【理論】令和4年 (上期) 問1|平行板コンデンサにおける電界・電荷・電束密度・静電エネルギーの関係に関する論説問題

面積がともに \( S \) [m2] で円形の二枚の電極板(導体平板)を,互いの中心が一致するように間隔 \( d \) [m] で平行に向かい合わせて置いた平行板コンデンサがある。

電極板間は誘電率 \( \varepsilon \) [F/m] の誘電体で一様に満たされ,電極板間の電位差は電圧 \( V \) [V] の直流電源によって一定に保たれている。

この平行板コンデンサに関する記述として,誤っているものを次の (1)~(5) のうちから一つ選べ。

ただし,コンデンサの端効果は無視できるものとする。

(1) 誘電体内の等電位面は,電極板と誘電体の境界面に対して平行である。

(2) コンデンサに蓄えられる電荷量は,誘電率が大きいほど大きくなる。

(3) 誘電体内の電界の大きさは,誘電率が大きいほど小さくなる。

(4) 誘電体内の電束密度の大きさは,電極板の単位面積当たりの電荷量の大きさに等しい。

(5) 静電エネルギーは誘電体内に蓄えられ,電極板の面積を大きくすると静電エネルギーは増大する。

合格への方程式

平行板コンデンサの基本構造と特性

平行板コンデンサは、二枚の平行な導体板(電極板)を一定の間隔で向かい合わせて配置し、その間に誘電体を挟んだ構造を持ちます。これは電気を蓄える最も基本的な装置です。

重要ポイント:平行板コンデンサの静電容量は電極の面積に比例し、電極間の距離に反比例します。また、誘電体の誘電率にも比例します。

平行板コンデンサの基本パラメータ

  • 電極板の面積: \(S\) [m²]
  • 電極板間の距離: \(d\) [m]
  • 誘電体の誘電率: \(\varepsilon\) [F/m]
  • 電極間の電位差(電圧): \(V\) [V]

平行板コンデンサの静電容量

静電容量 \(C\) [F] は次式で表されます:

$$C = \frac{\varepsilon S}{d}$$

電荷と電圧の関係

コンデンサに蓄えられる電荷量 \(Q\) [C] は次式で表されます:

$$Q = CV = \frac{\varepsilon S}{d} \cdot V$$

間違いやすいポイント:誘電率 \(\varepsilon\) が大きくなると、静電容量 \(C\) と電荷量 \(Q\) は大きくなりますが、電界の強さ \(E\) は変化しません。電界の強さは誘電率に依存せず、電圧と電極間距離だけで決まります(\(E = V/d\))。

わかりやすい基本説明:

  • 平行板コンデンサは、二枚の金属板を向かい合わせて置いた装置です。
  • 二枚の板の間に電圧をかけると、片方の板には正の電荷が、もう片方の板には負の電荷が溜まります。
  • 板の面積が大きいほど、また板の間隔が小さいほど、より多くの電荷を蓄えることができます。
  • 板の間に誘電体と呼ばれる特殊な物質を入れると、さらに多くの電荷を蓄えられるようになります。

端効果について

実際の平行板コンデンサでは、端の部分で電界が均一でなくなる「端効果」が生じますが、電極の面積が大きく、間隔が小さい場合には、この効果は無視できるほど小さくなります。試験問題では「端効果は無視できる」と仮定されることが多いです。

電界と電位の関係

平行板コンデンサ内部では、電界と電位が特徴的な分布を示します。これらの理解は、コンデンサの動作原理を把握する上で重要です。

重要な関係式

電界の強さ: $$E = \frac{V}{d}$$

電束密度: $$D = \varepsilon E = \varepsilon \frac{V}{d}$$

単位面積あたりの電荷量: $$\frac{Q}{S} = D$$

等電位面

  • 平行板コンデンサ内の等電位面は、電極板に平行な面となります。
  • 電位は一方の電極から他方の電極に向かって、距離に比例して直線的に変化します。
  • 電界は等電位面に対して常に垂直方向(電極板に垂直な方向)に発生します。

電界の一様性

  • 理想的な平行板コンデンサ(端効果を無視した場合)では、内部の電界は一様です。
  • 電界の向きは正の電極から負の電極へ向かう方向です。
  • 電界の大きさは位置によらず一定で、\(E = V/d\) で表されます。

電束密度と電荷の関係

  • ガウスの法則により、導体表面の電束密度 \(D\) は、その場所の単位面積当たりの電荷量に等しくなります。
  • つまり、\(D = Q/S\) が成り立ちます。
  • また、電束密度 \(D\) と電界 \(E\) の間には \(D = \varepsilon E\) の関係があります。

間違いやすいポイント:誘電率が変化しても、電極間の電圧が一定であれば、電界の強さ \(E\) は変化しません。一方、電束密度 \(D\) は誘電率 \(\varepsilon\) に比例して変化します。この点は頻出の誤りですので注意が必要です。

わかりやすい基本説明:

  • 平行板コンデンサ内部では、電気の力(電界)は上の板から下の板へ真っ直ぐに向かいます。
  • 電位は上の板から下の板へ階段のように少しずつ下がっていきます。
  • 同じ高さの場所では、電位は同じです(等電位面)。
  • 電界の強さは、電圧を板の間隔で割った値になります。例えば、100Vの電圧で間隔が2cmなら、電界は5,000V/mです。

静電エネルギーと誘電体の影響

平行板コンデンサに蓄えられる静電エネルギーと、誘電体がコンデンサの特性に与える影響について理解しましょう。

静電エネルギーの公式

$$W = \frac{1}{2}CV^2 = \frac{1}{2}QV = \frac{Q^2}{2C}$$

静電容量の公式 \(C = \varepsilon S/d\) を代入すると:

$$W = \frac{1}{2}\frac{\varepsilon S}{d}V^2 = \frac{1}{2}\varepsilon E^2 \cdot Sd$$

静電エネルギーの特性

  • 静電エネルギーは誘電体内部に蓄えられます。
  • エネルギーの大きさは、静電容量 \(C\) と電圧 \(V\) の2乗の積に比例します。
  • 電極板の面積 \(S\) が大きくなると、静電容量 \(C\) が増加するため、同じ電圧でもより多くのエネルギーを蓄えることができます。
  • 単位体積あたりのエネルギー密度は \(\frac{1}{2}\varepsilon E^2\) で表されます。

誘電体の影響

  • 静電容量への影響:誘電率 \(\varepsilon\) が大きいほど静電容量 \(C\) は増加します。
  • 電荷量への影響:誘電率 \(\varepsilon\) が大きいほど、同じ電圧でより多くの電荷 \(Q\) を蓄えられます。
  • 電界への影響:電圧が一定の場合、誘電率 \(\varepsilon\) が変化しても電界 \(E\) は変化しません。
  • 電束密度への影響:誘電率 \(\varepsilon\) が大きいほど電束密度 \(D\) は増加します。

誘電体の分極現象

誘電体内では、外部電界によって分子内の電荷が偏る「分極」が起こります。この分極により、誘電体表面に分極電荷が現れ、内部の実効的な電界が弱められる効果があります。しかし、電極間の電圧が一定の場合、電極間の全体的な電界は変化しません。

間違いやすいポイント:「誘電率が大きいほど電界が小さくなる」という記述は誤りです。電極間の電圧が一定の場合、電界の大きさ \(E = V/d\) は誘電率に依存せず一定です。ただし、電荷量が一定の場合は、誘電率が大きいほど電界は小さくなりますので、条件の違いに注意が必要です。

わかりやすい基本説明:

  • コンデンサに蓄えられるエネルギーは、電気を溜める「力」と「量」の掛け算で決まります。
  • 誘電体を入れると、コンデンサは同じ電圧でより多くの電気を溜められるようになります。
  • 電極の面積が大きいほど、また間隔が小さいほど、より多くのエネルギーを蓄えられます。
  • 蓄えられたエネルギーは、電気的な「ばね」のように、必要なときに放出されて使われます。

🔍 ワンポイントアドバイス: 平行板コンデンサの問題は第三種電気主任技術者試験でよく出題される重要テーマです。特に「誘電率と電界の関係」は混同しやすいポイントです。覚えておくべき重要な公式は①静電容量:\(C = \varepsilon S/d\)、②電界:\(E = V/d\)、③電束密度:\(D = \varepsilon E\)、④静電エネルギー:\(W = \frac{1}{2}CV^2\)です。誘電率の影響について理解する際に、「電圧一定」と「電荷一定」の条件を区別することが重要です。電圧一定の条件では、誘電率が変化しても電界は変化しませんが、電荷一定の条件では、誘電率が大きくなると電界は小さくなります。試験問題では「電極間の電位差は電圧Vの直流電源によって一定に保たれている」のように、条件が明記されていることが多いので、よく読み取って判断しましょう。

理論 平行板コンデンサの特性

面積がともに( S [m²] )で円形の二枚の電極板(導体平板)を,互いの中心が一致するように間隔( d [m] )で平行に向かい合わせて置いた平行板コンデンサがある。電極板間は誘電率( ε [F/m] )の誘電体で一様に満たされ,電極板間の電位差は電圧( V [V] )の直流電源によって一定に保たれている。この平行板コンデンサに関する記述として,誤っているものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
ただし,コンデンサの端効果は無視できるものとする。
(1) 誘電体内の等電位面は,電極板と誘電体の境界面に対して平行である。
(2) コンデンサに蓄えられる電荷量は,誘電率が大きいほど大きくなる。
(3) 誘電体内の電界の大きさは,誘電率が大きいほど小さくなる。
(4) 誘電体内の電束密度の大きさは,電極板の単位面積当たりの電荷量の大きさに等しい。
(5) 静電エネルギーは誘電体内に蓄えられ,電極板の面積を大きくすると静電エネルギーは増大する。

今日は平行板コンデンサの特性について勉強していくで。

コンデンサは電気を蓄える部品として大事やけど、その基本的な性質をきちんと理解しておくことが重要やな。

一つずつ選択肢を検討していこか。

まずは(1)の等電位面に関する記述やけど、平行板コンデンサ内の電界はどうなってるかな?

そこから等電位面の向きについて考えてみてや。

平行板コンデンサ内の電界は、端効果を無視すると一様になります。

電界は正の電極から負の電極に向かって垂直に発生します。

等電位面は電界に垂直になるため、電極板と平行な面となります。

よって、「誘電体内の等電位面は,電極板と誘電体の境界面に対して平行である」という記述は正しいと考えます。

解説

正解は (3) です。

各選択肢の詳しい解説:

  • (1) 正しい:平行板コンデンサ内の電界は一様で、電極板に垂直な方向に発生します。等電位面は常に電界に垂直になるため、電極板と平行になります。
  • (2) 正しい:平行板コンデンサに蓄えられる電荷量は \(Q = CV = \frac{\varepsilon S}{d}V\) です。誘電率\(\varepsilon\)が大きいほど静電容量Cが大きくなり、同じ電圧Vに対して蓄えられる電荷量Qも大きくなります。
  • (3) 誤り:平行板コンデンサ内の電界の大きさは \(E = \frac{V}{d}\) で表されます。この式に誘電率\(\varepsilon\)は含まれていないため、電圧Vが一定の場合、誘電率が変化しても電界の大きさは変わりません。
  • (4) 正しい:ガウスの法則より、誘電体内の電束密度D(単位面積当たりの電束)は電極板の単位面積当たりの電荷量(表面電荷密度σ)に等しくなります。つまり \(D = \sigma\) です。
  • (5) 正しい:平行板コンデンサの静電エネルギーは \(W = \frac{1}{2}CV^2 = \frac{1}{2}\frac{\varepsilon S}{d}V^2\) です。電極板の面積Sが大きくなると、静電容量Cが増加し、静電エネルギーWも増大します。また、静電エネルギーは電界中(誘電体内)に蓄えられます。

特に重要なポイントは、電界の大きさ\(E = \frac{V}{d}\)は誘電率\(\varepsilon\)に依存しないということです。これは誘電体を挿入すると静電容量Cは増加しますが、電圧Vが一定の場合は電界Eは変化しないことを意味します。これに対して電束密度\(D = \varepsilon E\)は誘電率\(\varepsilon\)に比例して大きくなります。

この問題のポイント

  • 平行板コンデンサの静電容量: \(C = \frac{\varepsilon S}{d}\)
  • 蓄えられる電荷量: \(Q = CV = \frac{\varepsilon S}{d}V\)
  • コンデンサ内の電界: \(E = \frac{V}{d}\) (誘電率に依存しない)
  • 電束密度: \(D = \varepsilon E = \sigma\)(表面電荷密度)
  • 静電エネルギー: \(W = \frac{1}{2}CV^2 = \frac{1}{2}\frac{\varepsilon S}{d}V^2\)