誘電体の分子は通常、電気的に中性ですが、外部電場がかかると分子内の電荷分布が変化します。+の電荷が電場と逆方向へ、-の電荷が電場と同方向へ引っ張られ、分子全体が分極します。
分極した分子が整列することで、誘電体の表面に見かけの電荷が蓄積します。極板に近い面には極板と逆符号の電荷、反対側の面には同符号の電荷が現れます。
誘電体表面に生じた電荷は、元の電場と逆向きの電場を発生させます。これは分極によって生じた内部電場と呼ばれ、外部からの電場に対抗するように働きます。
外部電場と内部電場が重なり合い、誘電体内部の正味の電場強度は弱まります。この弱まりの程度は誘電体の種類によって異なり、比誘電率(εr)で表されます。
極板間の電位差V(電圧)は電場強度Eと極板間距離dの積(V=Ed)で表されます。誘電体によって電場が弱まっても電位差は同じなので、物理的な関係を維持するためには何かが変化する必要があります。
電位差を一定に保つために、極板にはより多くの電荷が蓄積されます。誘電体がない場合と比べて、同じ電圧でも多くの電荷を蓄えられるようになります。
コンデンサの静電容量Cは、誘電体の挿入によって比誘電率εrの分だけ増加します(C=ε0εrA/d)。これにより、蓄えられる電荷量Q(Q=CV)とエネルギーU(U=CV²/2)も同じ割合で増加します。
このプロセスを通じて、誘電体を挿入したコンデンサは同じ電圧でもより多くの電荷を蓄えることができるようになります。これが誘電体の主要な効果であり、実用的なコンデンサの容量を大きく向上させる仕組みです。
誘電体がコンデンサに挿入されると、次のような効果が生じます:
\[ E = \frac{E_0}{\varepsilon_r} \]
\[ \begin{aligned} Q &= CV \\[10pt] C &= \varepsilon_0 \varepsilon_r \frac{A}{d} \end{aligned} \]
誘電体の挿入により静電容量$C$が$\varepsilon_r$倍になるため、同じ電圧$V$でも蓄えられる電荷$Q$が$\varepsilon_r$倍になります。\[ \begin{aligned} U &= \frac{1}{2}CV^2 \\[10pt] &= \frac{1}{2}\varepsilon_0 \varepsilon_r \frac{A}{d}V^2 \end{aligned} \]
誘電体の分極現象により、誘電体の両端に表面電荷が現れ、これが極板の電荷を部分的に「中和」するように働きます。これにより、極板はより多くの電荷を蓄えることができるようになります。
コンデンサは電気を蓄える装置で、2枚の金属板(極板)が向かい合っているシンプルな構造です。ここに誘電体という特殊な物質を挟むと、蓄えられる電気の量が大幅に増えます。なぜこんなことが起きるのか、身近な例えで考えてみましょう。
まず、コンデンサは次のようなものだと想像してください:
電池などでコンデンサに電圧をかけると、一方の板に+の電荷、もう一方の板に-の電荷が溜まります。この状態で電池から外しても、電荷は板に残り続けます。
誘電体とは、電気を通さないけれど、電場(電気の力が及ぶ空間)の影響を受ける物質です。例えば、紙、ガラス、プラスチックなどです。この誘電体を2枚の板の間に挟むと何が起きるでしょうか?
分かりやすい例え:磁石と鉄の関係に似ています
磁石の近くに鉄を置くと、鉄も磁石になります。これを「誘導」と言います。同じように、電荷の近くに誘電体を置くと、誘電体の中の分子は電場の影響を受けて並び始めます。これを「分極」といいます。
誘電体の分子は、通常はバラバラの向きを向いていますが、電場の中に置かれると次のようになります:
重要なポイント: 誘電体の表面電荷は極板の電荷を「打ち消す」ように働くため、極板間の電場は弱くなります。弱まった電場でも同じ電圧を維持するためには、極板にはより多くの電荷が必要になるのです。
別の例えで考えてみましょう:
スポンジの無いバケツでは、ある高さ(電圧)の水を保つためには一定量の水(電荷)が必要です。しかし、スポンジ(誘電体)を入れると、同じ高さ(電圧)でもより多くの水(電荷)を貯められるようになります。スポンジが水を吸収して保持するように、誘電体は電場の力を「吸収」して電荷の蓄積を助けるのです。
誘電体をコンデンサに入れると電荷が増える仕組みをまとめると:
これが、コンデンサに誘電体を入れると電荷が増える基本的な仕組みです。誘電体の種類によって電荷の増え方は異なり、これを「比誘電率」という数値で表します。例えば、空気はほぼ1、紙は約3.5、セラミックは数百から数千もの比誘電率を持ちます。比誘電率が高いほど、より多くの電荷を蓄えることができます。