同期機は、固定子(ステータ)の回転磁界と回転子(ロータ)の磁極が同期して回転する電気機械です。その名前の由来は、回転子が電源の周波数と正確に同期した速度で回転することにあります。同期機の動作原理を理解するためには、まず電磁誘導と電磁力の基本法則を復習する必要があります。
同期機の基本原理は、ファラデーの電磁誘導法則とフレミングの法則に基づいています。1831年にマイケル・ファラデーが発見した電磁誘導の法則は、磁束の変化によって起電力が誘導される現象を説明します。同期発電機では、回転子の磁極が固定子巻線に対して相対的に移動することで、巻線を貫く磁束が時間的に変化し、交流起電力が発生します。
同期速度は、電源周波数と磁極数によって一意に決定されます。日本の商用電力系統では、50Hz地域と60Hz地域があり、それぞれで同期速度が異なります。この同期速度の式は同期機を理解する上で最も重要な基本式の一つです。
ここで、\(N_s\):同期速度 [min⁻¹]、\(f\):電源周波数 [Hz]、\(p\):極数
解答:
\begin{align} N_s &= \frac{120f}{p} \\[10pt] &= \frac{120 \times 60}{4} \\[10pt] &= \frac{7200}{4} \\[10pt] &= 1800 \text{ [min}^{-1}\text{]} \end{align}同期機の動作は、発電機モードと電動機モードで原理が異なります。発電機モードでは、外部から機械エネルギー(タービンなど)を加えて回転子を同期速度で回転させ、固定子巻線に交流起電力を誘導します。この時、フレミングの右手の法則(発電機の法則)に従って起電力の方向が決まります。
一方、電動機モードでは、固定子に三相交流電圧を加えて回転磁界を作り、回転子がこの回転磁界に同期して回転することで機械的出力を取り出します。この時、フレミングの左手の法則(電動機の法則)に従って電磁力の方向が決まります。重要なのは、同期電動機は誘導電動機と異なり、回転子と固定子の回転磁界に速度差(すべり)がないことです。
同期機の構造は、固定子(ステータ)と回転子(ロータ)の2つの主要部分から構成されています。各部の構造と機能を理解することは、同期機の動作原理を深く理解する上で不可欠です。
固定子(ステータ)は、同期機の外側に位置する静止部分です。固定子鉄心は、電磁鋼板を積層して作られており、内周面には均等に配置されたスロットがあります。このスロットには三相の電機子巻線(固定子巻線)が収められています。固定子鉄心の材料には、渦電流損失とヒステリシス損失を最小限に抑えるため、高透磁率で低損失の電磁鋼板が使用されます。
回転子(ロータ)は、同期機の内側で回転する部分です。回転子には界磁巻線が配置されており、これに直流電流を流すことで磁極を形成します。回転子の構造は、発電機の容量や用途によって大きく分けて2つの型式があります。
同期機の各部名称と機能は以下の通りです:
1. 固定子鉄心:磁気回路の主要部分を形成し、磁束の通路となります。珪素鋼板を0.35mm程度の厚さに圧延し、絶縁処理を施して積層することで、渦電流損失を大幅に削減しています。
2. 固定子巻線(電機子巻線):三相交流の発生または供給を行う巻線です。通常は銅線が使用され、絶縁材料で被覆されています。巻線は分布巻きまたは集中巻きの方式で配置されます。
3. 回転子鉄心:界磁磁束の通路となる部分で、固定子鉄心と同様に電磁鋼板の積層構造となっています。回転による遠心力に耐える設計が必要です。
4. 界磁巻線:直流励磁電流によって磁極を形成する巻線です。銅線またはアルミニウム線が使用され、絶縁処理が施されています。
5. スリップリング:回転子の界磁巻線に外部から直流電力を供給するための接触子です。カーボンブラシと組み合わせて使用されます。
同期機の性能は、巻線方式と磁極構造によって大きく左右されます。効率的な電力変換と良好な波形特性を実現するため、様々な工夫が施されています。
固定子巻線の巻線方式は、主に分布巻きと集中巻きに分類されます。分布巻きは、各相の巻線を複数のスロットに分散して配置する方式で、起電力の波形を正弦波に近づけることができます。一方、集中巻きは、各相の巻線を特定のスロットに集中させる方式で、構造が簡単で製作が容易ですが、高調波成分が多くなる傾向があります。
ここで、\(q\):1極1相あたりのスロット数、\(\alpha\):スロットピッチ角 [rad]
短節巻きは、巻線のピッチを磁極ピッチより小さくする方式です。これにより、高調波成分を効果的に抑制し、起電力の波形改善と巻線材料の節約を同時に実現できます。短節率は通常5/6から4/5程度に設定されます。
ここで、\(\gamma\):短節角 [rad]、\(p\):極対数
磁極構造については、回転子の構造により突極型と円筒型に大別されます。突極型は磁極が回転子表面に突出した構造で、水車発電機など比較的低速の同期機に適用されます。円筒型は磁極が回転子内部に埋め込まれた構造で、タービン発電機など高速回転の同期機に適用されます。
突極型同期機では、直軸(d軸)と横軸(q軸)のリアクタンスが異なるため、\(X_d \neq X_q\)となります。この特性は、同期機の安定性や制御特性に大きな影響を与えます。
同期機の界磁巻線に直流電流を供給する励磁方式は、同期機の運転特性と制御性能を決定する重要な要素です。励磁方式は電源の種類と制御方法によっていくつかの型式に分類されます。
他励方式は、外部の独立した直流電源から界磁電流を供給する方式です。励磁電源として専用の直流発電機(励磁機)や整流装置が使用されます。他励方式の利点は、界磁電流を広い範囲で制御でき、同期機の端子電圧や力率を自由に調整できることです。
自励方式は、同期機自身が発生する電力の一部を整流して界磁電流として利用する方式です。構造が簡単で経済的ですが、起動時に残留磁気が必要で、制御範囲が限定されるという制約があります。
現代の大容量同期機では、静止型励磁装置(Static Excitation System)が広く採用されています。これは、同期機の端子または補助変圧器から得た交流電力を、制御整流装置(サイリスタなど)で直流に変換して界磁に供給する方式です。応答速度が速く、保守が容易であることから、電力系統の安定化に重要な役割を果たしています。
ブラシレス励磁方式は、スリップリングとカーボンブラシを使用せず、回転型の交流励磁機と回転整流器を組み合わせた励磁方式です。保守性に優れ、火花の発生がないため、可燃性ガス環境での使用も可能です。主に中容量の同期機で採用されています。
最新の励磁制御では、AVR(Automatic Voltage Regulator)とPSS(Power System Stabilizer)を組み合わせたデジタル制御システムが主流となっています。これにより、電圧制御だけでなく、電力系統の動揺抑制や過渡安定度向上も可能となっています。
解答:
界磁損失 = 50MW × 0.01 = 0.5MW = 500kW励磁制御の高度化により、同期機は単なる発電・電動機としての機能だけでなく、電力系統の電圧調整や無効電力制御など、系統安定化装置としての役割も担うようになっています。この技術的進歩は、再生可能エネルギーの大量導入が進む現代の電力システムにおいて、ますます重要性を増しています。
同期発電機は、回転子の界磁による磁界と固定子の回転する電機子反作用磁界との相互作用により電力を発生します。発電機として動作する際、原動機により回転子を同期速度で駆動すると、回転子の界磁磁束が固定子巻線を横切って移動し、ファラデーの電磁誘導法則により固定子巻線に交流起電力が誘導されます。この起電力が同期発電機の基本的な発電原理です。
同期発電機の起電力は、界磁磁束、回転速度、巻線構造によって決まります。界磁電流を調整することで起電力の大きさを制御でき、これが同期発電機の重要な特徴の一つです。起電力の周波数は回転速度と極数によって決まり、\(f = \frac{pN}{120}\)の関係があります。商用電力では周波数が一定に保たれるため、同期発電機は常に一定の同期速度で運転される必要があります。
同期発電機の基本的な電圧方程式は、誘導起電力と負荷電流による電圧降下の関係で表されます。発電機の端子電圧は、無負荷時の起電力から同期インピーダンスによる電圧降下を差し引いた値となります。この同期インピーダンスは、巻線の抵抗成分と同期リアクタンス成分から構成されます。
ここで、\(V\):端子電圧 [V]、\(E\):無負荷起電力 [V]、\(I\):負荷電流 [A]、\(R\):電機子抵抗 [Ω]、\(X_s\):同期リアクタンス [Ω]
電機子反作用は、同期発電機の特性を理解する上で極めて重要な概念です。負荷電流が流れると、固定子巻線にも磁界が発生し、この磁界が回転子の界磁と相互作用します。電機子反作用磁界の向きと大きさは負荷の性質(抵抗性、誘導性、容量性)により変化し、発電機の端子電圧や安定性に大きな影響を与えます。
同期発電機の出力は、機械的入力と電気的出力の関係で決まります。原動機から供給される機械的出力から各種損失を差し引いた値が電気的出力となります。主要な損失には、電機子銅損、界磁銅損、鉄損、機械損があります。これらの損失は運転条件により変化し、効率特性に影響を与えます。
解答:
力率0.8遅れなので、電流の位相角:\(\phi = \cos^{-1}(0.8) = 36.87°\)
\begin{align} I &= 100\angle-36.87° \text{ [A]} \\[5pt] Z_s &= 2 + j20 = 20.1\angle84.29° \text{ [Ω]} \\[5pt] IZ_s &= 100 \times 20.1\angle(-36.87° + 84.29°) \\[5pt] &= 2010\angle47.42° \text{ [V]} \\[5pt] V &= E - IZ_s \\[5pt] &= 6600 - 2010\angle47.42° \\[5pt] &≈ 6600 - (1357 + j1476) \\[5pt] &= 5243 - j1476 \\[5pt] &= 5446\angle-15.7° \text{ [V]} \end{align}したがって、端子電圧は約5446Vである。
同期発電機の特性を把握するために、無負荷特性と短絡特性という二つの基本特性試験が行われます。これらの特性から同期インピーダンスや電圧調整率などの重要なパラメータを求めることができます。無負荷特性は発電機の磁気回路の特性を、短絡特性は漏れリアクタンスの特性をそれぞれ表します。
無負荷特性(励磁特性)は、発電機を定格速度で無負荷運転し、界磁電流を変化させたときの端子電圧の変化を示す特性です。界磁電流の小さい領域では端子電圧は界磁電流に比例して増加しますが、鉄心の磁気飽和により次第に増加率が低下し、最終的には飽和領域に入ります。この特性は発電機の磁気回路の飽和特性を表しています。
短絡特性は、発電機の端子を三相短絡した状態で界磁電流を変化させ、短絡電流の変化を測定した特性です。短絡時には端子電圧がゼロとなるため、発生した起電力はすべて同期インピーダンスによる電圧降下となります。短絡特性は通常、界磁電流に対してほぼ直線的に変化します。これは、短絡電流が比較的小さく、磁気飽和の影響が少ないためです。
無負荷特性と短絡特性から同期インピーダンスを求めることができます。これをポティエ法(Potier method)と呼びます。同一の界磁電流に対する無負荷電圧と短絡電流の比が同期インピーダンスの大きさを与えます。ただし、この方法で求めた値は不飽和同期インピーダンスと呼ばれ、実際の運転時の値とは若干異なる場合があります。
ここで、\(E_0\):同一界磁電流での無負荷電圧 [V]、\(I_{sc}\):同一界磁電流での短絡電流 [A]
短絡比(SCR:Short Circuit Ratio)は、同期機の重要な設計パラメータの一つです。短絡比は、定格端子電圧を発生するのに必要な界磁電流と、定格短絡電流を流すのに必要な界磁電流の比として定義されます。短絡比が大きい発電機ほど電圧調整率が良く、系統安定度も高くなりますが、界磁容量が大きくなり経済性は劣化します。
同期発電機の負荷特性は、負荷の大きさや力率によって端子電圧がどのように変化するかを示す特性です。実際の系統運用では、負荷は時々刻々と変化するため、負荷特性の把握は極めて重要です。負荷特性は、負荷の性質(抵抗性、誘導性、容量性)により大きく異なる傾向を示します。
電圧調整率(電圧変動率)は、同期発電機の電圧特性を表す最も重要な指標の一つです。無負荷時の端子電圧と全負荷時の端子電圧の差を、全負荷時の端子電圧で除した百分率で表されます。電圧調整率が小さいほど、負荷変動に対して端子電圧が安定した良好な発電機といえます。
ここで、\(E_0\):無負荷端子電圧 [V]、\(V\):全負荷時端子電圧 [V]
負荷の力率によって電圧調整率は大きく変化します。誘導性負荷(力率遅れ)では電機子反作用が減磁作用となり、電圧調整率は正の値(電圧低下)となります。抵抗性負荷(力率1.0)では適度な電圧低下を示します。容量性負荷(力率進み)では電機子反作用が増磁作用となり、電圧調整率は負の値(電圧上昇)となる場合があります。
解答:
\begin{align} \epsilon &= \frac{E_0 - V}{V} \times 100 \\[10pt] &= \frac{6600 - 6000}{6000} \times 100 \\[10pt] &= \frac{600}{6000} \times 100 \\[10pt] &= 10 \text{ [\%]} \end{align}電圧調整率の理論計算には、同期発電機の等価回路を用いたベクトル図法が使用されます。発電機の内部起電力ベクトル、端子電圧ベクトル、負荷電流ベクトル、同期インピーダンスによる電圧降下ベクトルの関係から、負荷条件に対応した電圧調整率を算出できます。
負荷特性の改善方法として、自動電圧調整装置(AVR)の使用があります。AVRは端子電圧を検出し、設定値からの偏差に応じて界磁電流を自動制御することで、負荷変動に対して端子電圧を一定に保ちます。現代の大型発電機では、デジタルAVRにより高精度な電圧制御が実現されています。
負荷の種類 | 力率 | 電機子反作用 | 電圧調整率 |
---|---|---|---|
誘導性負荷 | 遅れ | 減磁作用 | 正(大きい) |
抵抗性負荷 | 1.0 | 横磁化作用 | 正(中程度) |
容量性負荷 | 進み | 増磁作用 | 負または小正 |
同期発電機の等価回路は、発電機の電気的特性を回路素子で表現したものです。最も基本的な等価回路は、内部起電力源と同期インピーダンス(電機子抵抗と同期リアクタンスの直列回路)から構成されます。この等価回路により、様々な負荷条件での発電機の動作を解析できます。
同期リアクタンスは、発電機の漏れリアクタンスと電機子反作用リアクタンスの合成値です。漏れリアクタンスは巻線の漏れ磁束により生じるリアクタンスで、構造により決まる固有値です。電機子反作用リアクタンスは、負荷電流による電機子反作用磁界の影響を表すリアクタンスで、磁気飽和により若干変化します。
凸極機では、磁極の突起により直軸と横軸でリアクタンスが異なります。直軸同期リアクタンス\(X_d\)は磁極中心軸方向のリアクタンス、横軸同期リアクタンス\(X_q\)は磁極間軸方向のリアクタンスです。一般に\(X_d > X_q\)の関係があり、この差によりリラクタンストルクが発生します。
円筒型発電機では、回転子の円筒形状により直軸と横軸のリアクタンスはほぼ等しくなります(\(X_d ≈ X_q\))。このため、リラクタンストルクは発生せず、界磁による同期トルクのみで運転されます。高速回転に適した構造であり、タービン発電機に多用されます。
第1項:同期トルクによる出力、第2項:リラクタンストルクによる出力、\(\delta\):負荷角
同期発電機の安定性は負荷角\(\delta\)と密接な関係があります。負荷角は、回転子の磁極軸と固定子の合成磁界軸との間の角度です。負荷が増加すると負荷角が増大し、理論上90°で最大出力となりますが、実際には安定限界はこれより小さい角度になります。
解答:
同期トルクによる出力:
\begin{align} P_1 &= \frac{EV}{X_d}\sin\delta \\[10pt] &= \frac{6000 \times 6000}{20} \times \sin 30° \\[10pt] &= 1,800,000 \times 0.5 \\[10pt] &= 900,000 \text{ [W]} \end{align}リラクタンストルクによる出力:
\begin{align} P_2 &= \frac{V^2}{2}\left(\frac{1}{X_q} - \frac{1}{X_d}\right)\sin 2\delta \\[10pt] &= \frac{6000^2}{2}\left(\frac{1}{12} - \frac{1}{20}\right)\sin 60° \\[10pt] &= 18,000,000 \times \frac{8}{240} \times 0.866 \\[10pt] &= 18,000,000 \times 0.0333 \times 0.866 \\[10pt] &= 519,588 \text{ [W]} \end{align}過渡リアクタンスと初期過渡リアクタンスは、系統故障時や急激な負荷変動時の発電機の動特性を解析する際に重要なパラメータです。過渡リアクタンス\(X_d'\)は界磁回路の時定数に関係し、初期過渡リアクタンス\(X_d''\)はダンパ回路の時定数に関係します。これらの値は定常値よりも小さく、故障電流の計算に使用されます。
同期電動機は、固定子に三相交流電圧を印加して回転磁界を発生させ、回転子の界磁磁極がこの回転磁界と同期して回転することにより機械的出力を得る電動機です。同期電動機の最大の特徴は、負荷の変動に関係なく回転速度が一定(同期速度)に保たれることです。
同期電動機の動作原理は、固定子巻線に流れる三相交流電流によって作られる回転磁界と、回転子の界磁巻線に流れる直流電流によって作られる磁極との相互作用に基づいています。回転子の磁極は回転磁界に引き付けられ、同期速度で回転します。この時、回転子と回転磁界の間には位相差(負荷角δ)が生じ、この角度の大きさが発生トルクを決定します。
同期電動機のトルク発生メカニズムは、磁気的な引力によるものです。回転子の界磁磁極(N極、S極)が固定子の回転磁界に追従しようとする力がトルクとして現れます。負荷が増加すると負荷角δが大きくなり、それに応じて発生トルクも増加します。
ここで、\(V\):端子電圧 [V]、\(E_0\):無負荷誘導起電力 [V]、\(X_s\):同期リアクタンス [Ω]、\(\omega_s\):同期角速度 [rad/s]、\(\delta\):負荷角 [rad]
誘導電動機と比較した同期電動機の特徴は以下の通りです。同期電動機は回転子と固定子回転磁界の間にすべりがなく、常に同期速度で回転します。これにより、正確な速度制御が可能で、時計や録音機器などの精密機械の駆動に適しています。また、界磁励磁電流を調整することで力率を制御でき、進相運転も可能です。
同期電動機は誘導電動機と異なり、停止状態から直接同期速度で回転を開始することはできません。これは、回転子の慣性により、高速で変化する回転磁界に追従できないためです。そのため、同期電動機の始動には特別な方式が必要となります。
誘導電動機始動方式は、最も一般的な始動方法です。回転子に誘導電動機と同様のかご型導体(制動巻線またはダンパ巻線)を設け、始動時は界磁電流を遮断して誘導電動機として運転します。回転速度が同期速度に近づいた時点で界磁に直流電流を投入し、同期運転に移行します。
始動過程は以下の段階に分かれます。第1段階では、界磁回路を抵抗で短絡し、固定子に電圧を印加してダンパ巻線による誘導トルクで加速します。第2段階では、回転速度が同期速度の95%程度に達した時点で界磁電流を投入します。第3段階では、回転子磁極が回転磁界に同期し、安定した同期運転状態に移行します。
解答:
同期速度:\(N_s = \frac{120 \times 60}{4} = 1800\) [min⁻¹]外部電動機始動方式は、別の電動機(誘導電動機など)で同期電動機を同期速度まで加速し、その後同期投入する方式です。大容量の同期電動機や始動トルクが大きい用途で採用されます。
周波数制御始動方式は、インバータを用いて固定子電圧の周波数を低周波から徐々に上昇させ、回転子を同期させながら定格周波数まで加速する方式です。現代的な制御方式として注目されています。
同期投入の成功には、適切なタイミングと条件が重要です。投入タイミングが早すぎると回転子が回転磁界に追従できず、遅すぎると過度の突入電流や機械的衝撃が発生します。同期投入時には、回転速度、回転方向、位相の一致が必要です。
ここで、\(N\):実際の回転速度 [min⁻¹]、\(N_s\):同期速度 [min⁻¹]
同期電動機の最大の特徴の一つは、界磁励磁電流を調整することによって力率を自由に制御できることです。この特性は、電力系統の力率改善や電圧調整に活用され、同期電動機が単なる駆動源以上の価値を持つ理由となっています。
同期電動機の力率は界磁励磁電流の大きさによって決まります。界磁電流が小さい場合(弱励磁)は遅れ力率、界磁電流が適正な場合は力率1(単位力率)、界磁電流が大きい場合(過励磁)は進み力率となります。これは、界磁磁束の強さが固定子電流の大きさと位相に影響を与えるためです。
V曲線特性は、界磁電流\(I_f\)を変化させたときの固定子電流\(I_a\)の変化を表すグラフです。負荷が一定の場合、界磁電流の変化に対して固定子電流はV字状に変化し、最小値を持ちます。この最小点が力率1(cos φ = 1)に対応し、この時の界磁電流を正励磁電流と呼びます。
ここで、\(I_w\):有効電流成分、\(I_r\):無効電流成分、\(P\):電動機出力、\(\phi\):力率角
力率制御の原理は以下の通りです。弱励磁状態では、回転子の磁束が不足するため、固定子は磁化電流を供給する必要があり、遅れ無効電流が流れます。過励磁状態では、回転子の磁束が過剰となり、固定子から進み無効電流が流れて磁束を打ち消そうとします。
解答:
遅れ力率0.8運転時の無効電力:実際の運用では、V曲線特性を参照して最適な界磁電流を設定します。工場全体の力率改善を目的とする場合は、同期電動機を進み力率で運転し、他の誘導負荷の遅れ無効電力を補償します。ただし、過度の過励磁は電流増加による損失増大や機械的応力増加を招くため、適切な範囲内での制御が重要です。
同期調相機(Synchronous Condenser)は、機械的負荷を持たない同期電動機として動作し、専ら電力系統の無効電力制御と電圧調整を目的とした設備です。回転機でありながら電力の有効成分をほとんど消費せず、無効電力の発生または吸収のみを行う特殊な同期機です。
同期調相機の動作原理は同期電動機と基本的に同じですが、軸出力を取り出さないため、消費する有効電力は自身の損失分のみです。界磁励磁電流を調整することで、進み無効電力(容量性リアクタンス)または遅れ無効電力(誘導性リアクタンス)を系統に供給します。
同期調相機の特徴は、静止型コンデンサと比較して多くの利点があることです。出力を連続的に調整でき、進み・遅れ両方向の無効電力制御が可能です。また、短絡事故時には短絡電流を供給する能力があり、保護継電器の動作に寄与します。過負荷能力も大きく、一時的な大きな無効電力需要にも対応できます。
電力系統における同期調相機の役割は多岐にわたります。主な用途として、送電線の充電電流補償、負荷の力率改善、系統電圧の調整、短絡容量の確保などがあります。特に長距離送電線では、線路の容量成分による電圧上昇を抑制するため、調相機による遅れ無効電力の吸収が重要です。
ここで、\(Q\):無効電力 [var]、\(V\):系統電圧 [V]、\(E_0\):同期調相機の誘導起電力 [V]、\(X_s\):同期リアクタンス [Ω]
同期調相機の運転制御では、AVR(自動電圧調整装置)により系統電圧に応じて界磁電流を自動調整します。系統電圧が低下した場合は過励磁運転で進み無効電力を供給し、電圧上昇時は弱励磁運転で遅れ無効電力を吸収します。この制御により、系統電圧を設定値近傍に維持します。
現代の電力系統では、再生可能エネルギーの大量導入により系統の慣性が不足し、電圧変動が増加する傾向にあります。このような状況において、同期調相機の慣性効果と高速な電圧制御能力は、系統安定化において重要な役割を果たしています。静止型の電力制御装置と組み合わせて使用されることも多く、電力系統の品質向上に貢献しています。
解答:
送電線の充電容量:\(Q_c = 100 \times 0.10 = 10\) [Mvar]同期発電機の並行運転とは、複数の同期発電機を電気的に接続して共通の負荷に電力を供給する運転方式です。電力系統では、需要に応じた電力供給、供給信頼性の向上、経済運転の実現を目的として、多数の発電機が並行運転されています。並行運転を安全かつ効率的に行うためには、厳格な条件を満たす必要があります。
同期発電機を系統に並行投入する際の基本条件は、「同期投入の5条件」として知られています。これらの条件がすべて満足されない場合、投入時に大きな突入電流や機械的衝撃が発生し、設備の損傷や系統の不安定化を招く可能性があります。
電圧の大きさの一致は、界磁励磁電流を調整することで実現されます。通常、系統電圧に対して±1%以内の精度で合わせる必要があります。電圧差がある状態で投入すると、電圧差に比例した循環電流が流れ、不要な損失や発熱の原因となります。
ここで、\(I_c\):循環電流 [A]、\(V_1, V_2\):各発電機の端子電圧 [V]、\(X_{s1}, X_{s2}\):各発電機の同期リアクタンス [Ω]
周波数の一致は、原動機の回転速度制御により達成されます。周波数差は通常±0.1Hz以内とし、これを超える場合は投入を見合わせます。周波数差がある状態での投入は、うなり現象や機械的振動を引き起こします。
位相の一致は最も重要な条件の一つです。位相差がある状態で投入すると、位相差角に応じた大きな突入電流が流れ、発電機や系統に甚大な影響を与えます。位相差は±10°以内、理想的には±5°以内で投入を行います。
解答:
位相差による電圧差:同期投入の実際の作業は、手動同期投入と自動同期投入の2つの方法があります。現代の電力系統では、安全性と確実性を考慮して自動同期投入が主流となっていますが、手動同期投入の原理を理解することは重要です。
手動同期投入では、同期検定器(シンクロスコープ)を使用して投入条件を確認します。シンクロスコープは、系統電圧と発電機電圧の位相関係を視覚的に表示する計器で、両電圧の位相差に応じて指針が回転します。位相が一致した瞬間(指針が12時の位置)に投入スイッチを操作します。
手動同期投入の手順は以下の通りです。まず発電機を無負荷で定格回転速度近くまで起動し、界磁電流を調整して端子電圧を系統電圧に合わせます。次に周波数を微調整して系統周波数に近づけ、シンクロスコープで位相関係を監視します。シンクロスコープの指針がゆっくりと回転している状態で、指針が12時の位置を通過する瞬間に投入します。
自動同期投入装置は、電圧、周波数、位相の各条件を自動的に監視し、すべての条件が満足された時点で自動的に投入を実行します。この装置により、人為的ミスを防止し、より精密な同期投入が可能となります。
ここで、\(\Delta V\):電圧差、\(\Delta f\):周波数差、\(\Delta \theta\):位相差、\(df/dt\):周波数変化率
現代の自動同期投入装置では、デジタル制御技術により高精度な同期投入が実現されています。GPS時刻同期を利用した位相制御や、予測制御による最適投入タイミングの算出など、先進的な技術が導入されています。
並行運転中の同期発電機群の負荷分担は、各発電機の調速機特性(ガバナ特性)によって決定されます。複数の発電機が並行運転している状態では、系統周波数が共通であるため、各発電機の出力は調速機の速度調定率に反比例して配分されます。
速度調定率(Speed Regulation)は、負荷変化に対する回転速度の変化率を表すパラメータです。調速機の速度調定率が小さいほど、負荷変化に対して多くの出力変化を分担します。一般的に、効率の良い発電機ほど小さい速度調定率に設定し、多くの負荷を分担させる経済運転が行われます。
ここで、\(s\):速度調定率 [%]、\(n_0\):無負荷時回転速度、\(n_{FL}\):全負荷時回転速度
並行運転時の負荷分担は以下の原理で決まります。系統の総負荷が変化すると、まず系統周波数が変化します。各発電機の調速機は周波数変化を検出し、それぞれの速度調定率に応じて出力を調整します。最終的に、新しい平衡点で系統周波数が安定し、各発電機の負荷分担が決定されます。
解答:
各発電機の負荷分担は速度調定率に反比例:等時調速機(Isochronous Governor)は、速度調定率がゼロの調速機で、負荷変化があっても回転速度(系統周波数)を一定に保つ機能を持ちます。系統では通常1台の発電機を等時調速機で運転し、他の発電機は定速度調定率で運転します。等時調速機を持つ発電機は、負荷変動分をすべて分担し、系統周波数を維持します。
現代の電力系統では、負荷周波数制御(LFC:Load Frequency Control)により、複数の発電機を協調制御して系統周波数と地域間の電力潮流を適正値に維持しています。この制御では、各発電機の経済性、環境性、技術的制約を考慮した最適な負荷配分が自動的に行われます。
同期発電機が系統に安定に並行運転を継続するためには、外乱に対して同期を維持する能力(同期安定度)が必要です。系統安定度は、小擾乱に対する定態安定度と、大擾乱に対する過渡安定度に分けて評価されます。
定態安定度は、小さな負荷変動や電圧変動に対して同期発電機が安定な運転点を維持できる能力を表します。定態安定度の指標として、同期化力係数(Synchronizing Power Coefficient)が用いられます。この係数が正であれば安定、負であれば不安定となります。
ここで、\(K_s\):同期化力係数 [MW/rad]、\(P\):有効電力 [MW]、\(\delta\):負荷角 [rad]
同期化力は負荷角δの関数であり、δ=0°で最大となり、δ=90°でゼロとなります。通常の運転では負荷角を30°以下に保ち、十分な同期化力余裕を確保します。負荷角が90°を超えると同期化力が負となり、発電機は同期を失います。
過渡安定度は、系統短絡事故や大容量負荷の急変など大きな外乱に対して、発電機が第一波の動揺を乗り切って同期を維持できる能力を表します。過渡安定度の評価には、等面積法や数値解析が用いられます。
解答:
\begin{align} P_{\max} &= \frac{V_s V_r}{X} \\[5pt] &= \frac{1.0 \times 0.9}{0.4} \\[5pt] &= 2.25 \text{ p.u.} \end{align} 負荷角δ=90°で最大電力が得られる動態安定度は、系統の制御装置(AVR、PSS、調速機など)の動作を考慮した長期間の安定度を表します。現代の系統では、制御装置の相互作用により動態安定度問題が重要となっています。
同期安定度向上の対策としては、以下の方法があります。送電系統の強化(線路増設、中間変電所設置)、高速遮断器の採用、発電機制御装置の高性能化(高速AVR、PSS設置)、FACTS(Flexible AC Transmission Systems)の活用などが有効です。
近年の電力系統では、再生可能エネルギーの大量導入により慣性が低下し、従来型の同期発電機による系統安定化がより重要となっています。バーチャル慣性(Virtual Inertia)やグリッドフォーミング制御など、新しい技術と従来の同期機技術を組み合わせた系統安定化手法の開発が進められています。
ここで、\(H\):慣性定数 [s]、\(J\):慣性モーメント [kg⋅m²]、\(\omega_s\):同期角速度 [rad/s]、\(S_{\text{base}}\):基準容量 [VA]
同期機の効率を向上させ、適切な運用を行うためには、機内で発生する各種損失を詳細に理解することが不可欠です。同期機の損失は発生原因と特性により分類され、それぞれ異なる対策が必要となります。総損失を最小化することで、経済性と環境性を両立した運転が可能となります。
同期機の損失は、大きく電気的損失と機械的損失に分けられます。電気的損失には、固定子銅損、回転子銅損(界磁損)、鉄損があり、機械的損失には軸受損失、風損、ブラシ損失があります。これらの損失は負荷の大きさや運転条件によって変化し、効率特性を決定する重要な要素となります。
固定子銅損は、固定子巻線(電機子巻線)に流れる電流による抵抗損失です。三相電機子電流をI_a、電機子巻線抵抗をR_aとすると、固定子銅損は3I_a²R_aで表されます。この損失は負荷電流の2乗に比例するため、軽負荷時には小さく、重負荷時に急激に増加します。
ここで、\(P_{cu1}\):固定子銅損 [W]、\(I_a\):電機子電流(実効値)[A]、\(R_a\):電機子巻線抵抗 [Ω]
回転子銅損(界磁損)は、界磁巻線に流れる直流電流による損失です。界磁電流をI_f、界磁巻線抵抗をR_fとすると、界磁損はI_f²R_fとなります。この損失は界磁電流により決まるため、励磁条件を適切に設定することで制御可能です。
鉄損は、磁心材料中の磁束変化により発生する損失で、ヒステリシス損失と渦電流損失の合計です。ヒステリシス損失は磁化の履歴現象による損失で周波数に比例し、渦電流損失は磁心内に誘導される渦電流による損失で周波数の2乗に比例します。
ここで、\(P_h\):ヒステリシス損失、\(P_e\):渦電流損失、\(f\):周波数 [Hz]、\(B_m\):最大磁束密度 [T]
機械損失には、軸受摩擦による軸受損失、回転子の空気摩擦による風損、スリップリングとブラシの接触による ブラシ損失があります。これらの損失は主に回転速度に依存し、負荷にはほとんど依存しない一定損失として扱われます。
解答:
定格時の総損失:損失低減対策としては、材料の改良、設計の最適化、運転方法の改善があります。銅損低減には、導体断面積の増加や超電導材料の採用、鉄損低減には、高品質電磁鋼板の使用や磁束密度の最適化、機械損失低減には、高性能軸受の採用や空力設計の改善などが有効です。
同期機の効率は負荷率により変化し、特定の負荷点で最高値を示します。効率特性を正しく理解することは、経済的運転と設備選定において重要です。効率は出力電力と入力電力の比として定義され、損失特性により決まります。
効率の一般的な定義式は以下の通りです。発電機の場合は電気出力を機械入力で除した値、電動機の場合は機械出力を電気入力で除した値となります。効率を百分率で表す場合は、この値に100を乗じます。
ここで、\(\eta_G\):発電機効率、\(\eta_M\):電動機効率、\(P_{out}\):出力 [W]、\(P_{in}\):入力 [W]、\(P_{loss}\):損失 [W]
同期機の損失は、負荷に無関係な一定損失(鉄損、機械損失、界磁損)と、負荷の2乗に比例する可変損失(固定子銅損)に分けられます。負荷率をxとすると、可変損失はx²に比例して変化します。この特性により、効率曲線は特有の形状を示します。
ここで、\(x\):負荷率、\(P_{const}\):一定損失、\(P_{var}\):可変損失、\(P_{cu,rated}\):定格時固定子銅損
最高効率点は、一定損失と可変損失が等しくなる負荷率で発生します。この条件をx = x₀とすると、最高効率点での負荷率は以下の式で求められます。一般的に、最高効率点は定格負荷の75~85%付近に現れることが多いです。
ここで、\(x_0\):最高効率点の負荷率
解答:
最高効率点の負荷率:効率改善の観点から、設計段階では最高効率点を想定運転点に合わせることが重要です。また、運転段階では負荷配分を調整して各発電機を高効率点で運転させる経済負荷配分制御(ELD:Economic Load Dispatch)が行われます。
同期機の定格出力は、許容温度上昇により制限されます。機内で発生する損失は熱となり、巻線や鉄心の温度を上昇させます。適切な冷却システムにより熱を除去し、絶縁材料の許容温度以下に保つことが、安全で信頼性の高い運転の前提となります。
同期機の冷却方式は、冷却媒体と冷却方法により分類されます。小容量機では自然空冷、中容量機では強制空冷、大容量機では水素ガス冷却や水冷却が採用されます。冷却効果の向上により、同一サイズでより大きな出力を得ることが可能となります。
水素ガス冷却は、大容量同期機で広く採用されている冷却方式です。水素は空気に比べて熱伝導率が高く、密度が小さいため風損も少なく、さらに化学的に不活性で安全です。密閉筐体内で水素ガスを循環させ、外部の熱交換器で冷却します。
水素冷却システムの構成要素には、密閉筐体、水素供給装置、ガス純度監視装置、圧力制御装置、熱交換器などがあります。水素の純度は95%以上に保ち、空気の混入による爆発の危険を防止します。
ここで、\(\rho\):密度、\(k\):熱伝導率、添字air:空気、H₂:水素
水冷却方式は、最大容量の同期機で採用される最も効果的な冷却方式です。固定子巻線の導体内部に冷却水路を設け、直接水冷却を行います。水の比熱と熱伝導率の高さにより、非常に効果的な冷却が可能となります。
同期機の定格は、冷却能力と絶縁材料の耐熱クラスにより決定されます。絶縁材料の耐熱クラスには、Y種(90℃)、A種(105℃)、E種(120℃)、B種(130℃)、F種(155℃)、H種(180℃)があり、上位クラスほど高温での使用が可能です。
解答:
許容温度上昇:155 - 40 = 115℃同期機の安全で信頼性の高い運転を確保するため、各種保護装置が設置されます。これらの保護装置は、異常状態を早期に検出し、機器の損傷を防止するとともに、系統への影響を最小限に抑える役割を果たします。適切な保護システムの設計と運用は、電力供給の信頼性向上に不可欠です。
電気的保護装置には、過電流保護、地絡保護、差動保護、不平衡負荷保護などがあります。過電流保護は、定格電流を超える電流が流れた際に動作し、巻線の過熱を防止します。地絡保護は、巻線の絶縁破壊による地絡事故を検出し、感電事故や火災を防止します。
機械的保護装置には、軸受温度保護、振動保護、回転数保護などがあります。軸受温度保護は、軸受の異常発熱を監視し、軸受損傷を防止します。振動保護は、回転体の不平衡や軸受異常による振動を検出し、機械的損傷を防止します。
熱的保護装置には、巻線温度保護、鉄心温度保護、冷却システム異常保護があります。巻線温度は埋込み温度検出器により常時監視され、設定値を超えると警報または停止信号が発生します。冷却システムの異常(冷却水断水、冷却ガス圧力低下など)も重要な保護対象です。
運用上の注意点として、まず適切な負荷管理があります。同期機は定格範囲内での運転が基本ですが、短時間の過負荷運転も可能です。ただし、連続過負荷は巻線の劣化を促進するため避けるべきです。力率についても、過度の進み力率運転は界磁電流の増加を招き、効率低下の原因となります。
始動・停止操作では、規定の手順を厳格に守ることが重要です。特に同期投入時は、5つの同期条件を確実に確認してから実施します。急激な負荷変動や異常な振動が発生した場合は、直ちに原因を調査し、必要に応じて運転を停止します。
解答:
定格時:\(I^2 t = 1.0^2 \times \infty = \infty\)定期点検と予防保全は、同期機の長期安定運転に不可欠です。点検項目には、絶縁抵抗測定、軸受点検、振動測定、冷却システム点検、保護装置試験などがあります。特に絶縁劣化の早期発見は重要で、部分放電測定や絶縁抵抗の傾向管理により予防保全を行います。
運転データの監視と分析により、機器状態の把握と異常の早期発見が可能となります。現代の同期機では、デジタル監視システムにより、電気的・機械的・熱的パラメータを常時監視し、傾向分析や異常診断を行います。このようなCBM(Condition Based Maintenance)により、計画的で効率的な保全が実現されています。
ここで、PI:極化指数、\(R_{10min}\):10分後絶縁抵抗値、\(R_{1min}\):1分後絶縁抵抗値
健全な絶縁ではPI > 2.0
最新の同期機運用では、IoT(Internet of Things)技術やAI(人工知能)を活用した予測保全システムの導入が進んでいます。これらのシステムにより、故障の予兆を早期に検出し、計画的な保全作業により稼働率の向上と保全コストの削減を実現しています。また、デジタルツイン技術による仮想的な機器モデルを構築し、運転条件の最適化や故障診断の高度化も図られています。
解答:
\[N_s = \frac{120f}{p} = \frac{120 \times 50}{6} = 1000 \text{ [min}^{-1}\text{]}\]解答:
\begin{align} T &= \frac{3VE_0}{X_s\omega_s}\sin\delta \\[5pt] &= \frac{3 \times 3300 \times 3500}{15 \times 157.1} \times \sin30° \\[5pt] &= \frac{34,650,000}{2356.5} \times 0.5 \\[5pt] &= 7,358 \text{ [N·m]} \end{align}解答:
力率0.8(遅れ)時の電流:解答:
負荷分担は速度調定率に反比例:解答:
負荷率75%時の出力:200 × 0.75 = 150 MW解答:
無負荷時の電圧上昇率 ≈ 充電容量/送電容量解答:
最高効率点の負荷率:同期機は電力システムの中核を担う最重要な電気機器です。発電所から家庭まで、電力の安定供給を支える同期発電機、産業用の精密駆動や力率改善を担う同期電動機、そして系統の電圧安定化に貢献する同期調相機として、現代社会のあらゆる場面で活用されています。
同期機の動作原理から始まり、構造・特性・制御・並行運転・損失と効率まで、本資料で学習した内容は電気技術者として必須の知識です。特に、同期速度の概念、励磁制御による力率調整、並行運転時の同期投入条件、効率特性と経済運転などは、実務において日常的に活用される重要な技術です。
電力系統の脱炭素化が進む現代において、再生可能エネルギーの変動に対する系統安定化や、分散型電源との協調運転など、同期機の技術的重要性はますます高まっています。デジタル制御技術やIoT・AI技術との融合により、同期機の制御・保護・保全技術も急速に進歩しています。
電験三種の学習を通じて習得した同期機の知識は、発電所の運用・保守、工場の電気設備管理、電力システムの計画・設計など、幅広い実務分野で必ず活用されます。理論と実践の両面から同期機を深く理解し、安全で効率的な電力システムの構築に貢献していただければと思います。