する記述である。

電路は,大地から \( \fbox{ (ア) } \) しなければならない。

ただし,構造上やむを得ない場合であって通常予見される使用形態を考慮し危険のおそれがない場合,又は \( \fbox{ (イ) } \) による高電圧の侵入等の異常が発生した際の危険を回避するための \( \fbox{ (ウ) } \) その他の保安上必要な措置を講ずる場合は,この限りでない。

上記の記述中の空白箇所(ア)~(ウ)に当てはまる組合せとして,正しいものを次の (1) ~ (5) のうちから一つ選べ。

\[ \begin{array}{cccc} & (ア) & (イ) & (ウ) \\ \hline (1) & 離隔 & 事故 & 遮断 \\ \hline (2) & 離隔 & 短絡 & 遮断 \\ \hline (3) & 絶縁 & 混触 & 接地 \\ \hline (4) & 絶縁 & 短絡 & 離隔 \\ \hline (5) & 遮断 & 混触 & 接地 \\ \hline \end{array} \]

合格への方程式

基本知識・絶縁の原理

電路の絶縁とは

電路の絶縁とは、「電気が流れる部分を大地(地面)から電気的に切り離すこと」です。これは電気設備の最も基本的な安全対策です。

なぜ絶縁が必要なの?

  • 感電防止: 人が触れても電気が地面に流れない
  • 漏電防止: 電気が意図しない経路に流れるのを防ぐ
  • 設備保護: 機器の故障や火災を防ぐ

身近な例で理解しよう

水道の配管で例えると...

  • 水道管: 電線(電気の通り道)
  • 管の周りの保護材: 絶縁体(電気を通さない材料)
  • 地面: 大地(電気の最終的な行き先)

水道管が保護されているように、電線は絶縁体で大地から隔離されています。

絶縁材料の種類

絶縁材料 使用場所 身近な例
ゴム 電線の被覆 家庭用コードの外皮
プラスチック 配線器具 コンセントカバー
セラミック 高圧送電線 送電線の碍子(がいし)
空気 送電線間 電線同士の間隔

絶縁破壊とは

絶縁破壊とは、絶縁材料が電気を通すようになってしまう現象です。

絶縁破壊が起きる原因

  • 電圧が高すぎる: 絶縁材料の限界を超えた電圧
  • 絶縁材料の劣化: 年数が経って性能が低下
  • 湿度の影響: 水分により絶縁性能が低下

雷の例

雷は空気の絶縁破壊です。普段は絶縁体である空気が、雲と地面の間の高電圧によって絶縁破壊を起こし、電気が流れる現象です。

第5条の条文解説

条文の全体構造

第5条第1項(完全版)

「電路は,大地から絶縁しなければならない。ただし,構造上やむを得ない場合であって通常予見される使用形態を考慮し危険のおそれがない場合,又は混触による高電圧の侵入等の異常が発生した際の危険を回避するための接地その他の保安上必要な措置を講ずる場合は,この限りでない。」

条文の構造分析

条文の組み立て

  1. 原則: 「電路は,大地から絶縁しなければならない」
  2. 例外1: 「構造上やむを得ない場合で危険のおそれがない場合」
  3. 例外2: 「混触による異常時の危険回避のため接地等の措置を講ずる場合」

3つのキーワード解説

(ア)絶縁

絶縁の基本

  • 意味: 電気的に切り離すこと
  • 方法: 絶縁材料による物理的遮断
  • 目的: 電流の漏れを防ぐ

(イ)混触

混触の基本

  • 意味: 異なる電圧の電線が接触すること
  • 例: 高圧6600Vと低圧200Vの線が接触
  • 危険: 高電圧が低圧回路に侵入

(ウ)接地

接地の基本

  • 意味: 電気設備を大地に意図的に接続
  • 目的: 異常電流を大地に逃がす
  • 効果: 感電や機器損傷を防ぐ

選択肢の分析

選択肢 (ア) (イ) (ウ) 判定
(1) 離隔 事故 遮断 ×
(2) 離隔 短絡 遮断 ×
(3) 絶縁 混触 接地
(4) 絶縁 短絡 離隔 ×
(5) 遮断 混触 接地 ×

絶縁・混触・接地

用語の明確な区別

絶縁 vs 離隔 vs 遮断

(ア)に入る可能性がある用語の違い

  • 絶縁: 絶縁材料による電気的な切り離し ← 正解
  • 離隔: 物理的な距離による分離
  • 遮断: スイッチなどによる機械的な切断

具体例で理解

  • 絶縁: 電線にゴムの被覆をかける
  • 離隔: 送電線を十分な距離で設置
  • 遮断: ブレーカーでON/OFFする

混触 vs 短絡 vs 地絡

(イ)に入る可能性がある事故の違い

  • 混触: 異なる電圧の電線同士の接触 ← 正解
  • 短絡: 同じ回路内での線間短絡
  • 地絡: 電線と大地の接触
事故の種類 接触する対象 電圧関係 主な原因
混触 高圧線と低圧線 6600V と 200V 台風、工事ミス
短絡 同一回路の線間 200V のR相とS相 絶縁劣化、施工不良
地絡 電線と大地 200V線と地面 絶縁破壊、水濡れ

接地 vs 遮断 vs 離隔

(ウ)に入る可能性がある対策の違い

  • 接地: 大地との電気的接続 ← 正解
  • 遮断: 電気回路の切断
  • 離隔: 物理的な距離確保

接地の種類

接地工事 対象 目的 抵抗値
A種接地 高圧機器の外箱 高電圧侵入防止 10Ω以下
B種接地 高圧回路の中性点 混触対策 150Ω以下
C種接地 低圧機器の外箱 感電防止 10Ω以下
D種接地 低圧回路の中性線 感電防止 100Ω以下

絶縁と接地の関係

二重の安全対策

  • 第一の防護: 絶縁による電気の封じ込め
  • 第二の防護: 接地による異常時の安全確保
  • 相互補完: 片方が失敗してももう片方で保護

🔍 ワンポイントアドバイス: 電気設備技術基準第5条は「絶縁・混触・接地」の3点セットを確実に暗記することが最重要!語呂合わせ「ゼツエン・コンショク・セッチ」で順番も一緒に覚えましょう。選択肢では「離隔」「短絡」「遮断」がよくある引っかけです。(ア)で「絶縁」を含む選択肢に絞れば、ほぼ正解できます。この条文は電気設備の基本中の基本なので、理屈も含めて理解しておくと他の問題にも応用できて一石二鳥です!

今日は「電気設備技術基準」の基本中の基本、電路の絶縁に関する問題やで!
この問題は令和5年下期にも出題されたから、確実に押さえておかなあかん重要な内容や。
電気設備技術基準を定める省令第5条からの出題やから、条文の内容をしっかり理解していこか。

解説

この問題は電気設備技術基準を定める省令第5条からの出題で、電路の絶縁に関する基本原則を問うものです。電気工作物の安全確保において最も重要な概念の一つです。

1.電路の絶縁と安全対策

①基本原則(絶縁)

②混触事故と対策

2.各空欄の解説

(ア)絶縁 電路と大地を電気的に分離すること。離隔は物理的距離、遮断は回路の開閉を意味するため不適切。

(イ)混触 高圧線と低圧線の接触による高電圧侵入。短絡は同一回路内の現象、事故は一般的すぎる表現。

(ウ)接地 異常電圧を大地に安全に流すための措置。混触時の人体保護に不可欠な安全対策。

3.電気設備技術基準の特徴

電気設備技術基準は電気工作物の設置・保守における最低限の安全要求を定めた重要な法令です。本問のような基本的な安全原則は電験三種で繰り返し出題されるため、確実な理解が求められます。実際の電気工事や保守作業においても、これらの原則は日常的に適用される基本的な安全対策となります。