火力発電は、化石燃料(石炭、石油、天然ガス)の燃焼によって得られる熱エネルギーを利用して発電する方式です。燃料の化学エネルギーをボイラで熱エネルギーに変換し、この熱エネルギーで水を蒸気に変えて蒸気タービンを回転させ、発電機により電気エネルギーを得ます。この一連のエネルギー変換過程は、熱力学の法則に基づいて設計されており、高温高圧の蒸気から仕事を取り出す原理が基本となります。
火力発電のエネルギー変換過程は以下の順序で行われます。まず、ボイラの燃焼炉において燃料を空気中の酸素と反応させ、高温の燃焼ガスを発生させます。この燃焼ガスの熱を水管内の水に伝え、高温高圧の蒸気を生成します。蒸気は蒸気タービンに導かれてノズルや羽根に作用し、タービンを回転させます。タービンに直結された発電機が回転エネルギーを電気エネルギーに変換し、電力として出力されます。タービンを通過した蒸気は復水器で冷却されて水に戻り、再びボイラに送られる循環サイクルを形成します。
図1-1 火力発電のエネルギー変換過程と各段階の効率
ここで、η_th:熱効率、W:有効仕事[J]、Q_in:入力熱量[J]、Q_out:排出熱量[J]、P:出力[kW]、B:燃料消費量[kg/s]、H:燃料の発熱量[kJ/kg]
火力発電の出力は、燃料の消費量と発熱量に比例し、さらに熱効率が掛け合わされます。熱効率は熱力学第二法則の制約を受け、理論上の上限であるカルノー効率を超えることはできません。現代の火力発電所では、蒸気条件の高温高圧化、再熱・再生サイクルの採用、コンバインドサイクルの導入などにより、熱効率の向上が図られています。最新のコンバインドサイクル発電では、熱効率60%以上を達成する設備も登場しています。
解答:
出力500MW = 500,000kWの発電に必要な熱入力:火力発電は熱力学第二法則に支配されるため、投入した全ての熱エネルギーを仕事に変換することはできません。タービン出口の蒸気は復水器で冷却水によって凝縮され、この過程で大量の熱が環境中に放出されます。この排熱が熱効率の限界を決定する主要因であり、排熱の有効利用はコージェネレーションなどの形で積極的に取り組まれています。
火力発電は我が国の電力供給における基幹電源であり、その特徴は他の電源方式と比較して多岐にわたります。最も重要な特徴は、出力調整能力に優れ、電力需要の変動に柔軟に対応できることです。起動から定格出力到達までの時間は、ガスタービンで数十分、汽力発電で数時間程度であり、計画的な運用により電力の安定供給を実現できます。また、建設期間が比較的短く、立地選定の自由度が高いことも大きな利点です。
技術的特徴として、火力発電は長年の技術蓄積により高い信頼性を確立しています。蒸気タービンやボイラの設計・製造技術は世界最高水準にあり、設備の高効率化、長寿命化、保守の最適化が進められています。特に、超超臨界圧(USC)技術では蒸気温度600℃以上、蒸気圧力25MPa以上の高温高圧条件を実現し、熱効率の大幅な向上を達成しています。さらにコンバインドサイクルでは、ガスタービンと蒸気タービンの組み合わせにより、単独サイクルを超える高い熱効率を実現しています。
電力系統における役割として、火力発電はベースロード電源、ミドル電源、ピーク電源のいずれにも対応できる汎用性を持ちます。石炭火力は比較的低コストで安定運転が可能なためベースロード電源として、LNG火力は起動停止が容易でミドル電源として、石油火力やガスタービンは高速起動が可能でピーク電源として、それぞれの特徴を活かした運用がなされています。近年では、再生可能エネルギーの出力変動を補完する調整電源としての役割も重要性を増しています。
経済的特徴として、火力発電は建設費は水力発電に比べ安価ですが、運転には常に燃料費が発生します。発電コストに占める燃料費の割合は大きく、燃料価格の変動が経営に直接影響します。石炭は比較的安価で安定していますが、天然ガスや石油は国際市場の影響を受けやすく、為替変動や地政学的リスクも考慮する必要があります。これらの燃料費リスクを分散するため、複数の燃料源を確保する燃料多様化が重要な経営戦略となっています。
解答:
石炭火力の燃料コスト:我が国の火力発電は、1950年代の石炭火力から始まり、1960年代以降の高度経済成長期に石油火力が大量に建設され、その後のオイルショックを契機としてLNG火力への転換が進められてきました。現在、日本の火力発電設備容量は約1億8,000万kWに達し、これは全電源設備容量の約65%を占めています。年間発電電力量は約6,500億kWhで、総発電電力量の約70%を担う最大の電源となっています。
燃料別の構成として、LNG(液化天然ガス)が最大の比率を占め、全火力発電の約40%を担います。石炭火力は約30%、石油火力は約5%となっており、残りはLPGや混焼などです。LNG火力は環境性能とコストのバランスに優れ、新設発電所の多くがLNG焚きコンバインドサイクルを採用しています。石炭火力は燃料費が安価で安定供給性に優れますが、CO₂排出量が多いため、高効率化と環境対策が課題となっています。
図1-2 日本の電源別発電電力量構成(概数)
技術的発展として、我が国の火力発電技術は世界最高水準にあります。特に、超超臨界圧(USC:Ultra Super Critical)ボイラ技術では、蒸気温度600℃以上、蒸気圧力25MPa以上の条件で熱効率43~45%を実現しています。また、1,600℃級ガスタービンを用いた最新のコンバインドサイクル発電(MACC II)では、熱効率62%以上を達成し、世界最高水準の効率を誇ります。さらに、石炭ガス化複合発電(IGCC)やCO₂回収・貯留(CCS)などの革新的技術の開発も進められています。
今後の課題として、2050年カーボンニュートラルの実現に向けたCO₂排出削減が最重要課題となっています。石炭火力の段階的縮小、LNG火力の高効率化、水素・アンモニア混焼技術の開発、CCS/CCUSの実用化など、脱炭素化に向けた技術革新と電源構成の転換が求められています。一方で、再生可能エネルギーの出力変動を補完する調整電源としての役割は引き続き重要であり、火力発電の柔軟性をさらに高める技術開発も進められています。
火力発電に使用される燃料は、固体燃料(石炭)、液体燃料(重油・軽油)、気体燃料(天然ガス・LPG)に大別されます。各燃料はそれぞれ異なる発熱量、燃焼特性、環境負荷を持ち、発電所の設計や運用方式に大きな影響を与えます。燃料選択は、経済性、環境性、安定供給性、技術適合性などを総合的に評価して決定されます。
石炭は世界的に豊富な埋蔵量を持ち、価格が比較的安定した燃料です。発熱量は石炭の種類により異なり、無煙炭で約30,000kJ/kg、瀝青炭で約25,000~30,000kJ/kg、褐炭で約15,000~20,000kJ/kgです。我が国では主にオーストラリアやインドネシアからの輸入瀝青炭を使用しています。石炭は炭素含有量が高いためCO₂排出量が最も多く、また灰分や硫黄分を含むため、排煙処理設備や灰処理設備が必要となります。
天然ガス(LNG)は、メタン(CH₄)を主成分とする気体燃料を液化したもので、発熱量は約54,000kJ/kgです。燃焼時のCO₂排出量は石炭の約60%と少なく、硫黄分をほとんど含まないため、環境負荷が小さい燃料です。液化するために-162℃以下に冷却する必要があり、LNG受入基地の建設と専用タンカーによる輸送が必要となります。気化時の冷熱は冷凍倉庫や空調システムへの利用も行われています。
石油(重油)は、発熱量が約40,000~44,000kJ/kgで、液体であるため貯蔵・取扱いが容易です。しかし、価格変動が大きく、硫黄分を含むため脱硫対策が必要です。かつては主要な発電用燃料でしたが、オイルショック以降は新設が減少し、現在はピーク電源や離島電源として限定的に使用されています。
| 燃料 | 発熱量 (kJ/kg) |
CO₂排出原単位 (kg-CO₂/kWh) |
主な特徴 | 主な用途 |
|---|---|---|---|---|
| 石炭(瀝青炭) | 25,000~30,000 | 約0.82~0.94 | 安価・安定供給、灰分・硫黄分あり | ベースロード電源 |
| LNG | 約54,000 | 約0.36~0.48 | クリーン・高効率、受入設備要 | ミドル電源・調整電源 |
| 重油 | 40,000~44,000 | 約0.68~0.74 | 液体で取扱い容易、価格変動大 | ピーク電源・離島電源 |
| 軽油 | 約43,000 | 約0.68 | 内燃機関用、起動用 | 非常用電源・起動用 |
| LPG | 約50,000 | 約0.55 | クリーン、貯蔵容易 | ガスタービン・小型発電 |
ここで、C:炭素含有率、H:水素含有率、O:酸素含有率、S:硫黄含有率(いずれも質量比)、A:実際空気量[kg]、A₀:理論空気量[kg]
次世代燃料として、水素やアンモニアが注目されています。水素は燃焼時にCO₂を排出しないため、究極のクリーン燃料とされています。ただし、製造段階でのCO₂排出(グレー水素)が課題であり、再生可能エネルギーを用いた水電解によるグリーン水素の普及が期待されています。アンモニア(NH₃)は水素キャリアとしての役割に加え、直接燃焼による発電も研究されており、既存の石炭火力への混焼技術が先行して実用化が進められています。
解答:
重油1kgあたりのCO₂排出量:汽力発電は、火力発電の最も基本的な方式であり、ボイラで燃料を燃焼させて高温高圧の蒸気を生成し、この蒸気で蒸気タービンを駆動して発電する方式です。ランキンサイクルを基本とし、再熱・再生サイクルの採用により効率の向上が図られています。我が国の大型火力発電所の多くがこの方式を採用しており、石炭焚きおよび重油焚きの発電所が該当します。出力規模は数十MWから100万kW以上の大容量まで対応可能で、ベースロード電源からミドル電源まで幅広い運用が行われています。
図2-1 汽力発電所の基本構成とランキンサイクルの流れ
汽力発電の蒸気条件は、熱効率向上のため年々高温高圧化が進められてきました。初期の火力発電所は蒸気圧力5MPa、蒸気温度400℃程度でしたが、材料技術の進歩により、亜臨界圧(Sub-C:16.6MPa以下)、超臨界圧(SC:22.1MPa以上)、超超臨界圧(USC:24.2MPa以上、600℃以上)へと発展してきました。蒸気条件の高温高圧化によりカルノー効率の限界が引き上げられ、より高い熱効率が実現されます。
ガスタービン発電は、圧縮機で空気を圧縮し、燃焼器で燃料を燃焼させて高温の燃焼ガスを発生させ、このガスでタービンを駆動して発電する方式です。ブレイトンサイクルを基本とし、作動流体は燃焼ガスそのものです。蒸気を経由しないため、ボイラや復水器が不要で設備構成が簡素であり、起動停止が迅速に行えるのが大きな特徴です。タービン入口温度の高温化により効率向上が図られ、最新の大型ガスタービンでは入口温度1,600℃以上を実現しています。
ガスタービンの効率は、圧力比とタービン入口温度に大きく依存します。単独運転でのガスタービンの熱効率は30~40%程度ですが、排気温度が500~600℃と高いため、この排熱を利用して蒸気を発生させるコンバインドサイクルとして利用することで、大幅な効率向上が可能です。ガスタービン単独での利用は、ピーク電源や非常用電源など、迅速な起動が求められる用途に限られる傾向にあります。
解答:
ブレイトンサイクルの理論熱効率:コンバインドサイクル(CC:Combined Cycle)発電は、ガスタービンと蒸気タービンを組み合わせた複合発電方式であり、現代の火力発電技術の中で最も高い熱効率を実現する方式です。ガスタービンで発電した後、排気ガスの残留熱エネルギーを排熱回収ボイラ(HRSG:Heat Recovery Steam Generator)で回収して蒸気を発生させ、蒸気タービンでも発電を行います。これにより、ブレイトンサイクルとランキンサイクルを重畳させた高効率発電が実現されます。
図2-2 コンバインドサイクル発電の構成と熱の流れ
コンバインドサイクルの熱効率は、ガスタービン単独やスチームタービン単独よりも大幅に高く、ガスタービンの熱効率をη_G、ボトミングサイクル(蒸気タービン系統)の熱効率をη_Sとした場合、総合熱効率η_CCは以下の式で表されます。
ここで、η_CC:コンバインドサイクル総合熱効率、η_G:ガスタービン(トッピングサイクル)熱効率、η_S:蒸気タービン(ボトミングサイクル)熱効率
解答:
\begin{align} \eta_{CC} &= \eta_G + (1 - \eta_G) \times \eta_S \\[5pt] &= 0.40 + (1 - 0.40) \times 0.35 \\[5pt] &= 0.40 + 0.60 \times 0.35 \\[5pt] &= 0.40 + 0.21 = 0.61 = \textbf{61\%} \end{align}コンバインドサイクル発電の構成には、主に「一軸型」と「多軸型」があります。一軸型は、ガスタービンと蒸気タービンを同一軸上に配置し、1台の発電機で発電する方式です。設備がコンパクトで建設費が安いですが、運用の柔軟性はやや劣ります。多軸型は、ガスタービンと蒸気タービンに別々の発電機を設け、複数のガスタービンの排熱を1台の蒸気タービンで回収する方式です。部分負荷時の効率が良く、運用の柔軟性に優れています。
内燃力発電は、ディーゼルエンジンやガスエンジンなどの内燃機関を用いて発電する方式です。燃料をシリンダ内で直接燃焼させ、ピストンの往復運動を回転運動に変換して発電機を駆動します。小型から中型の発電設備に適しており、離島電源、非常用電源、分散型電源として広く利用されています。
ディーゼル発電は、重油や軽油を燃料とし、圧縮着火方式で動作します。熱効率は35~45%と比較的高く、小型でも高い効率を維持できます。起動が迅速で、数分以内に定格出力に到達可能です。また、部分負荷でも効率低下が少ないという特徴があります。離島では電力供給の主力として、都市部では非常用発電設備として多数設置されています。
ガスエンジン発電は、天然ガスや都市ガスを燃料とし、火花点火方式(オットーサイクル)で動作します。排気がクリーンで、コージェネレーションシステムの原動機として工場や病院、商業施設などで利用されています。熱効率は35~45%、排熱回収を含む総合効率は70~85%に達します。
| 発電方式 | 熱効率 | 出力規模 | 起動時間 | 主な用途 |
|---|---|---|---|---|
| 汽力発電(USC) | 42~45% | 30万~100万kW | 数時間~十数時間 | ベースロード・ミドル |
| ガスタービン(単独) | 30~40% | 1万~30万kW | 10~30分 | ピーク・非常用 |
| コンバインドサイクル | 55~63% | 30万~170万kW | 1~2時間 | ミドル・調整 |
| ディーゼル発電 | 35~45% | 100kW~数万kW | 数分 | 離島・非常用 |
| ガスエンジン | 35~45% | 数百kW~数万kW | 数分 | コージェネ・分散 |
カルノーサイクルは、2つの等温過程と2つの断熱過程から構成される理想的な熱機関のサイクルであり、与えられた高温源温度T₁と低温源温度T₂の間で動作する全ての熱機関の中で最大の効率を示します。実際の熱機関はカルノー効率を超えることができず、カルノーサイクルは熱効率の理論的上限を与える基準として重要な意味を持ちます。
図3-1 カルノーサイクルのT-s線図と各過程
ここで、η_C:カルノー効率、T₁:高温源の絶対温度[K]、T₂:低温源の絶対温度[K]、Q₁:入力熱量、Q₂:排出熱量、W:正味仕事
カルノー効率は、高温源温度T₁が高いほど、また低温源温度T₂が低いほど大きくなります。このことは、火力発電における蒸気条件の高温化がなぜ効率向上に寄与するかを理論的に説明します。例えば、蒸気温度600℃(873K)、排気温度33℃(306K)の場合、カルノー効率は1-306/873=0.649(64.9%)となります。実際のサイクルでは不可逆損失によりカルノー効率に達することはできませんが、蒸気条件の高温化は効率向上の基本的な方向性を示しています。
解答:
600℃の場合:ランキンサイクルは、汽力発電所の基本サイクルであり、水と蒸気を作動流体とする実用的な熱機関のサイクルです。カルノーサイクルと異なり、相変化(水→蒸気→水)を伴う実際的なサイクルであり、ボイラ(加熱)、タービン(膨張)、復水器(凝縮)、給水ポンプ(圧縮)の4つの主要過程から構成されます。
図3-2 ランキンサイクルのT-s線図
ここで、h:比エンタルピー[kJ/kg]、w_T:タービン仕事、w_P:ポンプ仕事、q_in:入熱量、添字1~4は各状態点
ランキンサイクルの効率向上策として、蒸気の高温高圧化が最も基本的な方法です。ボイラ出口の蒸気温度と圧力を高くすることで、タービンで取り出せる仕事が増大し、熱効率が向上します。ただし、高圧化に伴いタービン出口の蒸気の湿り度が増加するため、タービン翼の浸食問題が生じます。この問題を回避するために再熱サイクルが採用されます。
ブレイトンサイクルは、ガスタービン発電の基本サイクルであり、2つの等圧過程と2つの断熱過程から構成されます。圧縮機で空気を断熱圧縮し(1→2)、燃焼器で等圧加熱し(2→3)、タービンで断熱膨張させて仕事を取り出し(3→4)、排気ガスを大気に放出して等圧冷却される(4→1)というサイクルを形成します。開放サイクルとして動作するため、作動流体は大気から取り込まれ、排出されます。
ここで、η_B:ブレイトン効率、r_p:圧力比、κ:比熱比(空気の場合1.4)、c_p:定圧比熱、T:各点の絶対温度[K]
ブレイトンサイクルの熱効率は圧力比のみで決まり、タービン入口温度には直接依存しません。しかし、実際のガスタービンでは、タービン入口温度を高くすることで単位空気量あたりの出力が増大し、結果として経済的な効率向上が得られます。最新の大型ガスタービンでは、タービン入口温度1,600℃以上を実現するために、翼冷却技術、耐熱合金、遮熱コーティング(TBC)などの先端材料技術が適用されています。
再熱サイクルは、ランキンサイクルの効率向上と湿り蒸気問題の解決を目的として広く採用されている方式です。高圧タービンで膨張した蒸気をボイラの再熱器に戻し、再度加熱してから中圧・低圧タービンに導入します。これにより、タービン出口の蒸気の湿り度を低減しつつ、サイクルの平均入熱温度を上昇させて効率を向上させます。現代の大型汽力発電所では、1段再熱または2段再熱が標準的に採用されています。
再生サイクルは、タービンの中間段から蒸気の一部を抽気し、この蒸気で給水を予熱する方式です。給水温度を上昇させることで、ボイラでの加熱量を節約し、サイクルの平均入熱温度を上昇させて効率を向上させます。一般に、抽気は複数の圧力段から行われ、低圧給水加熱器と高圧給水加熱器の6~8段で構成されます。再生サイクルはランキンサイクルの効率をカルノーサイクルに近づける効果があります。
図3-3 再熱再生サイクルの構成概念
再熱サイクルでは、高圧タービン出口蒸気(h₃)をボイラで再加熱(h₄)して再度タービン(h₅)に導く。再生サイクルでは、給水加熱器により給水温度がh₁からh₁'に上昇する。
解答:
再熱なし:ボイラは燃料の燃焼熱を水に伝えて蒸気を発生させる装置であり、火力発電所の中核設備です。ボイラの種類は、水と蒸気の循環方式により大きく分類されます。発電用ボイラとして主に使用されるのは、自然循環ボイラ、強制循環ボイラ、貫流ボイラの3種類です。蒸気条件の高温高圧化に伴い、臨界圧以上では気水分離が不可能となるため、貫流ボイラの採用が必須となります。
自然循環ボイラは、ドラム(気水分離器)を有し、水管内の水と蒸気の密度差による自然対流で水を循環させる方式です。降水管内の水の密度が水壁管(上昇管)内の水蒸気混合物より大きいため、自然に循環力が生じます。構造が比較的簡単で信頼性が高いですが、蒸気圧力が高くなると水と蒸気の密度差が小さくなり循環力が低下するため、亜臨界圧以下(約17MPa以下)で使用されます。
強制循環ボイラは、自然循環ボイラと同様にドラムを有しますが、循環ポンプにより強制的に水を循環させる方式です。自然循環力が不足する高圧条件でも確実な循環が得られ、ボイラの設計自由度が高くなります。ただし、循環ポンプの所内動力が必要となります。
貫流ボイラは、ドラムを持たず、給水ポンプの圧力で水を水管に押し込み、加熱→蒸発→過熱の全過程を1パスで行う方式です。超臨界圧以上では水と蒸気の区別がなくなるため、気水分離器(ドラム)が不要となります。超臨界圧ボイラ(SC、USC)は全て貫流ボイラです。起動停止が比較的速く、負荷変動への追従性も良好ですが、給水の水質管理が極めて重要です。
図4-1 ボイラの種類と水・蒸気の循環方式の比較
火力発電用ボイラの燃焼方式は、使用する燃料の種類に応じて異なります。石炭焚きでは微粉炭燃焼方式が主流であり、重油焚きではバーナ燃焼方式、ガス焚きではガスバーナ方式が採用されます。いずれの方式でも、効率的な燃焼と低公害化の両立が設計上の重要課題です。
微粉炭燃焼方式は、石炭を微粉炭機(ミル)で200メッシュ以下の粒径に粉砕し、搬送空気とともにバーナから噴射して燃焼させる方式です。石炭の表面積を大幅に増やすことで短時間での完全燃焼が可能となり、燃焼効率99%以上を達成できます。微粉炭機の種類には、竪型ミル(ローラミル)、チューブミル(ボールミル)などがあり、大型発電所では竪型ミルが主流です。
流動層燃焼方式は、砂やアルミナの粒子を空気で流動化させた層(流動層)の中に石炭を投入して燃焼させる方式です。燃焼温度が800~900℃と低いため、NOxの発生が抑制されます。また、石灰石を添加することで炉内脱硫が可能です。循環流動層ボイラ(CFB)は大型化が進み、低品位炭やバイオマスの混焼にも対応できる柔軟性を持っています。
燃焼における重要な概念として、理論空気量と空気比があります。理論空気量は燃料を完全燃焼させるために化学量論的に必要な最小空気量であり、実際には不完全燃焼を防ぐために理論空気量より多くの空気を供給します。この実際の空気量と理論空気量の比を空気比(空気過剰率)と呼びます。空気比が大きすぎると排ガス量が増えて排ガス損失が増大し、小さすぎると不完全燃焼により効率が低下します。一般的な最適空気比は石炭焚きで1.2~1.3、ガス焚きで1.05~1.15程度です。
解答:
燃焼に必要な酸素量:ボイラには燃焼効率の向上と環境対策のために多くの付属設備が設けられています。主要な付属設備として、過熱器、再熱器、節炭器(エコノマイザ)、空気予熱器があり、これらはボイラの熱効率を総合的に向上させる役割を担います。
過熱器は、飽和蒸気をさらに加熱して過熱蒸気にする装置です。ボイラドラムから出た飽和蒸気を、高温の燃焼ガスにより所定の温度まで加熱します。蒸気温度は材料の耐熱限界により制限され、現在の大型ボイラでは主蒸気温度566~620℃が実現されています。過熱蒸気とすることで、タービン内での蒸気の湿り度を低減でき、タービン翼の浸食防止と効率向上に寄与します。
再熱器は、高圧タービンで仕事をした蒸気をボイラに戻して再度加熱する装置です。再熱サイクルの実現に不可欠であり、高圧タービン出口の蒸気温度を元の主蒸気温度近くまで回復させます。再熱温度は通常、主蒸気温度と同等の566~620℃に設定されます。
節炭器(エコノマイザ)は、ボイラ出口の排ガスの余熱を利用して給水を予熱する装置です。排ガス温度を低下させることでボイラの排ガス損失を低減し、熱効率を向上させます。給水温度を高めることで、ボイラでの蒸発に必要な熱量が節約されます。
空気予熱器は、ボイラ出口の排ガスの余熱を利用して燃焼用空気を予熱する装置です。予熱された空気を燃焼炉に供給することで、燃焼効率が向上し、燃料消費量が削減されます。回転再生式(ユングストローム式)と管式の2種類があり、大型ボイラでは回転再生式が多く採用されています。
ボイラの給水処理は、ボイラ内部のスケール付着、腐食、キャリーオーバー(水分の蒸気への混入)を防止するために極めて重要です。特に高圧ボイラや貫流ボイラでは、水質管理の要求が厳しくなります。給水処理の主な工程は、イオン交換樹脂による脱塩処理、脱気器による溶存酸素の除去、pH調整、全揮発性処理(AVT)または酸素処理(OT)などです。
脱気器は、給水中の溶存気体(特に溶存酸素と遊離炭酸ガス)を除去する装置です。溶存酸素はボイラや配管の腐食原因となるため、加熱脱気方式により0.007mg/L以下に低減します。ヘンリーの法則に基づき、水温を上昇させて溶存気体の溶解度を低下させ、放出させる原理を利用しています。
蒸気タービンは、高温高圧の蒸気が持つ熱エネルギーを回転運動の機械的エネルギーに変換する原動機です。蒸気がノズルまたは静翼(固定翼)を通過する際に圧力と温度が低下して高速の蒸気流となり、この高速蒸気流が動翼(回転翼)に作用して回転力を発生させます。蒸気タービンはその動作原理により、衝動タービンと反動タービンに大別されます。
衝動タービンは、ノズルで蒸気の圧力エネルギーを全て運動エネルギーに変換し、この高速蒸気流が動翼に衝突することで回転力を得る方式です。蒸気の圧力降下はノズルのみで生じ、動翼では圧力変化はありません(圧力一定)。動翼では蒸気の方向が変化し、その運動量変化により動翼に力が作用します。代表的なものにカーチスタービン(速度複式)やラトー段があります。
反動タービンは、静翼と動翼の両方で蒸気の膨張が起こり、圧力降下が分配される方式です。動翼自体もノズルの機能を持ち、蒸気が動翼内で膨張加速することで反動力が生じます。反動度は一般に50%程度に設計され、静翼と動翼でほぼ等しい圧力降下が生じます。反動タービンは衝動タービンに比べ段あたりのエンタルピー降下が小さいため、多段構成となりますが、効率が高い特徴があります。
図5-1 衝動タービンと反動タービンにおける蒸気の圧力・速度変化
ここで、R:反動度、Δh_動翼:動翼でのエンタルピー降下、Δh_段:段落全体のエンタルピー降下、G:蒸気流量[kg/s]、η_m:機械効率
実際の大型蒸気タービンでは、高圧段に衝動型を、低圧段に反動型を採用する複合構成が一般的です。高圧段では蒸気の比体積が小さく圧力降下が大きいため、段数の少ない衝動型が適しています。低圧段では蒸気の比体積が大きく膨張量が多いため、効率の高い反動型が採用されます。大型火力発電所のタービンは、高圧タービン(HP)、中圧タービン(IP)、低圧タービン(LP)の3つのケーシングに分かれ、串形または並列に配置されます。
大型蒸気タービンは、高圧タービン(HP)、中圧タービン(IP)、低圧タービン(LP)から構成されます。高圧・中圧タービンには耐熱性に優れたCr-Mo-V鋼やNi基合金が使用され、低圧タービンの最終段翼は1m以上の長翼となるためチタン合金なども採用されています。タービンの回転数は50Hz系統で3,000rpm、60Hz系統で3,600rpmが標準で、発電機の極数との関係で決定されます。
タービン翼は蒸気のエネルギーを効率的に回転エネルギーに変換するための最重要部品です。翼型は空力設計により最適化され、三次元流れ解析(CFD)を用いた高度な設計が行われています。低圧最終段翼は長翼化が進み、翼端周速が音速に近づくため、超音速流れに対応した翼型設計が必要です。また、低圧段では蒸気の湿り度が増加するため、水滴による翼の浸食(エロージョン)対策として、翼前縁にステライト合金のシールドを施す処理が行われています。
蒸気タービンの出力制御は、タービンに供給する蒸気の量を調整することで行われます。主な制御方式として、絞り調速(スロットル制御)とノズル調速(部分噴射制御)があります。絞り調速は主蒸気加減弁の開度を変化させて蒸気流量を調整する方式で、構造が簡単ですが絞り損失が大きく、部分負荷時の効率が低下します。ノズル調速は複数のノズル群を選択的に開閉して蒸気流量を調整する方式で、絞り損失が少なく部分負荷時の効率が良好です。
タービンの保護装置として、以下の異常を検出して自動的にタービンを停止させるシステムが設けられています。
解答:
\begin{align} P_T &= G \times (h_{in} - h_{out}) \times \eta_m \\[5pt] &= 138.9 \times (3450 - 2350) \times 0.98 \\[5pt] &= 138.9 \times 1100 \times 0.98 \\[5pt] &= 149{,}685 \text{ [kW]} \approx \textbf{149.7 MW} \end{align}ガスタービンは、圧縮機(コンプレッサ)、燃焼器(コンバスタ)、タービンの3つの主要部分から構成されます。圧縮機で大気から取り込んだ空気を圧縮し、燃焼器で燃料を燃焼させて高温の燃焼ガスを生成し、このガスでタービンを駆動します。タービン出力の約2/3は圧縮機の駆動に消費され、残りの約1/3が正味出力として発電機に伝達されます。
タービン入口温度(TIT)の向上がガスタービンの効率向上における最重要課題です。TITが100℃上昇するごとに熱効率は約2~3%向上します。最新の大型ガスタービンでは、TIT 1,600℃以上を実現しており、これを支える技術として翼冷却技術(空気冷却、蒸気冷却)、耐熱超合金(ニッケル基単結晶合金)、遮熱コーティング(TBC:Thermal Barrier Coating)が挙げられます。
ガスタービンの特性として、大気温度の影響を大きく受けることがあります。吸気温度が上昇すると空気密度が低下し、圧縮機の吸込み質量流量が減少するため、出力が低下します。一般に、吸気温度が1℃上昇すると出力は約0.5~1%低下します。このため、吸気冷却システムの導入や、高温環境下での出力補償技術が開発されています。
復水器は、タービンを出た排気蒸気を冷却して凝縮させ、水に戻す装置です。復水器内部を高い真空度に維持することで、タービンの排気圧力を低下させ、タービンで利用できるエンタルピー降下を増大させて発電効率の向上に寄与します。復水器の真空度は通常、絶対圧力で4~7kPa(約722~733mmHg真空)に維持されます。
復水器は冷却方式により、表面復水器と混合復水器に分類されます。発電所では冷却水と蒸気を分離する必要があるため、表面復水器が使用されます。表面復水器は多数の細管(冷却管)を束ねた構造で、管内に冷却水(海水)を流し、管外で蒸気を凝縮させます。冷却管の材料には、耐食性に優れたチタン管やキュプロニッケル管が使用されます。
図6-1 表面復水器の構造概念図
冷却水系統は、復水器に大量の冷却水を供給するシステムです。海岸立地の発電所では海水を冷却水として使用する開放循環方式が一般的で、循環水ポンプにより海水を復水器に送ります。内陸立地の発電所では冷却塔方式が採用され、復水器を通過して温度上昇した冷却水を冷却塔で冷却して再利用する閉鎖循環方式となります。冷却水量は発電出力1kWあたり約50~70L/hが必要で、100万kW級の発電所では毎秒50~70m³もの冷却水が循環します。
ここで、Q_cond:復水器の放熱量[kW]、G_s:蒸気流量[kg/s]、h_in, h_out:蒸気入口・出口エンタルピー[kJ/kg]、G_w:冷却水流量[kg/s]、c_w:水の比熱[kJ/(kg·K)]、ΔT_w:冷却水温度上昇[K]
解答:
蒸気流量:400t/h = 111.1kg/s給水系統は、復水器で凝縮された水をボイラまで送る一連の設備です。復水ポンプ、低圧給水加熱器、脱気器、給水ポンプ、高圧給水加熱器を経て、ボイラの節炭器に給水されます。給水温度は復水器出口の約33℃からボイラ入口の約280~300℃まで段階的に上昇させ、再生サイクルの効率向上を実現します。
給水加熱器は、タービンの中間段から抽気した蒸気の熱で給水を段階的に加熱する装置です。低圧給水加熱器(一般に3~4段)と高圧給水加熱器(一般に2~3段)を合わせて6~8段の加熱段が設けられます。各段の抽気圧力と温度は、再生サイクルの効率が最大となるように最適化されています。
給水ポンプは、給水を高圧に加圧してボイラに供給する装置で、発電所の補機の中で最も大きな動力を消費します。超臨界圧ボイラでは給水圧力が30MPa以上にもなるため、多段遠心ポンプが使用されます。駆動方式にはタービン駆動(蒸気タービン駆動給水ポンプ)と電動機駆動があり、大型発電所ではタービン駆動が一般的です。
通風設備は、ボイラの燃焼に必要な空気を供給し、燃焼ガスを煙突から排出するための設備です。通風方式には自然通風と強制通風があり、大型発電所では強制通風方式が採用されます。強制通風方式はさらに押込通風、誘引通風、平衡通風に分類されます。
押込通風は、押込送風機(FDF:Forced Draft Fan)でボイラの燃焼用空気を加圧して供給する方式です。ボイラ内部が大気圧以上となるため、炉内からの燃焼ガスの漏出(ファーネスプレッシャ)に注意が必要です。誘引通風は、誘引送風機(IDF:Induced Draft Fan)で煙道の排ガスを吸引して排出する方式で、ボイラ内部が大気圧以下(負圧)となります。平衡通風は、押込送風機と誘引送風機の両方を使用し、ボイラ内部をわずかな負圧に維持する方式です。大型発電所ではこの平衡通風方式が最も一般的に採用されています。
煙突は、排ガスを大気中に拡散させるための構造物です。煙突の主な機能は、排ガスの大気拡散による地上濃度の低減と、通風力の補助です。高い煙突ほど排ガスの拡散効果が大きく、大型発電所では高さ150~250mの煙突が建設されています。煙突の構造には、鉄筋コンクリート造の外筒と耐食性ライナーを組み合わせた二重構造が一般的です。
石炭火力の燃料設備は、貯炭場、石炭搬送設備、微粉炭機(ミル)から構成されます。石炭は専用船で輸送され、貯炭場に貯蔵されます。貯炭量は通常30~60日分を確保します。石炭はベルトコンベアでバンカ(石炭貯蔵槽)に搬送され、微粉炭機で200メッシュ以下に粉砕された後、搬送空気とともにバーナに送られます。
LNG火力の燃料設備は、LNG受入設備、LNGタンク、気化器から構成されます。LNGは-162℃の液体状態で専用タンカーにより輸送され、LNG基地のタンクに貯蔵されます。発電時にはLNG気化器で天然ガスに戻し、パイプラインでボイラまたはガスタービンに供給します。気化時に放出される冷熱は、冷凍・冷蔵倉庫や液化窒素・液化酸素の製造などに有効利用されます。
灰処理設備は、石炭燃焼により発生する石炭灰(フライアッシュおよびクリンカアッシュ)を処理する設備です。フライアッシュは電気集じん器で排ガスから回収され、セメント原料やコンクリート混和材として有効利用されています。クリンカアッシュ(炉底灰)は炉底から回収され、路盤材や埋立材として利用されます。石炭灰の有効利用率は約70%程度で、残りは灰処分場に埋立処分されます。
火力発電所は燃料の燃焼に伴い、硫黄酸化物(SOx)、窒素酸化物(NOx)、ばいじん(粒子状物質)などの大気汚染物質を排出します。これらの物質は酸性雨、光化学スモッグ、呼吸器疾患などの原因となるため、大気汚染防止法や環境基準に基づき、厳格な排出規制が実施されています。我が国の火力発電所は世界最高水準の環境対策技術を導入しており、先進諸国の中でも極めて低い排出レベルを達成しています。
大気汚染防止対策は、燃焼前対策(燃料の低硫黄化、低窒素化)、燃焼中対策(低NOxバーナ、二段燃焼、排ガス再循環)、燃焼後対策(排煙脱硫、排煙脱硝、集じん)の3段階に分けられます。これらを組み合わせることで、総合的な排出低減を実現しています。
排煙脱硫装置(FGD:Flue Gas Desulfurization)は、排ガス中のSO₂を除去する装置です。最も普及している方式は湿式石灰石-石膏法で、石灰石スラリー(CaCO₃水溶液)を吸収塔内で排ガスと接触させ、SO₂を吸収・反応させて石膏(CaSO₄·2H₂O)として回収します。脱硫効率は95%以上を達成し、副生品の石膏はセメント原料や建材として有効利用されます。
石灰石がSO₂を吸収し、酸化されて石膏(二水石膏)として固定される。
排煙脱硝装置(SCR:Selective Catalytic Reduction)は、排ガス中のNOxを除去する装置です。最も広く採用されているのはアンモニア接触還元法(SCR法)で、触媒層において排ガス中のNOxにアンモニア(NH₃)を注入し、触媒の作用でN₂とH₂Oに分解します。触媒にはバナジウム-チタン系触媒が使用され、反応温度は300~400℃です。脱硝効率は80~90%を達成します。
アンモニアがNOxを選択的に還元し、無害な窒素と水に変換する。
集じん装置は、排ガス中のばいじん(粒子状物質)を除去する装置です。発電所では電気集じん器(ESP:Electrostatic Precipitator)が最も広く使用されています。電気集じん器は、放電極と集じん極の間に高電圧をかけてコロナ放電を発生させ、ばいじんを荷電して集じん極に付着させる原理です。集じん効率は99.5%以上を達成し、排出ばいじん濃度は数mg/Nm³以下に低減されます。
図7-1 排煙処理設備の配置順序(石炭火力発電所)
温排水対策は、復水器の冷却に使用した海水が7~8℃程度温度上昇して放出されることによる海域環境への影響を緩和するための対策です。温排水の取水・放水方式の最適化、取水口と放水口の適切な配置、拡散効果の確保などが行われます。温排水の拡散予測には数値シミュレーションが活用され、海域の生態系への影響を最小限に抑える設計が行われています。一部の発電所では、温排水の余熱を魚介類の養殖や農業用ハウスの暖房に利用する取り組みもなされています。
騒音対策としては、ボイラ、タービン、送風機、ポンプなどの主要な騒音源に対して、防音壁の設置、建屋の遮音設計、機器の低騒音化、消音器の設置などが行われています。特に、ガスタービンの吸排気系統は大きな騒音源となるため、大型の吸気消音器と排気消音器が設けられます。
火力発電における最大の環境課題はCO₂排出の削減です。2050年カーボンニュートラルの実現に向けて、多様な技術開発と政策対応が進められています。短期的には発電効率の向上によるCO₂排出原単位の低減、中期的には水素・アンモニア混焼技術の実用化、長期的にはCCS/CCUS(CO₂回収・貯留・利用)技術の大規模展開が計画されています。
CCS(Carbon Capture and Storage)は、発電所の排ガスからCO₂を分離・回収し、地中に貯留する技術です。回収方法には化学吸収法、物理吸収法、膜分離法などがあり、回収したCO₂は地下の帯水層や枯渇した油田・ガス田に圧入して貯留します。CCUS(Carbon Capture, Utilization and Storage)は、回収したCO₂を化学製品の原料やEOR(石油増進回収)などに利用する技術であり、CO₂を資源として活用する点が特徴です。
水素・アンモニア発電は、燃焼時にCO₂を排出しない(水素)、または大幅に削減できる(アンモニア混焼)次世代技術です。石炭火力へのアンモニア20%混焼は2020年代後半の実用化が見込まれ、将来的にはアンモニア専焼への移行が計画されています。水素ガスタービンの開発も進められており、水素30%混焼は既に実証段階にあります。
解答:
年間発電電力量:解答:
定格運転時の熱入力:解答:
(1) ボトミングサイクルの実効熱効率:解答:
(1) カルノー効率:解答:
\begin{align} \eta_B &= 1 - \frac{1}{r_p^{(\kappa-1)/\kappa}} = 1 - \frac{1}{20^{0.4/1.4}} \\[5pt] &= 1 - \frac{1}{20^{0.286}} = 1 - \frac{1}{2.354} \\[5pt] &= 1 - 0.425 = \textbf{57.5\%} \end{align}解答:
熱入力:解答:
(1) CO₂排出量:解答:
(1) × - CC効率はη_G + (1-η_G)×η_S > η_G であり、常に単独より高い解答:
(1) 衝動タービン解答:
正解:A、C、E解答:
(1) ○ - η_B = 1 - 1/r_p^((κ-1)/κ) で圧力比r_pのみの関数火力発電は化石燃料の化学エネルギーを熱エネルギーに変換し、蒸気タービンやガスタービンを駆動して電気エネルギーを得る発電方式です。我が国の総発電電力量の約70%を占める最大の電源であり、電力の安定供給と需給調整において不可欠な役割を担っています。熱力学の法則に基づくエネルギー変換過程は、カルノーサイクルを理論的上限とし、ランキンサイクル(汽力発電)やブレイトンサイクル(ガスタービン発電)、さらにこれらを組み合わせたコンバインドサイクルとして実用化されています。
火力発電の基本理論から始まり、各種発電方式の特徴、熱サイクルの原理と効率計算、ボイラ・タービンの構造と制御、発電所の構成設備、環境対策技術まで、本資料で学習した内容は火力発電技術の基礎から応用まで幅広くカバーしています。特に、熱効率の計算式η=W/Q_in、カルノー効率η_C=1-T₂/T₁、コンバインドサイクル効率η_CC=η_G+(1-η_G)×η_S、燃料消費量B=3600P/(H×η)、CO₂排出量の算定などは、火力発電の計画・設計・運用において日常的に活用される重要な技術知識です。これらの理論的基礎を確実に理解することで、実際の発電所の運転管理やエネルギー政策の立案にも対応できる技術力を身につけることができます。
2050年カーボンニュートラルの実現が求められる現代において、火力発電は大きな転換期を迎えています。超超臨界圧(USC)技術やコンバインドサイクルによる高効率化は着実に進展し、最新設備では熱効率63%以上を達成しています。さらに、水素・アンモニア混焼技術、石炭ガス化複合発電(IGCC)、CO₂回収・貯留(CCS/CCUS)など、脱炭素化に向けた革新的技術の開発が加速しています。また、排煙脱硫・脱硝・集じん技術は世界最高水準に達し、大気汚染物質の排出量は大幅に低減されています。
第三種電気主任技術者試験の学習を通じて習得した火力発電の知識は、発電所の運転・保守管理、電力系統の計画・運用、エネルギー事業の企画・管理、環境アセスメント業務など、幅広い実務分野で必ず活用されます。理論と実践の両面から火力発電技術を深く理解し、安定した電力供給の確保と持続可能なエネルギー社会の構築に貢献していただければと思います。火力発電は環境との調和という新たな課題に向き合いながらも、エネルギー供給の信頼性を支える基盤技術として、今後も重要な役割を果たし続けるでしょう。