【理論】平成21年 問2|静電界における電界・力・誘電体の理解を問う論説問題

静電界に関する記述として,正しいのは次のうちどれか。

(1) 二つの小さな帯電体の間に働く力の大きさは,それぞれの帯電体の電気量の和に比例し,その距離の \( 2 \) 乗に反比例する。

(2) 点電荷が作る電界は点電荷の電気量に比例し,距離に反比例する。

(3) 電気力線上の任意の点での接線の方向は,その点の電界の方向に一致する。

(4) 等電位面上の正電荷には,その面に沿った方向に正のクーロン力が働く。

(5) コンデンサの電極板間にすき間なく誘電体を入れると,静電容量と電極板間の電界は,誘電体の誘電率に比例して増大する。

合格への方程式

電気力線と電界

電気力線は電界を視覚的に表現するための仮想的な線で、電界の様子を理解するのに役立ちます。

重要ポイント:電気力線は正電荷から出て負電荷に入る方向に描かれ、その密度が電界の強さを表します。

電気力線の5つの特徴

  • 電気力線の本数:電荷 \(Q\) [C] と誘電率 \(\varepsilon\) [F/m] を用いると、電気力線の本数は \(\displaystyle \frac{Q}{\varepsilon}\) 本となります。
  • 出入りの方向:電気力線は正電荷から垂直に出て、負電荷に垂直に入ります。
  • 力線同士の関係:電気力線同士は互いに反発し合います。
  • 力線の性質:電気力線は枝分かれしたり、交差したりしません。
  • 電界との関係:電気力線の向きは電界の向きと一致し、電気力線の密度は電界の大きさに比例します。

電界の定義

電界(電場)とは、空間中の各点に置かれた単位正電荷に働く力の大きさと向きを表すベクトル量です。単位は [N/C] または [V/m] で表されます。

$$E = \frac{F}{q}$$

ここで、\(E\) は電界、\(F\) は力、\(q\) は電荷です。

間違いやすいポイント:電気力線の向きと電界の向きは同じですが、電気力線は正電荷から出て負電荷に入るのに対し、電流の向きは一般的に正から負へ向かうと定義されています。混同しないようにしましょう。

わかりやすい基本説明:

  • 電気力線は、磁石の周りに鉄粉をまいたときにできる模様のように、電気の力の流れを見える形にしたものです。
  • プラスの電気からマイナスの電気へと線が流れていると考えると理解しやすいでしょう。
  • 線の密度が高いところほど電気の力が強く働きます。
  • 線と線は決して交わりません。これは同じ向きの力は干渉し合わないという物理法則を表しています。

クーロンの法則と電界

クーロンの法則は、二つの電荷間に働く力の大きさを表す基本法則です。これを用いて、空間中の電界を計算することができます。

クーロンの法則

真空中で距離 \(r\) [m] 離れた二つの電荷 \(Q_{\mathrm{A}}\) [C]、\(Q_{\mathrm{B}}\) [C] の間に働く力 \(F\) [N] は、

$$F = \frac{Q_{\mathrm{A}}Q_{\mathrm{B}}}{4\pi\varepsilon_0 r^2}$$

ここで、\(\varepsilon_0\) は真空の誘電率 (\(8.85 \times 10^{-12}\) [F/m]) です。

電荷の符号と力の関係

  • 同符号(+と+、−と−):斥力(反発する力)が働きます。
  • 異符号(+と−):引力(引き合う力)が働きます。

真空中の電界の大きさ

真空中に電荷 \(Q\) [C] を置いたとき、電荷から距離 \(r\) [m] 離れた場所の電界の大きさ \(E\) [N/C] は、

$$E = \frac{Q}{4\pi\varepsilon_0 r^2}$$

この場所に電荷 \(q\) [C] を置くと、力 \(F\) [N] は、

$$F = qE$$

となります。

間違いやすいポイント:クーロンの法則と電界の計算式はよく似ていますが、電界の式は「単位電荷あたりの力」を表していることに注意してください。また、距離の2乗に反比例することも重要なポイントです。

わかりやすい基本説明:

  • クーロンの法則は「電気を持った物体同士が及ぼし合う力」を計算する式です。
  • 同じ種類の電気(+と+、−と−)は反発し、異なる種類の電気(+と−)は引き合います。
  • 二つの電気の量が多いほど力は強くなり、距離が2倍になると力は1/4になります。
  • 電界は、ある場所に単位の電気を置いたときにどれだけの力が働くかを表します。

平行平板コンデンサ

平行平板コンデンサは、二枚の平行な金属板(極板)で構成される基本的なコンデンサで、静電容量や電界の計算が比較的簡単な例として重要です。

平行平板コンデンサの静電容量

平行平板コンデンサの静電容量 \(C\) [F] は、

$$C = \frac{\varepsilon_0 S}{d}$$

ここで、\(\varepsilon_0\) は真空の誘電率、\(S\) は極板の面積 [m²]、\(d\) は極板間の距離 [m] です。

平行平板コンデンサの間に比誘電率 \(\varepsilon_r\) の誘電体を挿入すると、

$$C = \frac{\varepsilon_r \varepsilon_0 S}{d}$$

となります。

平行平板コンデンサの電界と電圧の関係

極板間の距離 \(d\) [m] の平行平板コンデンサに電圧 \(V\) [V] をかけると、極板間の電界 \(E\) [V/m] は、

$$E = \frac{V}{d}$$

となります。

蓄えられるエネルギー

コンデンサに蓄えられる静電エネルギー \(W\) [J] は、

$$W = \frac{1}{2}CV^2 = \frac{1}{2}QV$$

ここで、\(C\) は静電容量、\(V\) は電圧、\(Q\) は電荷です。

間違いやすいポイント:極板の面積を2倍にすると静電容量は2倍になりますが、極板間の距離を2倍にすると静電容量は1/2になることに注意してください。また、誘電体を挿入すると静電容量は比誘電率\(\varepsilon_r\)倍になります。

わかりやすい基本説明:

  • 平行平板コンデンサは、二枚の金属板を向かい合わせた構造で、電気を一時的に蓄える装置です。
  • 金属板の面積が大きいほど、また板の間隔が小さいほど、より多くの電気を蓄えられます。
  • 板の間に特殊な物質(誘電体)を入れると、さらに電気を蓄える能力が高まります。
  • 板の間の電界は、かけた電圧を板の間隔で割った値となり、均一な電界が形成されます。

静電容量の直列・並列接続

コンデンサを接続する方法によって合成静電容量の計算が異なります:

  • 直列接続:\(\displaystyle \frac{1}{C} = \frac{1}{C_1} + \frac{1}{C_2} + ... + \frac{1}{C_n}\)
  • 並列接続:\(C = C_1 + C_2 + ... + C_n\)

🔍 ワンポイントアドバイス: 電気力線と電界の関係、クーロンの法則、平行平板コンデンサの公式は第三種電気主任技術者試験の基本中の基本です。特に平行平板コンデンサの静電容量の計算は頻出問題ですので、「極板の面積に比例し、極板間の距離に反比例する」という関係を確実に覚えておきましょう。また、比誘電率の影響も重要です。電気力線については図で理解することが大切で、正電荷から出て負電荷に入るという基本的な性質を押さえておくと良いでしょう。計算問題では単位の扱いに注意し、特に誘電率の単位 [F/m] をしっかり理解しておくことが重要です。

理論 静電界に関する問題

(1) 二つの小さな帯電体の間に働く力の大きさは,それぞれの帯電体の電気量の和に比例し,その距離の( 2 )乗に反比例する。
(2) 点電荷が作る電界は点電荷の電気量に比例し,距離に反比例する。
(3) 電気力線上の任意の点での接線の方向は,その点の電界の方向に一致する。
(4) 等電位面上の正電荷には,その面に沿った方向に正のクーロン力が働く。
(5) コンデンサの電極板間にすき間なく誘電体を入れると,静電容量と電極板間の電界は,誘電体の誘電率に比例して増大する。
今日は静電界についての問題やで。
電荷間の力や電界の性質についての基本をしっかり理解できてるか確認していこか。
正しい記述を1つ選ぶ問題やから、1つずつ検討していこな。
まずは(1)の選択肢やけど、クーロンの法則に関する記述やな。
二つの帯電体間の力はどんな関係になるんやったかな?
クーロンの法則によると、二つの帯電体間に働く力の大きさは、それぞれの帯電体の電気量の「積」に比例し、距離の2乗に反比例します。
問題文では「和」に比例すると書かれていますが、これは誤りです。
正しくは F = (Q₁Q₂)/(4πε₀r²) となります。
したがって、(1)の記述は誤りです。

解説

正解は (3) です。

各選択肢の詳しい解説:

  • (1) 誤り:クーロンの法則によれば、二つの小さな帯電体の間に働く力の大きさは、それぞれの帯電体の電気量の「積」に比例し、その距離の2乗に反比例します。正しい式は F = (Q₁Q₂)/(4πε₀r²) です。「和」ではなく「積」です。
  • (2) 誤り:点電荷が作る電界の大きさは、点電荷の電気量に比例し、距離の「2乗」に反比例します。正しい式は E = Q/(4πε₀r²) です。「距離」ではなく「距離の2乗」です。
  • (3) 正しい:電気力線は電界の方向を示す仮想の線であり、電気力線上の任意の点での接線の方向は、その点の電界の方向に一致します。これは電気力線の基本的な性質です。
  • (4) 誤り:等電位面は電界に垂直なため、等電位面上の正電荷に働くクーロン力は等電位面に垂直な方向に働きます。「面に沿った方向」ではなく「面に垂直な方向」です。
  • (5) 誤り:コンデンサの電極板間に誘電体を入れると、静電容量は誘電体の誘電率に比例して増大しますが、同じ電圧をかけた場合の電極板間の電界は誘電体の誘電率に関係なく一定です。

静電界の基本法則と性質を正確に理解することは、電気理論の基礎として非常に重要です。特にクーロンの法則、電界と電気力線の関係、コンデンサの特性などは電気主任技術者試験の頻出分野です。

この問題のポイント

  • クーロンの法則:F = (Q₁Q₂)/(4πε₀r²) 【電気量の積、距離の2乗に反比例】
  • 点電荷の電界:E = Q/(4πε₀r²) 【距離の2乗に反比例】
  • 電気力線:電界の方向を示し、その接線方向は電界方向と一致する
  • 等電位面:電界に垂直で、面上の電荷には面に垂直な力が働く
  • 誘電体効果:静電容量は誘電率に比例して増大、電界は変化しない