パワーエレクトロニクスは、電力の変換や制御を半導体デバイスを用いて行う技術分野です。具体的には、電気エネルギーの形態(電圧、電流、周波数)を効率よく変換し、様々な電気機器の制御を可能にします。
パワーエレクトロニクスの主な役割:
この技術は現代の電力システムにおいて不可欠であり、エネルギー効率の向上や精密な電力制御を実現し、省エネルギー社会の構築に貢献しています。
パワーエレクトロニクス技術は私たちの日常生活や産業のあらゆる場面で活用されています。
これらの応用例からわかるように、パワーエレクトロニクスは電力の効率的な利用と制御において重要な役割を果たしています。
パワーエレクトロニクスは第三種電気主任技術者試験(電験三種)の機械科目において重要な出題分野となっています。特に以下の内容が頻出しています:
電験三種 機械科目におけるパワーエレクトロニクスの出題傾向:
例年の試験では、パワーエレクトロニクス関連の問題が機械科目の中で1〜2問程度出題されることが多く、基本的な回路の理解と簡単な計算問題が中心となっています。
パワーエレクトロニクスを効率的に学習するためには、以下のような順序で進めることをお勧めします:
学習のポイント:
パワーエレクトロニクスは、電気回路の知識と半導体デバイスの特性理解が基礎となります。まずは基本的な電気回路(直流回路、交流回路)の知識をしっかり復習した上で学習を進めると効果的です。また、回路図や波形を見て動作を理解する力を養うことが重要です。
パワーエレクトロニクスの理解には、半導体の基本的な性質と動作原理の知識が不可欠です。第三種電気主任技術者試験では、この分野からの出題も多く見られます。
半導体は、電気伝導性が導体(金属など)と絶縁体(セラミックスなど)の中間にある物質です。温度や不純物の添加(ドーピング)によって電気的性質を制御できる特性を持ちます。
半導体の特徴:
パワーエレクトロニクスで使用される主な半導体材料について理解しましょう。
主要な半導体材料:
半導体内部では、「電子」と「正孔(ホール)」という2種類の電荷キャリアが電気伝導に関与します。
電子と正孔:
半導体の伝導メカニズム:
半導体の伝導は電子の「バケツリレー」のようなものと考えられます。例えば、ある原子から隣の原子へ電子が移動すると、元の原子には「正孔」ができます。さらに別の電子がこの正孔を埋めると、今度はその電子が移動してきた場所に新たな正孔ができます。このように、電子が移動する方向とは逆方向に正孔が移動しているように見える現象が起こります。
半導体は、不純物の有無によって、真性半導体と不純物半導体に分類されます。
真性半導体(Intrinsic Semiconductor):
不純物半導体(Extrinsic Semiconductor):
不純物半導体は、添加する不純物の種類によってn型とp型に分類されます。これらは現代の半導体デバイスの基礎となっています。
n型半導体:
p型半導体:
p型半導体とn型半導体を接合すると「pn接合」が形成されます。これはダイオードなどの半導体デバイスの基本構造です。
pn接合の形成:
p型とn型の半導体を接合すると、接合面付近で次のような現象が起こります:
pn接合の最も重要な特性は「整流作用」です。これは電流を一方向にのみ流す性質で、ダイオードの基本原理となります。
電流が流れやすい方向に電圧をかけた時:
p型側にプラス、n型側にマイナスの電圧をかけると(順方向バイアス):
電流が流れにくい方向に電圧をかけた時:
p型側にマイナス、n型側にプラスの電圧をかけると(逆方向バイアス):
水道管の例え:
pn接合の整流作用は水道管の逆止弁に例えることができます。順方向バイアスは水が流れる方向に弁を押す状態で、水(電流)は自由に流れます。逆方向バイアスは水が弁を閉める方向に押す状態で、水はほとんど流れません。
pn接合に大きな逆方向電圧を印加すると、ある電圧(降伏電圧)を超えたとき、急激に電流が増加する現象が起こります。これを降伏と呼びます。
降伏のメカニズム:
降伏現象の応用:
ダイオードの降伏現象は一見すると望ましくない特性のように思えますが、実はこれを積極的に利用したデバイスもあります。例えば、一定の逆方向電圧(降伏電圧)で安定した動作をするツェナーダイオードは、電圧基準回路や過電圧保護回路などに広く使用されています。
半導体デバイスの特性は温度によって大きく変化します。特にパワーエレクトロニクスでは、高温での動作が避けられないため、温度特性の理解が重要です。
温度上昇による主な影響:
温度による影響の実例:
例えば、25℃で0.7Vの順方向電圧を持つシリコンダイオードは、100℃では約0.55Vまで低下します。また、逆方向漏れ電流は温度が10℃上昇するごとに約2倍になるため、高温環境での使用には注意が必要です。
半導体デバイスの基礎 重要ポイントまとめ:
パワーエレクトロニクスで使用される主な半導体デバイスとその特性について詳しく解説します。電験三種では、各デバイスの動作原理、特性、用途について頻出の試験範囲となっています。
最も基本的なパワー半導体デバイスで、一方向のみに電流を流す性質を持ちます。pn接合の整流作用を利用しています。
整流ダイオードの特徴:
整流ダイオードの主な定格パラメータ:
試験でよく出題される整流ダイオードの種類:
ゲート電極からの制御信号によってオン状態にすることができる三端子のパワー半導体デバイスです。pnpn構造を持ち、アノード、カソード、ゲートの3つの端子があります。
サイリスタの等価回路:
サイリスタは2つのトランジスタ(pnpとnpn)が互いにフィードバック結合した構造と考えることができます。ゲート信号により一度導通が始まると、相互にベース電流を供給し合って導通状態が維持されます(ラッチング)。
サイリスタの特徴:
サイリスタの重要用語:
サイリスタ関連デバイス:
電流増幅作用を持つ三端子デバイスで、パワーエレクトロニクスでは主にバイポーラトランジスタ(BJT)やパワーMOSFETが使用されます。完全なオン・オフ制御が可能な点が大きな特徴です。
パワートランジスタの種類と特徴:
パワーMOSFETの重要パラメータ:
MOSFETとバイポーラトランジスタの特長を組み合わせた高性能パワーデバイスです。1980年代以降、中〜高電圧・大電流領域での用途で急速に普及しました。
IGBTの特徴:
IGBTの重要パラメータと試験ポイント:
最新のIGBT技術とトレンド(試験対策):
近年、シリコン(Si)に代わる新材料を用いたパワー半導体デバイスの研究開発と実用化が進んでいます。特に炭化ケイ素(SiC)や窒化ガリウム(GaN)を用いたデバイスが注目されています。
SiCデバイスの特徴:
パワー半導体デバイスの選択基準(試験対策ポイント):
パワー半導体デバイスに関する練習問題:
次の文章の空欄に当てはまる適切な語句を選びなさい。
「IGBTは( A )のような入力特性と( B )のような出力特性を兼ね備えたデバイスである。IGBTのターンオフ時に発生する( C )は、スイッチング損失の主要因となる。一方、パワーMOSFETは( D )が高いという特徴があり、高耐圧品では損失が増大する。」
解答:c. A:MOSFET B:BJT C:テール電流 D:オン抵抗
解説:
IGBTとパワーMOSFETの特徴について
IGBTの良いところ
IGBTは2つの優れた特徴を持っています:
・制御しやすい:MOSFETと同じように、少ない電力で簡単にオン・オフを制御できます(電圧で制御)
・効率が良い:バイポーラトランジスタのように、電流を流すときの電圧降下が小さく、無駄な電力消費が少なくて済みます
IGBTの課題
IGBTをオフにするとき、「テール電流」という現象が起こります。これは電流がすぐに止まらず、だらだらと流れ続ける現象です。この原因は、IGBT内部の電子と正孔(電気の穴)がゆっくりと消えていくためです。この余分な電流により、スイッチング時に熱が発生し、効率が下がる主な原因となります。
パワーMOSFETの課題
パワーMOSFETは高い電圧に耐えられるように作ると、オン抵抗(電流を流すときの抵抗)が大きくなってしまいます。具体的には、耐圧が高くなると、オン抵抗は耐圧の2.5乗に比例して増加します。これにより、大きな電流を流す用途では、抵抗による電力損失が大きくなってしまいます。
パワーエレクトロニクスの本質は、半導体デバイスを高速でスイッチング(オン/オフ)させることによる電力制御です。この基本的な仕組みと原理を理解することが、パワーエレクトロニクス全体の理解につながります。
電力を制御する方法には大きく分けて2つの方法があります。これらの違いを理解することで、スイッチング方式の利点が明確になります。
電力制御の方法:
日常生活の例:
水道の蛇口を例にすると、リニア制御は蛇口を半開きにして水量を調節する方法、スイッチング制御は蛇口を完全に開けたり閉めたりする動作を繰り返し、開けている時間の割合で平均水量を調節する方法に例えられます。後者は一見無駄に見えますが、半開き状態で発生する圧力損失(エネルギー損失)がないため、理論的にはエネルギー効率が高くなります。
スイッチング制御の理解には、理想的なスイッチと実際の半導体スイッチの違いを知ることが重要です。
理想スイッチの特性:
実際の半導体スイッチの特性:
半導体スイッチには主に3つの動作状態があります。これらを理解することがスイッチングの基本です。
半導体スイッチの動作状態:
交通信号の例え:
半導体スイッチの動作状態は交通信号に例えることができます。オン状態は青信号(電流が自由に流れる)、オフ状態は赤信号(電流が停止)、そして遷移状態は黄信号(過渡状態)のようなものです。理想的には青と赤の切り替えが瞬時に行われれば効率的ですが、実際には安全のために黄信号の時間が必要です。半導体スイッチでも同様に、物理的な制約から遷移状態が存在し、ここでエネルギー損失が発生します。
実際のスイッチング動作を波形で見ると、オンからオフ、オフからオンへの遷移がどのように起こるかがわかります。
ターンオン過程(オフ→オン):
ターンオフ過程(オン→オフ):
スイッチング損失は、ターンオン・ターンオフ時の過渡状態で発生します。なぜこの損失が発生するのかを理解しましょう。
スイッチング損失が発生する仕組み:
車の発進と停止の例え:
スイッチング損失は、車の発進と停止に例えることができます。静止状態(オフ)から一定速度(オン)まで加速する過程や、一定速度から停止するまでの減速過程ではエネルギー消費(燃料消費)が大きくなります。これは、加速や減速の際にはエンジンや制動システムでのエネルギー損失が大きいためです。同様に、半導体スイッチも遷移状態でのエネルギー損失が大きくなります。
スイッチングによる電力制御の基本概念は「デューティサイクル」です。これは平均電力を制御するための重要な概念です。
デューティサイクルとは:
デューティサイクルによる平均値の制御:
水道栓の例え:
デューティサイクルによる制御は、水道の蛇口を一定のリズムで開閉するようなものです。10秒間のうち5秒間だけ蛇口を全開にして水を出し、残りの5秒間は完全に閉めるとします(D=0.5)。この場合、10秒間の平均水量は、常に蛇口を半開きにしておいた場合と同じになります。しかし、エネルギー効率の点では、全開/全閉の切り替え方式の方が優れています(全開時は圧力損失が最小限で済むため)。
スイッチングを用いた電力制御には、いくつかの基本的な制御方式があります。これらの違いを理解しましょう。
主要な制御方式:
スイッチングを利用すると、単なる電力制御だけでなく、様々な波形を生成することもできます。これがインバータの基本原理です。
スイッチングによる波形生成の基本:
スイッチング損失はパワーエレクトロニクス回路の重要な損失要因です。これを低減するためのいくつかの基本技術を紹介します。
スイッチング損失低減の基本アプローチ:
電車の発車の例え:
ソフトスイッチング技術は、電車が発車するときに徐々に加速するようなものです。急発進ではなく、ゆっくりと速度を上げていくことでエネルギー効率が向上し、乗客も快適です。同様に、半導体デバイスも「電圧ゼロ」や「電流ゼロ」の状態でスイッチングすることで、過渡状態でのエネルギー損失を大幅に低減できます。
スイッチング動作の基本 重要ポイントまとめ:
整流回路は交流(AC)を直流(DC)に変換する回路で、パワーエレクトロニクスの基本的な応用の一つです。
最も基本的な整流回路で、交流の片側の半波のみを通過させます。
半波整流回路の平均出力電圧:
\[V_{dc} = \frac{1}{T} \int_{0}^{T} v(t) \, dt = \frac{1}{2\pi} \int_{0}^{\pi} V_m \sin \omega t \, d(\omega t) = \frac{V_m}{\pi}\]ここで、\(V_m\) は入力交流電圧の最大値、\(T\) は周期です。
入力交流電圧の実効値を \(V_{rms}\) とすると、\(V_m = \sqrt{2} \times V_{rms}\) であるため:
\[V_{dc} = \frac{V_m}{\pi} = \frac{\sqrt{2} \times V_{rms}}{\pi} \approx 0.45 \times V_{rms}\]交流の正負両サイクルを利用して直流を得る回路です。ダイオードブリッジ回路が一般的に使用されます。
全波整流回路の平均出力電圧:
\[V_{dc} = \frac{2}{\pi} V_m = \frac{2\sqrt{2}}{\pi} V_{rms} \approx 0.9 \times V_{rms}\]全波整流は半波整流の2倍の平均電圧を出力します。
三相交流電源を用いた整流回路は、単相整流回路に比べて出力の脈動が少なく、より高い電力変換効率を持ちます。
三相全波整流回路の平均出力電圧:
\[V_{dc} = \frac{3\sqrt{2}}{\pi} V_{rms(L-L)} = \frac{3\sqrt{6}}{\pi} V_{rms(L-N)} \approx 1.35 \times V_{rms(L-L)}\]ここで、\(V_{rms(L-L)}\) は線間電圧の実効値、\(V_{rms(L-N)}\) は相電圧の実効値です。
整流回路の平滑化:
整流回路の出力には脈動(リプル)が含まれます。これを低減するために、コンデンサを並列に接続した平滑回路が用いられます。平滑コンデンサの容量が大きいほどリプルは小さくなりますが、過大な突入電流や高調波電流が問題となることがあります。
例題:単相全波整流回路の平均出力電圧
単相交流100V(実効値)を全波整流した場合の平均出力電圧を求めなさい。
解答:
\begin{align*} V_{dc} &= \frac{2\sqrt{2}}{\pi} V_{rms} \\ &= \frac{2\sqrt{2}}{\pi} \times 100 \\ &= \frac{2 \times 1.414}{\pi} \times 100 \\ &= \frac{282.8}{3.14} \\ &\approx 90 \, \mathrm{V} \end{align*}チョッパ回路(DC-DCコンバータ)は、直流電圧を別の電圧レベルの直流に変換する回路です。電力変換効率が高く、電圧制御の応答性にも優れているため、様々な電子機器や電力制御システムに広く使用されています。第三種電気主任技術者試験では頻出分野の一つです。
チョッパ回路とは:
チョッパ回路とは、直流電圧を「刻む(チョップする)」ことで、別の直流電圧に変換する回路です。これは変圧器が交流でしか使えないのに対し、直流を直接変換できるという大きな利点があります。
直流変圧の基本的な考え方:
例えば100Vの直流電源に対して、スイッチを1秒間に50%だけONにすると、平均して50Vの電圧が得られます。これが最も基本的なチョッパの考え方です。しかし、このままでは出力は脈動する直流となります。そこで、インダクタとコンデンサを用いて平滑化することで安定した直流を得ます。
チョッパ回路の動作の基本要素:
インダクタ(コイル)の基本的な性質:
インダクタのエネルギー蓄積・放出の仕組み:
このエネルギーの蓄積と放出のサイクルがチョッパ回路の基本原理です。
チョッパ回路の基本原理:
チョッパ回路は、スイッチングデバイス(MOSFET、IGBT等)の高速オン・オフ動作によって、電源からのエネルギー供給を制御し、インダクタやコンデンサにエネルギーを蓄積・放出させることで所望の出力電圧を得ます。この制御の基本パラメータがデューティサイクル(D)です。
\[D = \frac{t_{ON}}{t_{ON} + t_{OFF}} = \frac{t_{ON}}{T}\]
ここで、\(t_{ON}\)はスイッチのオン時間、\(t_{OFF}\)はオフ時間、\(T\)はスイッチング周期です。
デューティサイクルの例:
還流ダイオードの重要性:
チョッパ回路において、還流ダイオード(フリーホイーリングダイオード)は非常に重要な役割を果たします。インダクタに蓄積されたエネルギーが放出される際の電流経路を確保し、スイッチング素子を保護します。
還流ダイオードなしの場合の問題:
もし還流ダイオードがなければ、スイッチがOFFになった瞬間、インダクタは電流を維持しようとして非常に高い電圧(キックバック電圧)を発生させ、スイッチング素子を破壊する可能性があります。還流ダイオードはこの高電圧から回路を保護すると同時に、インダクタのエネルギーを負荷に供給する経路を提供します。
インダクタ電流の二つの動作モード:
動作モードが変わる条件:
軽負荷(出力電流が小さい)、小さなインダクタンス値、低いスイッチング周波数などの条件で不連続モードになりやすくなります。不連続モードでは、電圧変換比がデューティサイクルだけでなく負荷条件にも依存するようになります。
入力電圧より低い出力電圧を得るための回路です。電験三種では最も基本的なDC-DCコンバータとして必ず理解しておくべき回路です。
降圧チョッパの基本構成:
基本的な降圧チョッパは、スイッチング素子(S)、還流ダイオード(D)、インダクタ(L)、出力コンデンサ(C)、負荷抵抗(R)で構成されます。これらが特定の配置で接続されることで、入力電圧より低い出力電圧を生成します。
降圧チョッパの動作説明:
この「蓄えて放出する」サイクルが高速で繰り返されることで、平均的に入力電圧より低い電圧が出力されます。
降圧チョッパの基本関係式:
1. 出力電圧と入力電圧の関係(連続モード):
\[V_o = D \times V_i\]ここで、\(V_o\) は出力電圧、\(V_i\) は入力電圧、\(D\) はデューティサイクル(0〜1の値)です。
2. 出力電流と入力電流の関係(理想状態):
\[I_i = D \times I_o\]ここで、\(I_i\) は入力電流の平均値、\(I_o\) は出力電流です。この関係は電力保存則(\(P_i = P_o\))から導かれます。
3. インダクタの電流リプル:
\[\Delta I_L = \frac{V_i \times D \times (1-D)}{L \times f}\]ここで、\(\Delta I_L\) はインダクタ電流のリプル、\(L\) はインダクタンス、\(f\) はスイッチング周波数です。
4. 出力電圧リプル(連続モード):
\[\Delta V_o \approx \frac{\Delta I_L}{8 \times C \times f} = \frac{V_i \times D \times (1-D)}{8 \times L \times C \times f^2}\]ここで、\(\Delta V_o\) は出力電圧リプル、\(C\) は出力コンデンサの容量です。
降圧チョッパの動作モード:
1. 連続モード(CCM: Continuous Conduction Mode)
2. 不連続モード(DCM: Discontinuous Conduction Mode)
降圧チョッパの設計例:
入力電圧が48V、出力電圧を24V、最大出力電流が5A、スイッチング周波数が50kHzの降圧チョッパを設計する。
1. デューティサイクルの計算:
\[D = \frac{V_o}{V_i} = \frac{24}{48} = 0.5\]2. インダクタンスの最小値(連続モード動作のため):
連続モードと不連続モードの境界となる臨界インダクタンスは:
\[L_{crit} = \frac{(1-D) \times R}{2 \times f} = \frac{(1-0.5) \times \frac{24}{5}}{2 \times 50 \times 10^3} = \frac{0.5 \times 4.8}{100 \times 10^3} = 24 \, \mu\mathrm{H}\]通常は臨界値の2〜3倍を選択するため、L = 70μHとする。
3. 出力コンデンサの容量計算(電圧リプル1%以下とする):
\[C \geq \frac{(1-D)}{8 \times L \times f^2 \times \frac{\Delta V_o}{V_o}} = \frac{0.5}{8 \times 70 \times 10^{-6} \times (50 \times 10^3)^2 \times 0.01} \approx 36 \, \mu\mathrm{F}\]安全マージンを考慮して、C = 100μFを選択する。
入力電圧より高い出力電圧を得るための回路です。太陽光発電のMPPT制御、バッテリ駆動機器、LED照明など幅広い用途に用いられます。
昇圧チョッパの基本構成:
昇圧チョッパの基本構成はインダクタ(L)、スイッチング素子(S)、ダイオード(D)、出力コンデンサ(C)、負荷抵抗(R)からなります。降圧チョッパとは配置が異なり、この配置によって入力電圧よりも高い出力電圧を得ることができます。
昇圧チョッパの動作説明:
つまり、スイッチのON/OFFによって、インダクタを「チャージポンプ」のように使い、入力電圧よりも高い電圧を発生させるのが昇圧チョッパの原理です。
昇圧チョッパの基本関係式:
1. 出力電圧と入力電圧の関係(連続モード):
\[V_o = \frac{V_i}{1-D}\]ここで、\(V_o\) は出力電圧、\(V_i\) は入力電圧、\(D\) はデューティサイクル(0〜1の値)です。
2. 出力電流と入力電流の関係(理想状態):
\[I_i = \frac{I_o}{1-D}\]入力電流は出力電流より大きくなります(エネルギー保存則による)。
3. インダクタの電流リプル:
\[\Delta I_L = \frac{V_i \times D}{L \times f}\]4. 出力電圧リプル(連続モード):
\[\Delta V_o \approx \frac{I_o \times D}{C \times f}\]昇圧チョッパの重要な特性:
例題:昇圧チョッパの計算問題
入力電圧12Vの昇圧チョッパ回路で、出力電圧を36Vにするためのデューティサイクルを求めよ。また、このとき出力電流が2Aの場合、入力電流と入力電力を求めよ。ただし、回路の損失は無視するものとする。
解答:
1. 出力電圧と入力電圧の関係式より、必要なデューティサイクルを求める:
\begin{align*} V_o &= \frac{V_i}{1-D} \\ 36 &= \frac{12}{1-D} \\ 1-D &= \frac{12}{36} = \frac{1}{3} \\ D &= 1 - \frac{1}{3} = \frac{2}{3} \approx 0.667 \end{align*}2. 入力電流の計算:
\begin{align*} I_i &= \frac{I_o}{1-D} \\ &= \frac{2}{1-0.667} \\ &= \frac{2}{0.333} \\ &= 6 \, \mathrm{A} \end{align*}3. 入力電力の計算:
\begin{align*} P_i &= V_i \times I_i \\ &= 12 \times 6 \\ &= 72 \, \mathrm{W} \end{align*}4. 確認:出力電力は \(P_o = V_o \times I_o = 36 \times 2 = 72 \, \mathrm{W}\) となり、入力電力と一致する(損失を無視した場合)。
入力電圧より高い出力電圧も低い出力電圧も得ることができる回路です。ただし、出力電圧の極性が入力と逆になる特徴があります。
昇降圧チョッパの基本関係式:
1. 出力電圧と入力電圧の関係(連続モード):
\[V_o = -\frac{D}{1-D} \times V_i\]ここで、出力電圧 \(V_o\) の負の符号は、出力電圧の極性が入力と逆であることを示しています。
2. 入出力電流の関係:
\[I_i = \frac{I_o \times D}{1-D}\]3. インダクタの電流リプル:
\[\Delta I_L = \frac{V_i \times D}{L \times f}\]4. 出力電圧リプル:
\[\Delta V_o \approx \frac{I_o \times D}{(1-D) \times C \times f}\]昇降圧チョッパの特徴と応用:
昇降圧動作が可能で、入出力のリプル電流が小さい特徴を持つĆukコンバータや、入出力間を電気的に絶縁できる各種絶縁型コンバータも、高度な応用に用いられます。
Ćukコンバータの特徴:
絶縁型DC-DCコンバータの種類:
チョッパ回路の性能を最大限に引き出すためには、適切な制御方式が重要です。主な制御方式には以下のようなものがあります。
主なチョッパ制御方式:
チョッパ回路の効率は通常80%〜95%程度と高いですが、様々な要因による損失が発生します。
チョッパ回路の主な損失要因:
効率の計算:
\[\eta = \frac{P_o}{P_i} = \frac{P_o}{P_o + P_{loss}} \times 100\%\]ここで、\(\eta\) は効率(%)、\(P_o\) は出力電力、\(P_i\) は入力電力、\(P_{loss}\) は全損失です。
練習問題
降圧チョッパ回路において、入力電圧100V、スイッチング周波数20kHz、インダクタンス500μH、出力コンデンサ容量220μFとする。デューティサイクルを0.4に設定したとき、次の問いに答えよ。
(1) 理想的な回路での出力電圧を求めよ。
(2) 連続モードで動作している場合のインダクタ電流リプルの大きさを求めよ。
(3) 出力電圧リプルを計算せよ。
解答:
(1) 出力電圧の計算:
\begin{align*} V_o &= D \times V_i \\ &= 0.4 \times 100 \\ &= 40 \, \mathrm{V} \end{align*}(2) インダクタ電流リプルの計算:
\begin{align*} \Delta I_L &= \frac{V_i \times D \times (1-D)}{L \times f} \\ &= \frac{100 \times 0.4 \times (1-0.4)}{500 \times 10^{-6} \times 20 \times 10^3} \\ &= \frac{100 \times 0.4 \times 0.6}{10} \\ &= \frac{24}{10} \\ &= 2.4 \, \mathrm{A} \end{align*}(3) 出力電圧リプルの計算:
\begin{align*} \Delta V_o &\approx \frac{\Delta I_L}{8 \times C \times f} \\ &= \frac{2.4}{8 \times 220 \times 10^{-6} \times 20 \times 10^3} \\ &= \frac{2.4}{35.2} \\ &\approx 0.068 \, \mathrm{V} = 68 \, \mathrm{mV} \end{align*}したがって、出力電圧リプルは約68mVです。このリプル率は \(\frac{68 \times 10^{-3}}{40} \times 100\% = 0.17\%\) となり、非常に小さいことがわかります。
チョッパ回路 重要ポイントまとめ:
インバータ回路は、直流(DC)を交流(AC)に変換する回路です。周波数や電圧を可変にできる特長があり、様々な用途に使用されています。
直流電源から単相交流を生成する回路です。主にフルブリッジ型(H型)構成が用いられます。
単相フルブリッジインバータの動作原理:
これらを交互に繰り返すことで、負荷に交流電圧を供給します。
直流電源から三相交流を生成する回路です。主に6個のスイッチングデバイスを用いた構成が一般的です。
三相インバータの特徴:
インバータの出力電圧や周波数を制御する一般的な方法として、PWM制御が広く用いられています。
PWM制御におけるスイッチング周波数と出力周波数:
インバータのスイッチング周波数は通常、目的の出力周波数より十分高く設定されます(数kHzから数十kHz)。出力周波数と振幅は、変調波(通常は正弦波)の周波数と振幅によって制御されます。
PWMインバータの特徴:
パワーエレクトロニクス回路における制御方式と、生成される波形の特性について学びましょう。
目的に応じて様々な制御方式が用いられます。
主な制御方式:
パワーエレクトロニクス回路は、スイッチング動作により高調波成分を生成します。これらは電源品質の低下や他の機器への干渉を引き起こす可能性があります。
高調波成分の計算(フーリエ級数展開):
周期関数 \(f(t)\) は次のようにフーリエ級数で表現できます:
\[f(t) = \frac{a_0}{2} + \sum_{n=1}^{\infty} \left[ a_n \cos(n\omega t) + b_n \sin(n\omega t) \right]\]ここで、\(a_0, a_n, b_n\) はフーリエ係数、\(n\) は高調波の次数を表します。
高調波対策:
パワーエレクトロニクス機器は、力率の低下を引き起こすことがあります。これを改善するための技術も重要です。
力率の定義:
\[PF = \frac{P}{S} = \frac{P}{V_{rms} \times I_{rms}}\]ここで、\(PF\) は力率、\(P\) は有効電力、\(S\) は皮相電力です。
高調波を含む場合の力率は次式で表されます:
\[PF = \frac{\cos\phi}{\sqrt{1 + THD^2}}\]ここで、\(\phi\) は基本波の電圧と電流の位相差、\(THD\) は電流の全高調波歪みです。
例題:PWMインバータの出力電圧実効値
デューティサイクル可変のPWMインバータにおいて、入力直流電圧が200Vで変調率が0.8のとき、基本波成分の出力電圧実効値を求めなさい。
解答:
フルブリッジインバータの場合、基本波成分の出力電圧実効値 \(V_{1rms}\) は次式で求められます:
\begin{align*} V_{1rms} &= \frac{M \times V_{dc}}{\sqrt{2}} \\ &= \frac{0.8 \times 200}{\sqrt{2}} \\ &= \frac{160}{1.414} \\ &\approx 113 \, \mathrm{V} \end{align*}ここで、\(M\) は変調率、\(V_{dc}\) は入力直流電圧です。
パワーエレクトロニクスの最も重要な応用の一つがモータの可変速駆動です。様々な種類のモータに対応した駆動回路が開発されています。
三相誘導モータは産業用途で最も広く使用されているモータタイプであり、インバータを用いた可変速駆動が主流となっています。
三相誘導モータの可変速駆動の特徴:
直流モータは制御性に優れており、チョッパ回路による駆動が一般的です。
DCモータドライブの特徴:
永久磁石を用いた高効率モータであるBLDCモータと永久磁石同期モータ(PMSM)の駆動にもパワーエレクトロニクスが不可欠です。
BLDC/PMSMドライブの特徴:
パワーエレクトロニクスは様々な電源装置に応用され、電力の効率的な変換と制御を実現しています。
従来の線形電源に比べて高効率、小型軽量化が可能なスイッチング電源は、パワーエレクトロニクスの代表的な応用例です。
スイッチング電源の特徴:
停電時にバックアップ電源を提供するUPSもパワーエレクトロニクス技術の重要な応用例です。
UPSの種類と特徴:
様々な二次電池を効率的に充電するためのバッテリ充電器にもパワーエレクトロニクス技術が活用されています。
バッテリ充電器の特徴:
パワーエレクトロニクスは様々な産業分野で活用され、生産性向上や省エネルギー化に貢献しています。
工場の生産設備や機械装置などでは、多くのモータが使用されており、これらを効率的に制御するためにパワーエレクトロニクス技術が不可欠です。
産業用モータドライブの応用例:
太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーシステムでは、発電した電力を系統連系するためにパワーエレクトロニクス技術が使用されています。
再生可能エネルギーシステムにおけるパワーエレクトロニクスの役割:
電気自動車の心臓部であるモータ駆動システムには高効率・高出力密度のパワーエレクトロニクス技術が使用されています。
EVのパワーエレクトロニクス:
パワーエレクトロニクスの応用において、いくつかの技術的課題があります。これらの課題に対する対策も重要な知識です。
パワーエレクトロニクス回路の高速スイッチングは電磁ノイズを発生させ、周囲の機器に悪影響を及ぼす可能性があります。
電磁ノイズ対策:
パワーエレクトロニクス回路の効率向上は重要な課題です。主な損失要因とその対策を理解しましょう。
主な損失要因と対策:
ソフトスイッチング技術の例:
パワーエレクトロニクス機器の信頼性と性能を確保するためには、適切な熱設計と冷却が不可欠です。
熱設計と冷却技術:
熱抵抗の計算:
\[T_j = T_a + P_{loss} \times R_{th(j-a)}\]ここで、\(T_j\) は接合部温度[°C]、\(T_a\) は周囲温度[°C]、\(P_{loss}\) は損失電力[W]、\(R_{th(j-a)}\) は接合部から周囲までの熱抵抗[°C/W]です。
高電圧・大電流を扱うパワーエレクトロニクス機器では、特別な設計上の配慮が必要です。
高電圧・大電流対応の技術:
パワーエレクトロニクスの技術的課題と対策のまとめ:
パワーエレクトロニクス機器の設計においては、電磁ノイズ対策、効率向上、熱管理、高電圧・大電流への対応など、多くの技術的課題があります。これらの課題に対して適切な対策を講じることで、高性能・高信頼性・高効率なパワーエレクトロニクスシステムを実現することができます。
第三種電気主任技術者試験では、これらの基本的な課題と対策について理解していることが求められます。
問題1:整流回路の平均出力電圧
単相交流100V(実効値)を次の各整流回路で整流した場合の平均出力電圧を求めなさい。
解答:
(1) 半波整流回路の平均出力電圧
半波整流回路の平均出力電圧は次式で求められます:
\begin{align*} V_{dc} &= \frac{V_m}{\pi} = \frac{\sqrt{2} \times V_{rms}}{\pi} \\ &= \frac{\sqrt{2} \times 100}{\pi} \\ &= \frac{1.414 \times 100}{3.14} \\ &\approx 45 \, \mathrm{V} \end{align*}(2) 全波整流回路(ブリッジ型)の平均出力電圧
全波整流回路の平均出力電圧は次式で求められます:
\begin{align*} V_{dc} &= \frac{2V_m}{\pi} = \frac{2\sqrt{2} \times V_{rms}}{\pi} \\ &= \frac{2 \times 1.414 \times 100}{3.14} \\ &\approx 90 \, \mathrm{V} \end{align*}解説:
整流回路の平均出力電圧は、入力交流電圧の波形と整流方式によって決まります。半波整流では交流の正の半周期のみを利用するため、全波整流の半分の平均電圧となります。実際の回路では、ダイオードの順方向電圧降下(約0.6〜1.0V)による損失があるため、実際の出力電圧はさらに低くなります。
問題2:チョッパ回路の計算
入力電圧48Vの降圧チョッパ回路において、出力電圧を24Vにするために必要なデューティサイクルを求めなさい。また、このときの出力電流が5Aの場合、入力電流の平均値を求めなさい。ただし、回路の損失は無視するものとする。
解答:
(1) 必要なデューティサイクル
降圧チョッパの出力電圧は次式で表されます:
\[V_o = D \times V_i\]ここで、\(V_o = 24 \, \mathrm{V}\)、\(V_i = 48 \, \mathrm{V}\) であるため:
\begin{align*} D &= \frac{V_o}{V_i} \\ &= \frac{24}{48} \\ &= 0.5 \end{align*}したがって、必要なデューティサイクルは0.5(50%)です。
(2) 入力電流の平均値
理想的なチョッパ回路(損失がない場合)では、入力電力と出力電力が等しくなります:
\[P_i = P_o\] \[V_i \times I_i = V_o \times I_o\]ここで、\(I_i\) は入力電流、\(I_o = 5 \, \mathrm{A}\) は出力電流です。したがって:
\begin{align*} I_i &= \frac{V_o \times I_o}{V_i} \\ &= \frac{24 \times 5}{48} \\ &= \frac{120}{48} \\ &= 2.5 \, \mathrm{A} \end{align*}別の考え方:デューティサイクル \(D = 0.5\) のとき、スイッチはオン時間の間だけ入力から電流を引き込みます。その間の電流値は出力電流と同じ \(I_o = 5 \, \mathrm{A}\) であるため、平均入力電流は \(I_i = D \times I_o = 0.5 \times 5 = 2.5 \, \mathrm{A}\) となります。
解説:
この問題は、降圧チョッパの基本的な動作原理と電力保存則を理解しているかを確認するものです。降圧チョッパは入力電圧より低い出力電圧を得るための回路であり、出力電圧はデューティサイクルに比例します。また、理想的な回路(損失がない場合)では入出力の電力が等しくなるため、電流は電圧に反比例します。
問題3:インバータの出力電圧
入力直流電圧が300Vの単相フルブリッジインバータにおいて、正弦波PWM制御を行っている。変調率が0.8のとき、出力の基本波成分の実効値を求めなさい。
解答:
単相フルブリッジインバータの正弦波PWM制御における出力基本波成分の実効値は次式で計算できます:
\[V_{1rms} = \frac{M \times V_{dc}}{\sqrt{2}}\]ここで、\(M\) は変調率(この場合は0.8)、\(V_{dc}\) は入力直流電圧(300V)です。
\begin{align*} V_{1rms} &= \frac{M \times V_{dc}}{\sqrt{2}} \\ &= \frac{0.8 \times 300}{\sqrt{2}} \\ &= \frac{240}{1.414} \\ &\approx 169.7 \, \mathrm{V} \end{align*}解説:
正弦波PWM制御を用いたインバータでは、変調波(正弦波)と搬送波(三角波)を比較することでスイッチングパターンを生成します。変調率 \(M\) は変調波の振幅と搬送波の振幅の比率を表し、出力電圧の大きさを制御するパラメータです。変調率が0から1の範囲では、出力基本波成分の振幅は変調率に比例します。
実際のインバータでは、スイッチング損失や電圧降下などにより、実際の出力電圧は理論値よりもやや低くなることがあります。
問題4:昇圧チョッパの計算
入力電圧が12Vの昇圧チョッパ回路において、出力電圧を36Vにするために必要なデューティサイクルを求めなさい。また、出力電流が2Aのとき、入力電流の平均値を求めなさい。ただし、回路の損失は無視するものとする。
解答:
(1) 必要なデューティサイクル
昇圧チョッパの出力電圧と入力電圧の関係は次式で表されます:
\[V_o = \frac{V_i}{1-D}\]ここで、\(V_o = 36 \, \mathrm{V}\)、\(V_i = 12 \, \mathrm{V}\) であるため:
\begin{align*} 36 &= \frac{12}{1-D} \\ 36(1-D) &= 12 \\ 36 - 36D &= 12 \\ -36D &= 12 - 36 \\ -36D &= -24 \\ D &= \frac{24}{36} \\ D &= \frac{2}{3} \approx 0.667 \end{align*}したがって、必要なデューティサイクルは約0.667(66.7%)です。
(2) 入力電流の平均値
理想的なチョッパ回路(損失がない場合)では、入力電力と出力電力が等しくなります:
\[P_i = P_o\] \[V_i \times I_i = V_o \times I_o\]ここで、\(I_i\) は入力電流の平均値、\(I_o = 2 \, \mathrm{A}\) は出力電流です。したがって:
\begin{align*} I_i &= \frac{V_o \times I_o}{V_i} \\ &= \frac{36 \times 2}{12} \\ &= \frac{72}{12} \\ &= 6 \, \mathrm{A} \end{align*}解説:
昇圧チョッパは入力電圧より高い出力電圧を得るための回路です。デューティサイクル \(D\) が大きいほど出力電圧は高くなりますが、理論的には \(D\) が1に近づくと出力電圧は無限大になります(実際には損失などにより制限されます)。
また、昇圧動作においては入力電流は出力電流より大きくなります。これは、電力保存則に基づいており、電圧が上がる分だけ電流は下がります。実際の回路では、インダクタやスイッチなどの損失があるため、入力電流はさらに大きくなります。
問題1
整流回路にコンデンサをつなげた回路があります。コンデンサの容量は100μF、負荷抵抗は1kΩです。入力電圧が100V、周波数60Hzのとき、出力電圧のリプル(波打ち)の大きさとして最も近いものを次の中から選びなさい。
解答:b. 1.7V
解説:
整流回路の出力にコンデンサをつなげると、電圧の波打ち(リプル)を小さくできます。このリプル電圧は次の式で計算できます:
\(V_r = \frac{I_L}{f \times C}\)
ここで、\(I_L\)は負荷に流れる電流、\(f\)は周波数、\(C\)はコンデンサの容量です。
ステップ1:平均出力電圧を求める
半波整流回路の平均出力電圧は:
\(V_{dc} = \frac{100 \times 1.414}{3.14} ≈ 45V\)
ステップ2:負荷電流を求める
オームの法則により:
\(I_L = \frac{45V}{1000Ω} = 0.045A = 45mA\)
ステップ3:リプル電圧を求める
\(V_r = \frac{0.045}{60 \times 100 \times 10^{-6}} = \frac{0.045}{0.006} = 7.5V\)
ただし、半波整流の場合は実際のリプルはこの値より小さくなり、約1/4程度になります:
\(V_r(実際) ≈ \frac{7.5}{4} ≈ 1.9V\)
選択肢の中では、b. 1.7Vが最も近い値です。
ポイント:
コンデンサの容量が大きいほど、またコンデンサに流れる電流が小さいほど、リプル電圧は小さくなります。
問題2
サイリスタを使った整流回路があります。入力電圧は100V、周波数は60Hzです。負荷抵抗は10Ωです。サイリスタのゲートに30°のタイミングで信号を送ったとき、負荷に流れる電流の平均値として最も近いものを次の中から選びなさい。
解答:b. 4.2A
解説:
サイリスタを使った回路では、ゲートに信号を送るタイミング(点弧角)によって出力電圧をコントロールできます。
ステップ1:入力電圧のピーク値を求める
入力電圧100V(実効値)のピーク値は:
\(V_m = \sqrt{2} \times 100 = 141.4V\)
ステップ2:平均出力電圧を求める
点弧角30°のときの平均出力電圧は次の式で求められます:
\(V_{dc} = \frac{V_m}{2\pi}(1 + \cos 30°)\)
計算すると:
\(V_{dc} = \frac{141.4}{2\pi}(1 + 0.866) = \frac{141.4 \times 1.866}{6.28} ≈ 42V\)
ステップ3:負荷電流を求める
オームの法則により:
\(I_{dc} = \frac{V_{dc}}{R} = \frac{42}{10} = 4.2A\)
したがって、負荷に流れる電流の平均値は約4.2Aです。
問題3
IGBTの特徴に関する次の記述のうち、誤っているものを選びなさい。
解答:b. ゲート駆動には大きな電流を必要とする。
解説:
IGBTの特徴について、各選択肢を検討します:
したがって、誤っている記述は b. 「ゲート駆動には大きな電流を必要とする」です。
パワーエレクトロニクスの基本概念:
主要回路と理論:
応用分野:
技術的課題と対策:
第三種電気主任技術者試験における重要事項:
パワーエレクトロニクスの基礎を理解したら、次のステップとして以下の関連分野への学習を進めるとよいでしょう:
学習を深めるためのアドバイス:
パワーエレクトロニクスは、現代の電気・電子システムにおいて不可欠な技術分野です。基礎をしっかり理解し、応用力を身につけることで、第三種電気主任技術者試験の合格だけでなく、実務においても大いに役立つ知識となるでしょう。