【理論】令和6年 (上期) 問2|空気中の導体球に帯電可能な最大電荷に関する計算問題
空気中に孤立した半径 \( a \) [m] の導体球に帯電できる最大の電荷の値 [C] として,正しいものを次の (1)~(5) のうちから一つ選べ。
ただし,空気の絶縁耐力及び誘電率はそれぞれ \( E_{\mathrm{m}} \) [V/m] 及び \( \varepsilon_{0} \) [F/m] とする。
合格への方程式
導体球まわりの電界分布の基礎
導体球の電界とは?
導体球に電荷を与えると、その電荷は球の表面に一様に分布します。そして球の外側に放射状の電界を作ります。この電界は球の中心からの距離の2乗に反比例して弱くなっていくんです。
■ 導体球の基本性質
| 性質 | 説明 | 理由 |
|---|---|---|
| 電荷分布 | 表面に一様分布 | 電荷同士の反発力で均等に広がる |
| 内部電界 | ゼロ | 導体内部は等電位 |
| 表面電界 | 表面に垂直 | 接線成分があると電流が流れてしまう |
| 電位 | 球全体で一定 | 導体の性質 |
■ 点電荷の電界(基本公式)
クーロンの法則から導かれる電界
\[ E = \frac{Q}{4\pi\varepsilon_0 r^2} \]ここで、
• E:電界の強さ [V/m]
• Q:電荷量 [C]
• r:電荷からの距離 [m]
• ε₀:真空(空気)の誘電率 ≒ 8.85×10⁻¹² [F/m]
■ なぜ導体球も同じ式が使えるの?
重要な定理:ガウスの法則
球対称に分布した電荷は、外部から見ると中心に全電荷が集中しているのと同じ電界を作ります。
つまり:
• 半径aの導体球(電荷Q)
• 中心にある点電荷Q
この2つは、球の外側(r > a)では同じ電界を作る!
■ 導体球まわりの電界分布
| 位置 | 距離r | 電界E | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 球内部 | r < a | 0 | 導体内部は電界ゼロ |
| 球表面 | r = a | Q/(4πε₀a²) | 最大電界(ここが重要!) |
| 球外部 | r > a | Q/(4πε₀r²) | 距離の2乗に反比例 |
■ 電界が最大になる場所
最重要ポイント
導体球表面(r = a)で電界が最大になります!
• 球の内部:電界 = 0
• 球の表面:電界 = 最大
• 球の外部:どんどん弱くなる
だから、絶縁破壊は必ず球表面から起こります。
■ 電気力線で見る電界分布
電気力線の特徴
• 球の中心から放射状に広がる
• 導体表面に垂直に出入りする
• 表面近くで最も密(電界最大)
• 遠くなるほど疎(電界減少)
• 総本数 = Q/ε₀(ガウスの法則)
■ 表面電荷密度
表面電荷密度σの計算
球の表面積:S = 4πa²
表面電荷密度:
表面電界との関係:
\[ E_{\text{表面}} = \frac{\sigma}{\varepsilon_0} \]絶縁破壊と空気の絶縁耐力
絶縁破壊とは?
電界が強くなりすぎると、空気中の分子が電離して電流が流れ始めます。これが絶縁破壊です。雷や火花放電がその例です。空気が耐えられる最大の電界強度を「絶縁耐力」といいます。
■ 空気の絶縁耐力
| 条件 | 絶縁耐力 E_m | 備考 |
|---|---|---|
| 標準状態(乾燥空気) | 約 3×10⁶ V/m (3 MV/m) |
最もよく使われる値 |
| 湿度が高い場合 | 2~2.5 MV/m | 水分で絶縁性低下 |
| 高電圧実験室 | 3.4 MV/m | 清浄な空気 |
| 実効値で表示 | 約 2.1 MV/m | 交流の場合 |
■ 絶縁破壊のメカニズム
なだれ現象(電子なだれ)
1. 宇宙線などで初期電子が発生
2. 強電界で電子が加速
3. 空気分子に衝突して電離
4. 新たな電子が生まれる
5. 指数関数的に電子が増加
6. プラズマ状態になり導通!
■ パッシェンの法則
火花電圧と電極間距離
均一電界での火花電圧 V_s:
\[ V_s = E_m \times d \]例:電極間距離 1cm = 0.01m の場合
V_s = 3×10⁶ × 0.01 = 30,000 V = 30 kV
■ 導体球での絶縁破壊条件
破壊が起こる条件
導体球表面の電界 ≥ 空気の絶縁耐力
数式で表すと:
等号のとき、最大電荷 Q_m となる
■ コロナ放電
| 現象 | 特徴 | 発生条件 |
|---|---|---|
| コロナ放電 | 青白い光を発する シューという音 |
尖った部分や 曲率半径の小さい部分 |
| ブラシ放電 | 樹枝状の放電 | コロナより強い電界 |
| 火花放電 | 瞬間的な放電 パチッという音 |
絶縁破壊電界を超える |
| アーク放電 | 持続的な放電 高温のプラズマ |
大電流が流れる |
■ 実際の現象例
身近な絶縁破壊
• 静電気の火花:人体(約10kV)からの放電
• 雷:雲と大地間(数百MV)の放電
• セントエルモの火:船のマストなどでのコロナ放電
• 高圧線のコロナ:夜間に見える青白い光
■ 絶縁破壊を防ぐ工夫
電界集中を避ける設計
• 曲率半径を大きく:球形や円筒形の電極
• エッジを丸める:角を避ける
• コロナリング:高圧機器の電界緩和
• 絶縁ガス使用:SF₆ガスは空気の3倍の絶縁耐力
最大電荷量の導出と計算
解法の考え方
導体球表面の電界が空気の絶縁耐力E_mに達したとき、それ以上電荷を増やすと絶縁破壊が起こります。この限界状態での電荷量が最大電荷Q_mです。
■ 最大電荷の導出手順
Step 1:表面電界の式を立てる
導体球(半径a、電荷Q)の表面電界:
\[ E_{\text{表面}} = \frac{Q}{4\pi\varepsilon_0 a^2} \]Step 2:限界条件を設定
絶縁破壊の限界では:
\[ E_{\text{表面}} = E_m \]Step 3:最大電荷を求める
\[ \frac{Q_m}{4\pi\varepsilon_0 a^2} = E_m \]これを Q_m について解くと:
\[ Q_m = 4\pi\varepsilon_0 a^2 E_m \]■ 答えの物理的意味
Q_m = 4πε₀a²E_m の各項の意味
• 4πa²:球の表面積
• ε₀:空気の誘電率
• E_m:空気の絶縁耐力
つまり:最大電荷 = 表面積 × 誘電率 × 絶縁耐力
■ 単位の確認
| 物理量 | 単位 | 次元解析 |
|---|---|---|
| ε₀ | [F/m] | [C²/(N·m²)] |
| a² | [m²] | [m²] |
| E_m | [V/m] | [N/C] |
| Q_m | [C] | [C²/N·m²]×[m²]×[N/C] = [C] ✓ |
■ 具体的な数値例
半径10cmの導体球の場合
与えられた値:
• a = 0.1 m
• E_m = 3×10⁶ V/m
• ε₀ = 8.85×10⁻¹² F/m
計算:
\[ \begin{aligned} Q_m &= 4\pi\varepsilon_0 a^2 E_m \\[10pt] &= 4 \times 3.14 \times 8.85 \times 10^{-12} \times (0.1)^2 \times 3 \times 10^6 \\[10pt] &= 4 \times 3.14 \times 8.85 \times 0.01 \times 3 \times 10^{-6} \\[10pt] &≒ 3.3 \times 10^{-6} \quad [\mathrm{C}] \\[10pt] &= 3.3 \quad [\mu\mathrm{C}] \end{aligned} \]■ 半径依存性の考察
重要な性質
最大電荷 Q_m は半径の2乗に比例!
• 半径2倍 → 最大電荷4倍
• 半径3倍 → 最大電荷9倍
• 半径1/2倍 → 最大電荷1/4倍
■ 最大電位の計算
導体球の電位
電位 V は:
\[ V = \frac{Q}{4\pi\varepsilon_0 a} \]最大電荷のとき:
\[ V_m = \frac{Q_m}{4\pi\varepsilon_0 a} = \frac{4\pi\varepsilon_0 a^2 E_m}{4\pi\varepsilon_0 a} = aE_m \]つまり、最大電位 = 半径 × 絶縁耐力
■ 選択肢の検証
| 選択肢 | 式 | 次元 | 判定 |
|---|---|---|---|
| (1) | E_m/(4πε₀a²) | [C⁻¹] | × |
| (2) | E_m/(4πε₀a) | [V] | × |
| (3) | 4πε₀aE_m | [C/m] | × |
| (4) | 4πε₀a²E_m | [C] | ○ |
| (5) | 4πε₀a³E_m | [C·m] | × |
応用問題と実際の現象
実用上の意義
導体球の最大電荷の理論は、高電圧機器の設計、雷対策、静電気防止など、多くの分野で応用されています。Van de Graaff起電機はこの原理を直接利用した装置です。
■ Van de Graaff起電機
| 項目 | 内容 | 原理・特徴 |
|---|---|---|
| 構造 | 大きな金属球とベルト | ベルトで電荷を運び上げる |
| 到達電圧 | 数MV(球径による) | V_max = a × E_m |
| 用途 | 加速器、高電圧実験 | 安定した直流高電圧源 |
| 制限要因 | コロナ放電 | 表面電界が絶縁耐力で制限 |
■ 高圧送電線の設計
コロナ放電を防ぐ工夫
• 太い電線:曲率半径を大きくして電界緩和
• 多導体方式:複数本を束ねて実効半径増大
• コロナリング:がいしの電界集中を緩和
• 表面処理:滑らかな表面で局所電界を抑制
■ 類題パターン
パターン1:異なる形状
• 円筒導体:E_max = Q/(2πε₀La)
• 楕円体:先端で電界集中
• 針状導体:先端で極めて強い電界
パターン2:複数球体
• 2球の相互作用
• 電界の重ね合わせ
• 影像法の適用
■ 静電容量との関係
孤立導体球の静電容量
\[ C = 4\pi\varepsilon_0 a \]最大電荷と最大電位から:
\[ C = \frac{Q_m}{V_m} = \frac{4\pi\varepsilon_0 a^2 E_m}{aE_m} = 4\pi\varepsilon_0 a \]確かに一致する!
■ 雷雲のモデル
| モデル | 等価半径 | 電荷量 | 電位 |
|---|---|---|---|
| 小規模雷雲 | 500 m | 約10 C | 約100 MV |
| 大規模雷雲 | 2000 m | 約100 C | 約400 MV |
| 地球全体 | 6400 km | 約0.5 MC | 約700 kV |
■ 実験での注意事項
高電圧実験の安全対策
• 接地の確保:実験後は必ず放電棒で接地
• 湿度管理:低湿度で絶縁耐力向上
• 距離の確保:放電距離以上離れる
• 保護具着用:絶縁手袋、ゴーグル
■ 試験での解法まとめ
確実に解くための手順
1. 表面電界の公式を書く:E = Q/(4πε₀a²)
2. 限界条件を設定:E = E_m
3. Qについて解く:Q_m = 4πε₀a²E_m
4. 単位・次元を確認
5. 選択肢から正解を選ぶ
■ 発展問題への展開
応用問題例
• 誘電体中の導体球
• 接地平面上の導体球(影像法)
• 同心球コンデンサ
• 電界エネルギーの計算
• 静電応力の計算
🔍 ワンポイントアドバイス:導体球の問題は「表面電界が最大」がポイントです。表面電界E=Q/(4πε₀a²)が絶縁耐力E_mに達したときが最大電荷なので、Q_m=4πε₀a²E_mとなります。この式は「表面積×誘電率×絶縁耐力」と覚えると理解しやすいです。選択肢を見るときは、まず次元(単位)をチェックすると間違いを減らせます。半径の2乗に比例することも重要です!
今日は導体球の最大電荷の問題やな。空気中に置いた導体球に、どれだけ電荷を帯電できるか考える問題や。まず基本から行こか。導体球に電荷Qを与えたら、その電荷はどこに分布すると思う?
導体の表面に均一に分布するんですよね?導体内部には電荷は存在しない...
その通りや!導体球の場合、電荷は表面に均一に分布するんや。これは静電誘導の基本やな。ほな、この電荷Qが作る電界はどうなる?点電荷が作る電界の公式、覚えてるか?
点電荷の電界は...距離の2乗に反比例するんでしたっけ?\( E = \frac{Q}{4\pi\varepsilon_0 r^2} \) ですか?
完璧や!\( E = \frac{Q}{4\pi\varepsilon_0 r^2} \) やな。導体球の表面に電荷が均一分布してる場合も、球の外側では中心に点電荷があるのと同じように振る舞うんや。つまり、導体球表面(r=a)での電界は \( E = \frac{Q}{4\pi\varepsilon_0 a^2} \) になる。ここまでOKか?
はい、理解できます。球の表面でr=aを代入すればいいんですね。
ええな!次が重要やで。空気には「絶縁耐力」っちゅうもんがあってな、これを超える電界になると絶縁破壊(放電)が起きるんや。問題では \( E_m \) って書いてあるやろ?これが空気の絶縁耐力や。一般的には約3×10^6 V/mくらいやけど、今回は文字のままでええ。さて、最大電荷を帯電させたとき、導体表面の電界はどうなる?
ちょうど絶縁耐力と同じ \( E_m \) になるんじゃないですか?これ以上だと放電してしまう...
賢いな!その通りや。最大電荷 \( Q_m \) を帯電させたとき、表面電界がちょうど \( E_m \) になるんや。つまり、
\( E_m = \frac{Q_m}{4\pi\varepsilon_0 a^2} \)
この式が成り立つわけや。ほな、\( Q_m \) について整理してみて。
両辺に \( 4\pi\varepsilon_0 a^2 \) をかけて...
\( Q_m = 4\pi\varepsilon_0 a^2 E_m \)
これが答えですね!選択肢(4)です。
完璧や!\( Q_m = 4\pi\varepsilon_0 a^2 E_m \) が正解やな。ところで、この式の物理的な意味、分かるか?各項が何を表してるか考えてみよか。
\( a^2 \) は球の表面積に関係していて、\( E_m \) は電界の強さの限界...でも \( 4\pi \) と \( \varepsilon_0 \) の意味がよく分からないです。
ええ着眼点や!実はな、\( 4\pi a^2 \) は球の表面積そのものやねん。そして \( \varepsilon_0 E_m \) は電束密度の最大値や。つまり、
\( Q_m = (\text{表面積}) \times (\text{最大電束密度}) \)
って意味になるんや。電束密度×面積=電荷量、これガウスの定理から来てるんやで。物理的にも理にかなってるやろ?
なるほど!表面積が大きいほど、より多くの電荷を帯電できるということですね。すごく分かりやすいです。
そういうことや!実際の応用例も教えたるわ。高電圧機器では、電極の先端を丸くするんや。なんでやと思う?
尖っていると...電界が集中して放電しやすくなるからですか?
大正解や!尖った部分は曲率半径が小さいから、同じ電荷でも電界が強くなって放電しやすいんや。逆に言えば、電極を球形にしたり丸くしたりすることで、より高い電圧に耐えられるようになる。避雷針は逆にこの原理を利用して、わざと尖らせて雷を誘導するんやで。
避雷針と高電圧機器で真逆の設計なんですね!目的によって使い分けているのが面白いです。
そうやねん。もう一つ重要なポイント。半径aが2倍になったら、最大電荷はどうなる?式見て考えてみ。
\( Q_m \propto a^2 \) だから...半径が2倍になると最大電荷は4倍になりますね!
その通り!4倍や。これが \( a^2 \) に比例する理由やな。実はな、静電容量も半径に比例(\( C = 4\pi\varepsilon_0 a \))するんやけど、最大電荷は \( a^2 \) に比例する。この違い、覚えとくとええで。最後に、この問題でよくある間違いパターン教えたるわ。
どんな間違いが多いんですか?
一番多いのは、次元(単位)を確認せん間違いや。例えば選択肢(3)の \( 4\pi\varepsilon_0 a E_m \) は、aの次数が1個足らん。電荷の単位[C]になるためには、必ず \( a^2 \) が必要なんや。あと、分母と分子を逆にしてしまう選択肢(1)、(2)みたいなミスも多い。単位確認は必須やで!電験では単位チェックで正解が分かることも多いからな。
単位の確認は大切ですね。\( [\varepsilon_0] = \mathrm{F/m} \)、\( [E_m] = \mathrm{V/m} \)、\( [a^2] = \mathrm{m^2} \) をかけると確かに[C]になります。これからは必ず単位チェックします!
解説まとめ
■ 導体球の最大電荷量とは
空気中に孤立した導体球に電荷を帯電させると、導体表面に電界が生じます。電荷量を増やすと表面電界も増加し、空気の絶縁耐力(絶縁破壊電界強度)に達すると放電が起こります。このため、導体球に帯電できる電荷量には上限があり、この最大電荷量は導体球の半径と空気の絶縁耐力によって決まります。この概念は、高電圧機器の設計や静電気対策において重要な基礎となります。
■ 計算手順と公式
- 点電荷による電界の公式
電荷Qから距離r離れた点の電界の大きさ
\( E = \frac{Q}{4\pi\varepsilon_0 r^2} \ \mathrm{[V/m]} \)
ここで、\( Q \):電荷量 [C]、\( r \):距離 [m]、\( \varepsilon_0 \):真空(空気)の誘電率 [F/m]
- 導体球表面の電界
半径aの導体球に電荷Qが一様に分布している場合、表面での電界は:
\( E_{表面} = \frac{Q}{4\pi\varepsilon_0 a^2} \ \mathrm{[V/m]} \)
- 最大電荷量の条件
表面電界が空気の絶縁耐力に達したときが最大電荷量となります。
\( E_{表面} = E_m \) (絶縁破壊の条件)
■ 具体的な計算例
問題条件
- 導体球の半径:\( a \ \mathrm{[m]} \)
- 空気の絶縁耐力:\( E_m \ \mathrm{[V/m]} \)
- 空気の誘電率:\( \varepsilon_0 \ \mathrm{[F/m]} \)
- 導体球は空気中に孤立している
最大電荷量の導出
① 最大電荷 \( Q_m \) を帯電した時の導体球表面の電界:
導体球に電荷 \( Q_m \) が一様に分布しているとき、表面(r = a)での電界は:
\[ \begin{aligned} E_{表面} &= \frac{Q_m}{4\pi\varepsilon_0 a^2} \end{aligned} \]② 絶縁破壊の条件:
表面電界が空気の絶縁耐力に達したとき、絶縁破壊が起こります。
\[ \begin{aligned} E_{表面} &= E_m \\[5pt] \frac{Q_m}{4\pi\varepsilon_0 a^2} &= E_m \end{aligned} \]③ 最大電荷量 \( Q_m \) の算出:
上式を \( Q_m \) について整理します。
\[ \begin{aligned} Q_m &= 4\pi\varepsilon_0 a^2 E_m \end{aligned} \]結論:導体球に帯電できる最大電荷量は \( 4\pi\varepsilon_0 a^2 E_m \ \mathrm{[C]} \)(選択肢(4))
結果の物理的意味
- 最大電荷量は導体球の表面積(\( 4\pi a^2 \))に比例
- 絶縁耐力 \( E_m \) に比例(絶縁耐力が高いほど多くの電荷を帯電可能)
- 誘電率 \( \varepsilon_0 \) に比例(誘電率が大きいほど電界が弱まる)
■ 実務上の留意点
導体球の帯電現象は、高電圧機器の設計や静電気対策において重要な考慮事項です。
- 実際の空気の絶縁耐力は約3 MV/m(標準状態)であり、気圧・温度・湿度により変化する
- 導体の曲率半径が小さい部分(尖端部)では電界集中が起こり、局所的に絶縁破壊しやすい
- 高電圧機器では、電極を球形や大きな曲率半径にすることで電界集中を避ける設計が重要
- 避雷針の原理は逆に尖端での電界集中を利用して雷撃を誘導している
- 静電塗装や静電集塵機では、この原理を応用して高電界を生成している
- 実際の設計では安全率を考慮し、絶縁耐力の50~70%程度で使用することが一般的