変圧器は電磁誘導の原理に基づいて動作する静止型の電気機器です。1831年にマイケル・ファラデーによって発見された電磁誘導の法則が変圧器動作の根本原理となっています。変圧器は一次巻線(入力側)と二次巻線(出力側)を共通の鉄心に巻いた構造で、電気的には絶縁されているものの、磁気的に結合されています。
変圧器の動作メカニズムは以下の通りです。一次巻線に交流電圧を印加すると、ファラデーの電磁誘導の法則により、巻線を鎖交する磁束の時間変化に比例した起電力が誘導されます。この起電力は印加電圧とほぼ等しくなるように磁束が決定されます。共通の鉄心を通る磁束は二次巻線も鎖交するため、二次巻線にも誘導起電力が発生し、これが二次電圧として現れます。
変圧器の基本動作を定量的に理解するために、ファラデーの法則を適用します。巻数N回の巻線を鎖交する磁束をΦとすると、巻線に誘導される起電力eは以下の式で表されます。
ここで、e:誘導起電力 [V]、N:巻数、Φ:磁束 [Wb]、負号はレンツの法則を表す
正弦波交流において、磁束がΦ = Φₘsin(ωt)で表される場合、誘導起電力は以下のように計算されます。微分により、起電力の実効値はE = 4.44fNΦₘとなります。この式は変圧器設計の基礎となる重要な関係式です。
解答:
最大磁束:Φₘ = Bₘ × S = 1.5 × 0.01 = 0.015 Wb変圧器における電圧変換比は、一次と二次の巻数比によって決定されます。理想変圧器では、一次巻線の巻数をN₁、二次巻線の巻数をN₂とすると、電圧比はE₁/E₂ = N₁/N₂となります。この関係により、巻数を変えることで任意の電圧比を実現できます。
ここで、a:変圧比(巻数比)、添字1:一次側、添字2:二次側
変圧器は昇圧用と降圧用に分類されます。昇圧変圧器は二次巻数が一次巻数より多く(N₂ > N₁)、発電所から送電線への電圧昇圧に使用されます。降圧変圧器は二次巻数が一次巻数より少なく(N₂ < N₁)、配電系統での電圧降下や需要家への供給に使用されます。送電系統では電力損失を最小化するため高電圧で送電し、安全性を確保するため低電圧で配電する必要があり、変圧器がこの電圧変換を担っています。
理想変圧器は、実際の変圧器を理解するための基準となる理論的な概念です。理想変圧器では、巻線抵抗がゼロ、漏れ磁束がゼロ、鉄心の透磁率が無限大、鉄損がゼロという仮定を置きます。これらの仮定により、入力電力と出力電力が完全に等しくなり、効率は100%となります。
理想変圧器の重要な特性として、インピーダンスの変換機能があります。二次側に接続された負荷インピーダンスZ₂は、一次側から見ると変圧比の2乗倍されたインピーダンスa²Z₂として現れます。この性質により、変圧器は電圧変換だけでなく、インピーダンスマッチングの手段としても重要な役割を果たします。
ここで、Z₁:一次側換算インピーダンス、Z₂:二次側負荷インピーダンス、a:変圧比
実際の変圧器では、理想変圧器では無視された様々な不完全性が存在します。主な不完全性として、巻線抵抗による抵抗損失、漏れ磁束による漏れリアクタンス、鉄心の磁気特性による励磁電流と鉄損、渦電流損失などがあります。これらの要因により、実際の変圧器の効率は理想値より低下し、電圧変動や位相差が生じます。
励磁電流は、鉄心を磁化するために必要な電流で、実際の変圧器では無負荷時にも一次側に流れます。この電流は、磁化に必要な励磁成分と鉄損を補償する有効成分から構成されます。励磁電流は定格電流の2~10%程度で、変圧器の容量が大きいほど相対的に小さくなります。
解答:
変圧比:a = 2実際の変圧器と理想変圧器の違いを理解することは、変圧器の設計と運用において極めて重要です。電圧変動率、効率、短絡電流、並行運転特性など、実用上の重要な特性はすべて実際の変圧器の不完全性に起因しています。これらの特性を定量的に評価し制御することで、電力系統に適した変圧器の設計と運用が可能となります。
変圧器の構造は、その動作原理と性能を決定する重要な要素です。主要構成要素は鉄心、巻線、絶縁物、タンク、冷却装置、保護装置から成り立っています。これらの各部は、電気的性能、機械的強度、熱的特性、経済性を総合的に考慮して設計されています。
鉄心は変圧器の磁気回路を形成する中核部分です。高透磁率で低損失の電磁鋼板を積層して構成され、磁束を効率的に導くとともに、渦電流損失を最小限に抑制します。鉄心の形状には内鉄型と外鉄型があり、それぞれ異なる特徴を持ちます。内鉄型は巻線が鉄心を囲む構造で小容量機に適し、外鉄型は鉄心が巻線を囲む構造で大容量機に適しています。
巻線は電気エネルギーの入出力を担う導体部分です。材料として銅線またはアルミニウム線が使用され、絶縁紙や絶縁皮膜で被覆されています。巻線の配置には同心円巻と交互巻があり、電圧レベルと容量に応じて選択されます。高圧巻線は通常外側に、低圧巻線は内側に配置され、絶縁距離の確保と冷却効果の向上を図っています。
巻線の構造は電圧クラスにより大きく異なります。低圧巻線(6.6kV以下)では円形導体を用い、中圧巻線(6.6~35kV)では絶縁強化型の円形または角形導体、高圧巻線(66kV以上)では油浸紙絶縁による特殊な絶縁構造が採用されます。また、大電流容量では複数の平行導体を用いて電流密度を適正化し、電気損失と発熱を制限します。
絶縁システムは変圧器の信頼性を決定する重要な要素です。油入変圧器では絶縁油と絶縁紙の複合絶縁システム、乾式変圧器ではエポキシ樹脂や気体絶縁が用いられます。絶縁油は優れた絶縁性能と冷却性能を併せ持ち、電気的ストレスの緩和と熱除去の両方を担います。絶縁設計では、常時電圧、雷インパルス、開閉インパルスに対する絶縁耐力を確保する必要があります。
冷却システムは変圧器内部で発生する損失熱を効率的に除去し、巻線や絶縁物の温度を許容値以下に維持します。冷却方式は自然空冷(AN)、強制空冷(AF)、自然油循環風冷(ONAN)、強制油循環風冷(OFAN)、強制油循環水冷(OFWF)など多様で、容量と設置環境に応じて選択されます。
解答:
一次電圧の実効値:E₁ = 6600 V変圧器の保護装置には、過電流保護、地絡保護、差動保護、ガス保護、温度保護などがあります。これらの保護装置により、内部故障や異常運転状態を早期に検出し、変圧器および電力系統への影響を最小限に抑制します。特に大容量変圧器では、ブッフホルツリレーによるガス検出や圧力リレーによる内部圧力監視が重要な保護手段となっています。
変圧器用鉄心材料の選択は、変圧器の性能、効率、経済性を左右する重要な要素です。理想的な鉄心材料は、高透磁率、低保磁力、低鉄損、適度な飽和磁束密度を持つ必要があります。現代の変圧器では、主に方向性電磁鋼板が使用され、優れた磁気特性により高効率化を実現しています。
方向性電磁鋼板は、圧延方向に磁化容易軸を持つよう結晶組織を制御した特殊鋼板です。圧延方向の透磁率が非常に高く、鉄損も少ないため、変圧器の主たる鉄心材料として広く使用されています。厚さは通常0.23~0.35mm程度で、表面には絶縁皮膜が施され渦電流損失を抑制しています。
ここで、P_h:ヒステリシス損、P_e:渦電流損、f:周波数、B_m:最大磁束密度、t:板厚
鉄心の積層構造は渦電流損失の抑制において極めて重要です。磁束の時間変化により鉄心内部に誘導される渦電流は、板厚の2乗に比例して増加するため、薄い鋼板を絶縁して積層することで大幅に低減できます。積層時には、鋼板間の絶縁を確実にし、締付圧力を適正に管理して磁気特性の劣化を防ぎます。
鉄心の磁気回路設計では、磁束密度の分布を均一化し、局部的な磁気飽和を避ける必要があります。継鉄部とヨーク部の断面積比、T字接合部の磁束分岐、角部の磁束集中などを考慮した最適設計により、鉄損の最小化と励磁電流の低減を図ります。また、積層方向の圧縮応力が磁気特性に与える影響も重要な設計要素です。
近年の環境対応技術として、アモルファス鉄心材料の適用が注目されています。アモルファス合金は結晶構造を持たない非晶質金属で、従来の電磁鋼板より約70%低い鉄損を実現できます。ただし、機械的脆弱性や高コストが課題であり、配電用変圧器など特定用途での採用に留まっています。
解答:
ヒステリシス損失:鉄心の磁化特性は温度の影響を強く受けます。温度上昇により飽和磁束密度が低下し、透磁率も変化するため、運転温度での特性を考慮した設計が必要です。また、機械的応力や経年変化も磁気特性に影響を与えるため、長期的な性能維持を考慮した材料選定と構造設計が重要となります。
変圧器の基本特性を把握するため、無負荷特性と短絡特性という2つの基本試験が行われます。これらの特性試験から、変圧器の等価回路定数、効率、電圧変動率などの重要なパラメータを求めることができます。無負荷特性は変圧器の磁気的性質を、短絡特性は電気的性質をそれぞれ表しており、変圧器設計と運用の基礎データとなります。
無負荷特性は、二次側を開放した状態で一次側に定格周波数の可変電圧を印加し、一次電圧・一次電流・鉄損の関係を測定する試験です。この試験により、変圧器の励磁特性と鉄心の磁化曲線が得られます。無負荷時の一次電流は励磁電流と呼ばれ、鉄心の磁化に必要な無効成分と鉄損を補償する有効成分から構成されます。
無負荷特性曲線において、低電圧領域では電圧に対して電流はほぼ直線的に増加しますが、鉄心の磁気飽和により高電圧領域では電流の増加率が急激に大きくなります。この特性により、変圧器の運転点を適切に設定し、過励磁による異常電流を防止する必要があります。定格電圧での励磁電流と鉄損が、変圧器の基本性能指標となります。
ここで、I₀:励磁電流、I₀ᵣ:鉄損電流、I₀ₓ:励磁リアクタンス電流、P₀:鉄損
短絡特性は、二次側を短絡した状態で一次側に可変電圧を印加し、定格電流が流れるまでの電圧・電流・損失の関係を測定する試験です。短絡時には端子電圧が零となるため、印加電圧はすべて巻線の漏れインピーダンスによる電圧降下となります。この試験により、変圧器の短絡インピーダンスと銅損が求められます。
短絡特性試験では、印加電圧が定格電圧の5~15%程度の低電圧で定格電流を流すことができます。このため鉄心の磁束密度は非常に低く、励磁電流と鉄損は無視できる程度となります。測定された電力損失はほぼ全て銅損(巻線抵抗による損失)であり、これが変圧器の可変損失成分となります。
ここで、Zₛ:短絡インピーダンス、Rₛ:短絡抵抗、Xₛ:短絡リアクタンス、Vₛc:短絡電圧、Pₛc:短絡損失
解答:
励磁電流の成分:変圧器の等価回路は、実際の変圧器の電気的動作を理解し、各種計算を行うための重要なツールです。等価回路により、負荷時の電圧・電流関係、電力の流れ、効率などを定量的に解析することができます。変圧器の等価回路には、理想変圧器を中心とした厳密等価回路と、実用的な近似等価回路があります。
厳密等価回路では、理想変圧器の一次側に励磁回路を並列接続し、一次・二次それぞれに漏れインピーダンスを直列接続します。励磁回路は励磁抵抗R₀(鉄損を表現)と励磁リアクタンスX₀(磁化に必要な無効電力を表現)の並列回路で構成されます。この等価回路により、無負荷から全負荷まであらゆる運転状態を正確に表現できます。
実用計算では、簡略等価回路が広く使用されます。この等価回路では、一次・二次の漏れインピーダンスを一次側または二次側に統合し、励磁回路を無視または別途考慮します。簡略化により計算が容易になり、実用上十分な精度を保持できるため、設計計算や特性解析に適しています。
ここで、r₁,x₁:一次抵抗・リアクタンス、r₂',x₂':二次側の一次換算値、a:変圧比
ベクトル図は、変圧器内の電圧・電流の大きさと位相関係を図示的に表現する手法です。負荷の力率により異なるベクトル図となり、遅れ力率負荷では電流ベクトルが電圧ベクトルより遅れ、進み力率負荷では進みます。ベクトル図により、電圧変動率の計算や力率改善効果の解析が視覚的に理解できます。
遅れ力率負荷の場合、二次端子電圧V₂を基準ベクトルとし、負荷電流I₂を遅れ位相で描きます。一次換算した二次電流I₂'による電圧降下r₁I₂'とjx₁I₂'を順次加算することで、一次印加電圧E₁が求まります。この作図により、負荷変動に対する電圧変化を定量的に把握できます。
解答:
短絡インピーダンス(%表示):Zₛ% = 4%、Rₛ% = 1%電圧変動率(電圧調整率)は、変圧器の電圧特性を表す最も重要な指標の一つです。無負荷時の二次端子電圧と負荷時の二次端子電圧の差を、負荷時電圧に対する百分率で表したものです。電圧変動率は負荷の大きさと力率によって決まり、配電系統の電圧管理において重要な設計パラメータとなります。
ここで、E₂₀:無負荷時の二次電圧、V₂:負荷時の二次電圧
電圧変動率の厳密な計算には、ベクトル図による解法と等価回路による解法があります。等価回路による解法では、一次印加電圧を一定として、負荷インピーダンスと変圧器の漏れインピーダンスによる分圧により二次電圧を求めます。実用計算では、電圧変動率が小さい場合の近似式がしばしば使用されます。
%表示では:ε ≈ Rₛ%cosφ + Xₛ%sinφ
負荷の力率により電圧変動率は大きく変化します。遅れ力率負荷では電圧変動率は正(電圧低下)となり、進み力率負荷では負(電圧上昇)となる場合があります。力率1の抵抗負荷では、抵抗成分による電圧降下のみが生じます。配電用変圧器では通常3~5%程度の電圧変動率となるよう設計されています。
解答:
短絡インピーダンス成分:電圧変動率の改善方法として、漏れインピーダンスの低減、タップ切換器による電圧調整、力率改善などがあります。漏れインピーダンスの低減には設計的制約があるため、実際にはタップ切換器による調整が一般的です。また、進相コンデンサによる力率改善は、無効電力の削減とともに電圧変動の抑制効果も得られます。
変圧器の負荷特性は、負荷の変化に対する出力電圧、効率、温度上昇などの変化を表す特性です。理想的には負荷によらず一定電圧を保持することが望ましいですが、実際の変圧器では漏れインピーダンスにより負荷依存性を示します。負荷特性の理解は、配電系統の電圧管理や変圧器の適正運用において不可欠です。
電圧特性は負荷電流と二次電圧の関係を表し、負荷の力率により大きく異なります。遅れ力率負荷では負荷増加とともに電圧が低下し、進み力率負荷では電圧が上昇する傾向を示します。この特性により、変圧器単体では電圧の自動調整機能はなく、外部調整装置が必要となります。
タップ切換による電圧調整は、変圧器で最も一般的な電圧調整方法です。一次巻線または二次巻線の一部にタップを設け、巻数比を変更することで出力電圧を調整します。無負荷タップ切換器は停電時のみ操作可能ですが、負荷時タップ切換器(LTC)は運転中でも電圧調整が可能で、配電用変圧器に広く採用されています。
LTCの動作原理は、切換動作中に負荷電流を遮断することなく、タップ間を移行する機構です。切換過程では限流リアクトルにより循環電流を制限し、アーク消弧装置により接点間のアークを消弧します。一般的なLTCでは±10%程度の電圧調整範囲を持ち、1.25~2.5%刻みでの調整が可能です。
ここで、n:タップ位置(段数)、Δn:1段あたりの電圧変化率[%]
自動電圧調整装置(AVR)は、負荷変動や系統電圧変動に対して自動的にタップを切換え、二次電圧を設定値に維持する装置です。電圧検出、制御判定、タップ駆動の各機能により構成され、現代の配電用変圧器には標準的に装備されています。AVRにより、±1~2%程度の電圧精度で自動電圧制御が実現されています。
解答:
一次電圧低下時の二次電圧:変圧器の並行運転時には、各変圧器の負荷分担が問題となります。同一仕様の変圧器では負荷は容量比で分担されますが、異なる%インピーダンスを持つ変圧器では、%インピーダンスに反比例して負荷分担されます。適正な負荷分担のため、並行運転する変圧器の%インピーダンスを一致させることが重要です。
変圧器の損失は、その効率と経済性を決定する重要な要素です。変圧器内で発生する損失は、主に鉄損(鉄心損失)と銅損(巻線損失)に分類されます。これらの損失特性を理解することは、変圧器の設計、運用、保守において極めて重要です。各損失は異なる発生メカニズムと負荷依存性を持ち、総合的な効率特性を決定しています。
鉄損(Iron Loss)は、鉄心内の磁束変化により発生する損失で、ヒステリシス損失と渦電流損失から構成されます。ヒステリシス損失は磁性体の磁化過程での履歴現象により生じ、渦電流損失は鉄心内に誘導される循環電流によるジュール損失です。鉄損は印加電圧(磁束密度)にのみ依存し、負荷電流には無関係な一定損失として扱われます。
ここで、P_h:ヒステリシス損、P_e:渦電流損、f:周波数、B_m:最大磁束密度、t:鋼板厚さ
鉄損の大きさは、使用する電磁鋼板の品質、鉄心の設計、運転磁束密度により決定されます。現代の変圧器では方向性電磁鋼板の採用により大幅な鉄損低減が実現されています。定格電圧での鉄損は変圧器容量の0.2~1.0%程度で、大容量機ほど相対的に小さくなります。電圧変動や過電圧運転時には、磁束密度の上昇により鉄損が急激に増加するため注意が必要です。
銅損(Copper Loss)は、一次・二次巻線の電気抵抗による損失で、負荷電流の2乗に比例する可変損失です。銅損には直流抵抗による基本損失と、表皮効果・近接効果による追加損失が含まれます。大容量変圧器では渦電流損失の影響も考慮する必要があり、導体の形状や配置により損失が大きく変化します。
ここで、R₁,R₂:一次・二次巻線抵抗、a:変圧比、Rₛ:短絡抵抗
解答:
75%負荷時の損失:温度の影響は銅損において特に顕著です。銅の抵抗は温度とともに増加し、20℃を基準として1℃上昇につき約0.4%増加します。このため、温度上昇による銅損の増加を考慮した設計と運用が重要です。また、高調波電流の流入は実効電流を増加させ、銅損の増大を引き起こすため、電力品質の観点からも注意が必要です。
変圧器の効率は出力電力と入力電力の比として定義され、負荷率によって変化する特性を示します。効率特性を正しく理解することは、経済運転と省エネルギー運転の実現に不可欠です。変圧器の効率は一定損失(鉄損)と可変損失(銅損)の相対関係により決定され、特定の負荷点で最高値を示します。
ここで、P_out:出力電力、P_in:入力電力、P_loss:総損失
負荷率をx(0≤x≤1)とすると、可変損失は負荷率の2乗に比例するため、総損失はP_loss = P_fe + x²P_cu,nとなります。この関係により、効率曲線は負荷率に対して特徴的な形状を示し、軽負荷時は一定損失の影響で効率が低下し、重負荷時は可変損失の増大により効率が低下します。
最高効率点は、一定損失と可変損失が等しくなる負荷率で発生します。この条件は数学的に、効率を負荷率で微分した値がゼロとなる点として求められます。最高効率点での負荷率x₀は、√(P_fe/P_cu,n)で計算され、通常は定格負荷の70~90%付近に現れます。
ここで、x₀:最高効率点の負荷率、S_n:定格容量、cosφ:負荷力率
解答:
最高効率点の負荷率:変圧器の設計段階では、想定される負荷パターンに応じて最高効率点を調整します。ベース負荷用変圧器では高負荷率での効率を重視し、負荷変動の大きい用途では中程度の負荷率で最高効率となるよう設計します。また、部分負荷での効率も重要な設計指標となります。
実際の変圧器運用では、負荷が時間的に変動するため、瞬時効率だけでなく一定期間の平均効率である全日効率が重要な評価指標となります。全日効率は、24時間の総出力電力量を総入力電力量で除した値で定義され、実際の省エネルギー効果を評価する際に使用されます。
ここで、W_out:一日の出力電力量、W_in:一日の入力電力量
全日効率の計算では、負荷パターンを時間帯別に分析し、各時間帯での損失を積算します。軽負荷時間が長い負荷パターンでは、一定損失(鉄損)の影響が大きくなり、全日効率は定格効率より低下する傾向があります。特に夜間軽負荷の配電用変圧器では、この影響が顕著に現れます。
配電用変圧器の典型的な負荷パターンでは、昼間の負荷ピーク時と夜間の軽負荷時で大きな差があります。住宅用では夕方にピークを持つパターン、業務用では日中にピークを持つパターンが一般的です。工業用では24時間ほぼ一定の負荷を持つ場合もあり、負荷パターンに応じた変圧器選定が効率向上の鍵となります。
解答:
各時間帯での損失と出力:省エネルギー変圧器の開発では、全日効率の向上が重要な目標となっています。アモルファス鉄心変圧器は従来品より約70%の鉄損低減が可能で、軽負荷時間の長い用途で特に有効です。ただし、初期コストが高いため、全ライフサイクルでの経済性評価が必要となります。
変圧器の損失低減は、省エネルギーとコスト削減の観点から重要な技術課題です。損失低減対策は、設計段階での材料選定と構造最適化、製造段階での品質向上、運用段階での適正管理に分類されます。これらの総合的な取り組みにより、変圧器の高効率化と長寿命化を実現しています。
鉄損低減対策として、高品質電磁鋼板の採用が最も効果的です。方向性電磁鋼板の結晶配向度向上、鋼板厚さの薄肉化、表面絶縁皮膜の改良により大幅な鉄損低減が実現されています。また、鉄心設計においては、磁束密度の最適化、継鉄構造の改良、積層技術の向上により、実効的な鉄損低減を図っています。
銅損低減対策では、導体断面積の増大が基本となりますが、コストと寸法の制約があるため最適化が必要です。大容量変圧器では、表皮効果と近接効果による損失増加を抑制するため、細線化した導体の並列使用、転位導体の採用、渦電流損失対策などの技術が適用されています。
高調波対策も現代の変圧器で重要となっています。電力変換装置の普及により高調波電流が増加し、変圧器の実効損失が増大する問題が生じています。K係数の概念による高調波対応設計、フィルタ回路の設置、負荷の高調波抑制などの対策により、高調波による損失増加を抑制しています。
ここで、I_n:n次高調波電流、R_n:n次における抵抗、K:K係数
運用段階での損失低減には、適正な負荷管理が重要です。負荷集約による軽負荷変圧器の停止、負荷バランスの改善、力率改善による電流低減などにより、システム全体での損失低減を図ります。また、定期的な保守点検により、絶縁油の劣化防止、冷却システムの維持、接続部の点検などを行い、損失増加要因を予防します。
解答:
各変圧器での年間損失:近年では、スマートグリッド技術との連携により、リアルタイム損失監視と最適運用制御が可能となっています。負荷予測に基づく変圧器の最適運転、損失最小化を目的とした系統構成制御、需要側管理による負荷平準化などにより、システム全体での損失最小化を実現する技術開発が進んでいます。
変圧器の並行運転とは、複数の変圧器を電気的に並列接続して共通の負荷に電力を供給する運転方式です。並行運転により、電力供給の信頼性向上、負荷増加への対応、保守時の停電回避、経済的な容量調整が可能となります。しかし、適切な並行運転を行うためには厳格な条件を満たす必要があり、条件が不適切な場合は循環電流や不平衡な負荷分担による問題が発生します。
並行運転を安全かつ効率的に行うための基本条件は以下の通りです。これらの条件は、循環電流の発生を防止し、適正な負荷分担を実現するために不可欠です。特に電圧比と極性の一致は必須条件であり、これらが満たされない場合は投入時に大電流が流れ、変圧器や系統に重大な損傷を与える可能性があります。
電圧比と極性の確認は、並行運転前の最重要チェック項目です。電圧比が異なる変圧器を並列接続すると、電圧差に比例した循環電流が常時流れ、不要な損失と発熱が発生します。極性が逆の場合は、変圧比の2倍の電圧が短絡電圧として現れ、極めて大きな循環電流が流れます。これらの確認は、実際の投入前に電圧測定により行われます。
ここで、I_c:循環電流、E₁,E₂:各変圧器の二次電圧、Z₁,Z₂:各変圧器のインピーダンス
並行投入の手順は、安全性を確保するため段階的に行われます。まず各変圧器を単独運転状態とし、二次側の電圧・周波数・極性を測定確認します。次に一方の変圧器を基準とし、他方の変圧器の二次電圧を基準機と一致させます。最後に並列接続用遮断器を投入し、負荷を段階的に移行します。この過程で異常な電流や電圧が観測された場合は、直ちに分離し原因を調査します。
解答:
各変圧器の二次側基準電流:I_n = 100000/200 = 500 A並行運転時の負荷分担は、各変圧器の短絡インピーダンス(%インピーダンス)に反比例して決定されます。理想的には各変圧器の%インピーダンスが等しく、負荷が容量比に比例して分担されることが望ましいですが、実際には製造公差や経年変化により完全な一致は困難です。%インピーダンスの不一致は負荷分担の不均等を招き、一部の変圧器に過負荷が集中する原因となります。
負荷分担の計算では、各変圧器を等価回路で表現し、共通の負荷に対する電流配分を求めます。%インピーダンスが小さい変圧器ほど多くの負荷を分担し、%インピーダンスが大きい変圧器の分担は少なくなります。この関係により、並行運転する変圭器の%インピーダンスをできるだけ近い値に選定することが重要です。
ここで、I₁,I₂:各変圧器の負荷電流、I_L:総負荷電流、S₁,S₂:各変圧器の容量
循環電流は、並行運転時に変圧器間に流れる電流で、負荷とは無関係に発生します。循環電流の主な発生原因は、変圧比の相違、%インピーダンスの不一致、極性の相違です。循環電流は変圧器の有効容量を減少させ、損失を増加させるため、可能な限り小さく抑える必要があります。
実際の系統運用では、負荷の変動に応じて変圧器台数を調整する負荷時切換が行われます。軽負荷時には一部の変圧器を停止し、重負荷時には予備機を投入することで、常に効率的な運転を維持します。このような運用により、電力損失の最小化と設備の長寿命化を図っています。
解答:
各変圧器のインピーダンス(共通基準):タップ切換器は変圧器の出力電圧を調整する装置で、巻線の一部にタップ(分岐点)を設け、巻数比を変更することで電圧調整を行います。配電系統では負荷変動や系統電圧変動により末端電圧が変化するため、適正電圧を維持するためタップ切換器が重要な役割を果たします。タップ切換器は運転中の切換可否により、無負荷タップ切換器と負荷時タップ切換器に大別されます。
無負荷タップ切換器は、変圧器を無電圧状態にして手動または電動で切換操作を行う装置です。構造が簡単で安価ですが、切換のたびに停電が必要となるため、頻繁な調整には適しません。主に季節調整や年間調整など、長期間の電圧レベル調整に使用されます。調整範囲は通常±5~10%程度で、2.5%または5%刻みのタップが設けられます。
負荷時タップ切換器は、負荷電流を流したまま切換操作を行える高度な装置です。切換過程では、現在のタップと次のタップの間に限流リアクトルを挿入し、循環電流を制限しながら段階的に切換を行います。アーク消弧には真空、SF₆ガス、絶縁油などが用いられ、確実な電流遮断を実現しています。
LTCの動作シーケンスは精密に制御されます。切換指令を受けると、まず限流リアクトルを通じて次タップへの並列接続を行い、その後現タップを開放します。この過程で発生するアークを消弧装置により迅速に消弧し、正常な切換を完了します。全体の切換時間は通常数秒から数十秒で、系統への影響を最小限に抑えています。
ここで、n:タップ位置、ΔV%:1段あたりの電圧変化率、±は昇圧・降圧方向
現代のLTCには、自動電圧調整装置(AVR:Automatic Voltage Regulator)が組み合わされています。AVRは二次電圧を常時監視し、設定電圧からの偏差に応じて自動的にタップ切換を行います。不感帯設定により頻繁な動作を防止し、時限設定により過敏な応答を抑制する機能も備えています。
解答:
電圧不足量:200 - 190 = 10 V実際の配電系統では、負荷の成長や設備の段階的増強により、異なる容量の変圧器を並行運転する場合が頻繁に発生します。異容量変圧器の並行運転では、容量比と%インピーダンスの組み合わせにより負荷分担が決定され、適切な組み合わせでなければ一方の変圧器に過負荷が集中し、他方の変圧器が十分活用されない問題が生じます。
容量比制限として、一般的に大小変圧器の容量比は3:1以下とすることが推奨されます。この制限は、負荷急変時の過渡現象や故障時の電流分担を考慮したものです。極端な容量差がある場合、小容量変圧器の短絡容量不足により保護協調が困難になったり、負荷変動に対する応答性に差が生じたりする問題があります。
異容量変圧器の負荷分担計算では、各変圧器の定格容量と%インピーダンスから、負荷電流の配分を求めます。%インピーダンスが等しい場合は容量比で負荷分担されますが、%インピーダンスが異なる場合はより複雑な計算が必要となります。実用的には、各変圧器が定格容量内で運転されるよう、総負荷を制限する必要があります。
ここで、k₁,k₂:各変圧器の負荷分担率、S_eff:等価容量
運用上の注意点として、異容量変圧器の並行運転では定期的な負荷監視が重要です。小容量変圧器が先に定格に達するため、この時点での負荷制限や大容量変圧器への負荷移行が必要となります。また、一方の変圧器が故障停止した場合の残存容量と負荷継続可否についても、事前の検討が必要です。
最近の配電系統では、需要の多様化と再生可能エネルギーの普及により、従来以上に柔軟な変圧器運用が求められています。スマートグリッド技術を活用した最適負荷配分制御、リアルタイム監視による予防保全、需要予測に基づく事前調整など、高度な系統運用技術の導入が進んでいます。
解答:
共通基準(1500kVA)での%インピーダンス:単巻変圧器(オートトランスフォーマ)は、一次・二次巻線が電気的に接続された変圧器で、通常の複巻変圧器とは異なる構造と特性を持ちます。単巻変圧器では一つの巻線の一部を共通巻線として使用し、残りの部分を直列巻線として追加することで電圧変換を行います。この構造により、材料の節約と高効率化を実現できる一方で、一次・二次間の電気的絶縁がないという特徴があります。
単巻変圧器の基本構造では、全巻線数をN、共通巻線数をN_c、直列巻線数をN_sとします。一次側は全巻線(N = N_c + N_s)を使用し、二次側は共通巻線のみ(N_c)または共通巻線と直列巻線(N_c + N_s)を使用します。電圧変換比は巻線の使用方法により決定され、昇圧・降圧の両方が可能です。
ここで、P_trans:変成容量、P_cond:直結容量、S_total:全容量、a:変圧比
単巻変圧器の最大の特徴は、全電力が電磁誘導により変成されるのではなく、一部が電気的直結により伝送される点です。変圧比が1に近いほど直結容量の割合が大きくなり、変成容量は小さくなります。この特性により、同一容量の複巻変圧器と比較して、巻線量の削減、損失の低減、効率の向上が実現されます。
材料使用量の観点では、単巻変圧器は複巻変圧器より有利です。共通巻線により導体量を削減でき、変圧比が小さいほどその効果は顕著になります。鉄心容量も変成容量に応じて決まるため、複巻変圧器より小型化が可能です。ただし、一次・二次間の絶縁が困難なため、適用可能な電圧レベルと用途に制限があります。
解答:
変圧比:a = 6600/6000 = 1.1単巻変圧器の応用分野として、送電系統の電圧調整、中性点接地、電動機始動などがあります。送電系統では275kV/154kVのような比較的変圧比の小さい用途で採用され、材料費の削減と効率向上を実現しています。ただし、三次巻線を設けて高調波対策や補機電源確保を行う場合が多く見られます。
安全性の観点では、単巻変圧器は一次・二次間の電気的絶縁がないため、感電や機器損傷のリスクがあります。このため、低圧側の接地や保護装置の設置が重要となります。また、中性点の扱いにも注意が必要で、系統の接地方式との整合性を考慮した設計が求められます。
計器用変圧器は、高電圧・大電流回路の測定と保護を目的とした特殊変圧器です。主回路の電圧・電流を計器や保護継電器で扱いやすい低い値に変換し、かつ主回路との間に絶縁を確保する重要な役割を果たします。計器用変圧器には、電圧を変換する計器用変圧器(VT:Voltage Transformer)と電流を変換する計器用変流器(CT:Current Transformer)があります。
計器用変圧器(VT)は、高電圧を標準的な低電圧(通常110Vまたは100V)に変換する降圧変圧器です。構造は通常の変圧器と同様ですが、高精度と安全性が要求されるため、特別な設計が施されています。一次側を主回路の電圧線間または対地間に接続し、二次側に計器や保護継電器を接続します。
計器用変流器(CT)は、一次巻線を大電流が流れる主導体、二次巻線を多巻線とした特殊構造の変流器です。一次電流に比例した二次電流を出力し、電流の測定と保護に使用されます。貫通型CTでは、主導体がCT鉄心を貫通する構造となり、設置が容易です。CTの二次側は常に負荷を接続した状態で使用し、開放厳禁という重要な注意事項があります。
ここで、K_V:電圧変成比、K_I:変流比、ε:比誤差[%]
精度階級は計器用変成器の重要な仕様で、定格条件での誤差範囲により分類されます。測定用では0.1級、0.2級、0.5級、1.0級、保護用では5P、10Pなどの階級があります。測定用は高精度が要求され、保護用は飽和特性や限界性能係数が重要となります。用途に応じた適切な精度階級の選定が必要です。
電圧変成器の結線方式には、単相2線式、三相3線式、三相4線式があります。対地電圧測定では単相式、線間電圧測定では三相式が用いられます。特に接地故障検出用としてY0結線の電圧変成器が使用され、零相電圧の検出により地絡を判定します。
解答:
変流比:K_I = 600/5 = 120保護用計器用変成器では、短絡事故時の大電流に対しても正確な変成が要求されます。CTの飽和による誤差増大を防ぐため、十分な鉄心断面積と適切な二次負荷の選定が重要です。限界性能係数(ALF)は、定格精度を保てる最大一次電流の倍数を表し、保護継電器の動作に直結する重要な特性値です。
三相変圧器は三相交流系統で使用される変圧器で、三台の単相変圧器を組み合わせたバンク方式と、一体型の三相変圧器があります。三相変圧器では巻線の結線方式により電圧・電流関係、中性点の扱い、高調波特性などが大きく変化するため、系統の要求に応じた適切な結線方式の選択が重要です。
主要な結線方式として、Y結線(星形結線)、Δ結線(三角結線)、Z結線(ジグザグ結線)があります。Y結線は中性点を持ち対地電圧が低くなる特徴があり、Δ結線は中性点がなく線間電圧がそのまま巻線電圧となります。各結線方式は電圧関係、電流関係、絶縁レベル、保護方式などに影響を与えます。
ここで、V_L:線間電圧、V_P:相電圧、I_L:線電流、I_P:相電流
Y-Δ結線は送電用変圧器で最も多用される結線方式です。一次側Y結線により中性点接地が可能で、地絡時の対地電圧上昇を抑制できます。二次側Δ結線は零相電流をブロックし、三次高調波電流を循環電流として処理します。この結線では30°の位相差が生じるため、並行運転時の極性確認が重要です。
Δ-Y結線は配電用変圧器で一般的な結線方式です。一次側Δ結線により高調波電流を処理し、二次側Y結線により中性点を確保して単相負荷への供給を可能にします。6600V/210-105Vの配電用変圧器では、この結線が標準的に採用されています。
Y-Y結線は構造が簡単で経済的ですが、中性点の不安定や三次高調波の問題があるため、一般的には三次巻線(Δ結線)を追加して使用されます。Y0-Y0結線では零相電流が流れるため、地絡保護の面で有利ですが、励磁突入電流や高調波対策が必要です。
解答:
二次側線間電圧:V_L = 400 VScott結線は、三相を二相に変換する特殊な結線方式です。90°位相差の二相電力を得ることができ、誘導電動機の試験や特殊用途で使用されます。主変圧器と補助変圧器の組み合わせにより、三相平衡負荷時に二相側でも平衡した電力配分を実現します。
高調波対策として、Δ結線の採用や三次巻線の設置が効果的です。Δ結線では三次高調波電流が循環電流として流れ、系統への漏れを防ぎます。また、フィルタ回路の設置や位相ずらし変圧器の使用により、更なる高調波抑制が可能です。電力変換装置の普及に伴い、これらの対策の重要性が増しています。
変圧器の信頼性と寿命は、適切な冷却と保護に大きく依存します。変圧器内部で発生する損失熱を効率的に除去し、異常状態を早期に検出して適切な処置を行うことで、長期にわたる安定運転が可能となります。冷却方式は変圧器の容量と設置環境により選定され、保護装置は故障の種類と影響度に応じて設計されます。
冷却方式の分類は、冷却媒体と循環方法により決定されます。乾式変圧器では空気冷却が基本で、自然空冷(AN)と強制空冷(AF)があります。油入変圧器では絶縁油を冷却媒体とし、自然油循環(ON)、強制油循環(OF)、油強制循環・水冷(OFW)、油強制循環・風冷(OFA)などの方式があります。
大容量変圧器では強制冷却が必要となり、冷却装置の設計が重要な要素となります。ラジエータ、冷却ファン、油ポンプなどの冷却機器の適切な配置と制御により、運転温度を許容値以下に維持します。冷却装置の故障は変圧器の緊急停止や容量制限につながるため、冗長設計や予防保全が重要です。
ここで、θ_h:巻線温度、θ_a:周囲温度、Δθ:温度上昇、τ:熱時定数
保護装置は、変圧器の異常を検出し適切な動作を行う装置群です。主要な保護項目として、過電流保護、地絡保護、差動保護、ガス保護、温度保護、圧力保護があります。これらの保護装置により、内部故障、外部故障、異常運転状態を判別し、必要に応じて警報出力や変圧器の切り離しを行います。
ブッフホルツリレーは油入変圧器の代表的なガス保護装置で、内部故障時に発生するガスや油流を検出します。軽故障時は警報を出力し、重故障時は変圧器を系統から切り離します。ガスの成分分析により故障の性質を判定でき、予防保全に重要な情報を提供します。
監視システムでは、各種センサによるリアルタイム監視が行われます。温度、圧力、ガス濃度、振動、音響などのデータを常時収集し、異常の兆候を早期に検出します。近年では、AI技術を活用した予知保全システムの導入により、故障の予測と最適な保全計画の立案が可能となっています。
解答:
75%負荷時の損失(銅損は負荷率の2乗に比例):環境対応技術として、生分解性絶縁油の使用や低騒音設計が進んでいます。従来の鉱物油に代わる植物系絶縁油は、環境負荷が小さく火災安全性も向上しています。また、都市部での設置では騒音規制への対応が重要で、防音構造や低騒音冷却ファンの採用により騒音レベルの低減が図られています。
デジタル化の進展により、変圧器の状態監視と制御システムは高度化しています。IoTセンサによるビッグデータ収集、クラウドベースの解析システム、リモート監視制御などにより、変圧器の運用効率と信頼性が大幅に向上しています。これらの技術により、予防保全から予知保全への転換が実現されつつあります。
解答:
変圧比:解答:
最大磁束:解答:
定格一次電流:解答:
R% = 1%、X% = √(5² - 1²) = 4.9%解答:
最高効率点の負荷率:解答:
各負荷での出力・損失計算:解答:
共通基準容量を2500kVAとして各%インピーダンスを換算:解答:
現在のタップ位置での二次電圧(系統電圧6600V時):解答:
変圧比:a = 22/20 = 1.1解答:
一次側(Δ結線):解答:
(1) %インピーダンス解答:
(1) ○ - 複巻変圧器では一次・二次は電磁誘導により結合し電気的には絶縁解答:
(1) 励磁電流:無負荷時に鉄心の磁化に必要な電流、定格の2~10%変圧器は電力システムにおいて電圧レベルを変換する最重要な電気機器です。発電所から送電線への昇圧、配電系統での降圧、そして家庭や工場への最終供給まで、効率的な電力輸送と安全な電力利用を支える中核装置として、電力系統のあらゆる場所で重要な役割を果たしています。電磁誘導の原理に基づく静止型機器でありながら、95~99%を超える高効率を実現し、現代の電力インフラを支えています。
変圧器の電磁誘導原理から始まり、構造・特性・等価回路・損失と効率・並行運転・特殊用途まで、本資料で学習した内容は電気技術者として必須の知識です。特に、ファラデーの法則による動作原理、理想変圧器と実際の変圧器の相違、等価回路による特性解析、電圧変動率と効率の計算、並行運転の投入条件と負荷分担、タップ切換による電圧調整などは、実務において日常的に活用される重要な技術です。
電力系統の高度化と環境対応が進む現代において、再生可能エネルギーの大量導入に伴う電圧変動対策、スマートグリッドでの双方向電力制御、省エネルギー変圧器による損失削減など、変圧器の技術的重要性はますます高まっています。アモルファス鉄心材料、デジタル監視制御技術、IoT・AI技術を活用した予知保全システムなど、変圧器技術も急速に進歩しています。
電験三種の学習を通じて習得した変圧器の知識は、発電所の運用・保守、配電系統の設計・管理、工場の受変電設備運用、電力品質管理など、幅広い実務分野で必ず活用されます。理論と実践の両面から変圧器を深く理解し、安全で効率的な電力システムの構築と持続可能なエネルギー社会の実現に貢献していただければと思います。