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直角三角形での三角比の定義から始め、sin・cos・tanの基本的な性質、単位円を用いた三角関数の定義、そして加法定理まで学びます。これらは交流回路の計算で頻出の知識です。
ようこそ!このページでは、電気系資格試験に出てくる三角比と三角関数をわかりやすく解説していきます!交流回路の計算やベクトル解析の基礎となる大事な分野なので、基礎からしっかり理解していきましょう!
直角三角形での三角比の定義から始め、sin・cos・tanの基本的な性質、単位円を用いた三角関数の定義、そして加法定理まで学びます。これらは交流回路の計算で頻出の知識です。
三角比(さんかくひ)とは、三角形の辺の長さの比から定義される値で、角度を表現する方法の一つです。主にサイン(sin)、コサイン(cos)、タンジェント(tan)の3つがあります。
三角比と三角関数の主な用途:
直角三角形において、三角比は次のように定義されます:
直角三角形において、角θに対する:
これらの関係式は、三角比の計算や恒等式の証明でよく使われます。
重要な角度における三角比の値を覚えておくと便利です:
角度\(\theta\) | \(0^\circ\) | \(30^\circ\) | \(45^\circ\) | \(60^\circ\) | \(90^\circ\) |
---|---|---|---|---|---|
ラジアン | \(0\) | \(\frac{\pi}{6}\) | \(\frac{\pi}{4}\) | \(\frac{\pi}{3}\) | \(\frac{\pi}{2}\) |
\(\sin\theta\) | \(0\) | \(\frac{1}{2}\) | \(\frac{1}{\sqrt{2}} = \frac{\sqrt{2}}{2}\) | \(\frac{\sqrt{3}}{2}\) | \(1\) |
\(\cos\theta\) | \(1\) | \(\frac{\sqrt{3}}{2}\) | \(\frac{1}{\sqrt{2}} = \frac{\sqrt{2}}{2}\) | \(\frac{1}{2}\) | \(0\) |
\(\tan\theta\) | \(0\) | \(\frac{1}{\sqrt{3}} = \frac{\sqrt{3}}{3}\) | \(1\) | \(\sqrt{3}\) | 定義なし |
これらの値は、特に電気工学の計算でよく使われます。特に30°、45°、60°の値はよく出てくるので、覚えておきましょう。
三角比は様々な問題解決に応用できます:
地面から20mの距離にある建物を見上げたとき、仰角(水平線から見上げた角度)が30°であった。建物の高さは何メートルか?
解答:
仰角30°の直角三角形を考えます。地面から建物までの距離が20m(隣辺)、求める建物の高さが対辺です。
\[ \begin{aligned} \tan 30^\circ &= \frac{\text{建物の高さ}}{\text{距離}} \\[10pt] \frac{\sqrt{3}}{3} &= \frac{\text{建物の高さ}}{20} \\[10pt] \text{建物の高さ} &= 20 \times \frac{\sqrt{3}}{3} \\[10pt] &\approx 11.5 \text{ m} \end{aligned} \]
30°の斜面に沿って100Nの力を加えている。この力の水平成分と垂直成分はそれぞれいくらか?
解答:
\[ \begin{aligned} \text{水平成分} &= 100 \times \cos 30^\circ \\[10pt] &= 100 \times \frac{\sqrt{3}}{2} \\[10pt] &\approx 86.6 \text{ N} \\[10pt] \\ \text{垂直成分} &= 100 \times \sin 30^\circ \\[10pt] &= 100 \times \frac{1}{2} \\[10pt] &= 50 \text{ N} \end{aligned} \]
三角比を任意の角度に拡張するために、単位円(半径1の円)を使って三角関数を定義します:
単位円上の点 \((x, y) = (\cos\theta, \sin\theta)\) において、原点から点への線分が x 軸の正の方向となす角を \(\theta\) とします。
三角関数では、角度の単位としてラジアン(rad)がよく使われます。
単位円を使うことで、三角関数は0°から360°(0から2π)以上の角度や、負の角度にも定義を拡張できます。
重要な性質:
三角関数のグラフは周期的な波形を描きます:
特徴:
特徴:
特徴:
三角関数には様々な重要な性質があります:
三角関数は一定の周期で同じ値を繰り返します。
sinとtanは奇関数、cosは偶関数です。これは角度の符号が変わったときの挙動を示します。
角度を \(\pi/2 - \theta\)(90° - θ)に置き換えたときの関係です。
角度を \(\pi - \theta\)(180° - θ)に置き換えたときの関係です。
加法定理(かほうていり)は、二つの角の和や差に対する三角関数の値を、それぞれの角の三角関数の値で表す公式です。これらは電気工学での計算で非常に重要です。
これらの公式を使うと、二つの角の和や差のsinを計算できます。
\(\sin 75°\) の値を求めよ。
解答:\(75° = 45° + 30°\) を利用します。
\[ \begin{aligned} \sin 75° &= \sin(45° + 30°) \\[10pt] &= \sin 45° \cos 30° + \cos 45° \sin 30° \\[10pt] &= \frac{\sqrt{2}}{2} \cdot \frac{\sqrt{3}}{2} + \frac{\sqrt{2}}{2} \cdot \frac{1}{2} \\[10pt] &= \frac{\sqrt{6}}{4} + \frac{\sqrt{2}}{4} \\[10pt] &= \frac{\sqrt{6} + \sqrt{2}}{4} \end{aligned} \]
これらの公式を使うと、二つの角の和や差のcosを計算できます。
\(\cos 15°\) の値を求めよ。
解答:\(15° = 45° - 30°\) を利用します。
\[ \begin{aligned} \cos 15° &= \cos(45° - 30°) \\[10pt] &= \cos 45° \cos 30° + \sin 45° \sin 30° \\[10pt] &= \frac{\sqrt{2}}{2} \cdot \frac{\sqrt{3}}{2} + \frac{\sqrt{2}}{2} \cdot \frac{1}{2} \\[10pt] &= \frac{\sqrt{6}}{4} + \frac{\sqrt{2}}{4} \\[10pt] &= \frac{\sqrt{6} + \sqrt{2}}{4} \end{aligned} \]
これらの公式を使うと、二つの角の和や差のtanを計算できます。
\(\tan 15°\) の値を求めよ。
解答:\(15° = 45° - 30°\) を利用します。
\[ \begin{aligned} \tan 15° &= \tan(45° - 30°) \\[10pt] &= \frac{\tan 45° - \tan 30°}{1 + \tan 45° \tan 30°} \\[10pt] &= \frac{1 - \frac{\sqrt{3}}{3}}{1 + 1 \cdot \frac{\sqrt{3}}{3}} \\[10pt] &= \frac{3 - \sqrt{3}}{3 + \sqrt{3}} \\[10pt] &= \frac{(3 - \sqrt{3})(3 - \sqrt{3})}{(3 + \sqrt{3})(3 - \sqrt{3})} \\[10pt] &= \frac{9 - 6\sqrt{3} + 3}{9 - 3} \\[10pt] &= \frac{12 - 6\sqrt{3}}{6} \\[10pt] &= 2 - \sqrt{3} \end{aligned} \]
加法定理からは多くの便利な公式が導かれます:
角度が2倍になったときの三角関数の値を計算する公式です。
角度が半分になったときの三角関数の値を計算する公式です。符号は角度の象限によって決まります。
二つの三角関数の積を和や差で表す公式です。電気工学では信号の変調や復調の計算でよく使われます。
二つの三角関数の和や差を積の形で表す公式です。波の合成などの計算に役立ちます。
三角関数は電気工学のさまざまな分野で応用されます:
交流電圧・電流は時間とともに正弦波(サイン波)で変化します:
ここで:
複素インピーダンスの計算では、直角座標(\(R + jX\))と極座標(\(|Z|e^{j\theta}\))の変換に三角関数が使われます。
ここで \(\phi\) は電圧と電流の位相差です。力率は \(\cos\phi\) で表されます。
周期的な波形は、さまざまな周波数の正弦波と余弦波の和で表現できます:
この展開により、非正弦波の解析や、高調波の影響の計算が可能になります。
通信工学では、情報を搬送波に乗せる変調や、元の信号を取り出す復調に三角関数の性質が利用されます:
\(m(t)\) は変調信号、\(\omega_c\) は搬送波の角周波数です。
\(k_f\) は周波数偏移定数です。
加法定理(かほうていり)は、二つの角の和や差に対する三角関数の値を、それぞれの角の三角関数の値で表す公式です。これらは電気工学での計算で非常に重要です。
これらの公式を使うと、二つの角の和や差のsinを計算できます。
\(\sin 75°\) の値を求めよ。
解答:\(75° = 45° + 30°\) を利用します。
\[ \begin{aligned} \sin 75° &= \sin(45° + 30°) \\[10pt] &= \sin 45° \cos 30° + \cos 45° \sin 30° \\[10pt] &= \frac{\sqrt{2}}{2} \cdot \frac{\sqrt{3}}{2} + \frac{\sqrt{2}}{2} \cdot \frac{1}{2} \\[10pt] &= \frac{\sqrt{6}}{4} + \frac{\sqrt{2}}{4} \\[10pt] &= \frac{\sqrt{6} + \sqrt{2}}{4} \end{aligned} \]
これらの公式を使うと、二つの角の和や差のcosを計算できます。
\(\cos 15°\) の値を求めよ。
解答:\(15° = 45° - 30°\) を利用します。
\[ \begin{aligned} \cos 15° &= \cos(45° - 30°) \\[10pt] &= \cos 45° \cos 30° + \sin 45° \sin 30° \\[10pt] &= \frac{\sqrt{2}}{2} \cdot \frac{\sqrt{3}}{2} + \frac{\sqrt{2}}{2} \cdot \frac{1}{2} \\[10pt] &= \frac{\sqrt{6}}{4} + \frac{\sqrt{2}}{4} \\[10pt] &= \frac{\sqrt{6} + \sqrt{2}}{4} \end{aligned} \]
直角三角形ABC(∠C = 90°)において、辺の長さが AB = 5, BC = 4 のとき、(1)辺ACの長さ、(2)∠Aの大きさ(度)、(3)sin B, cos B, tan Bの値を求めよ。
(1)辺ACの長さを求めます。ピタゴラスの定理を使います。
\[ \begin{aligned} AC^2 &= AB^2 - BC^2 \\[10pt] &= 5^2 - 4^2 \\[10pt] &= 25 - 16 \\[10pt] &= 9 \\[10pt] AC &= 3 \end{aligned} \]
(2)∠Aの大きさを求めます。三角比の定義を使います。
\[ \begin{aligned} \sin A &= \frac{BC}{AB} = \frac{4}{5} \\[10pt] \angle A &= \sin^{-1}\left(\frac{4}{5}\right) \\[10pt] &\approx 53.1° \end{aligned} \]
(3)∠Bでの三角比を求めます。
\[ \begin{aligned} \sin B &= \frac{AC}{AB} = \frac{3}{5} = 0.6 \\[10pt] \cos B &= \frac{BC}{AB} = \frac{4}{5} = 0.8 \\[10pt] \tan B &= \frac{AC}{BC} = \frac{3}{4} = 0.75 \end{aligned} \]
sin 15°の値を加法定理を用いて求めよ。
15°は、45°- 30°として表せます。sinの加法定理の差の公式を使います。
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\[ \begin{aligned} \sin(A - B) &= \sin A \cos B - \cos A \sin B \\[10pt] \sin 15° &= \sin(45° - 30°) \\[10pt] &= \sin 45° \cos 30° - \cos 45° \sin 30° \\[10pt] &= \frac{\sqrt{2}}{2} \cdot \frac{\sqrt{3}}{2} - \frac{\sqrt{2}}{2} \cdot \frac{1}{2} \\[10pt] &= \frac{\sqrt{6}}{4} - \frac{\sqrt{2}}{4} \\[10pt] &= \frac{\sqrt{6} - \sqrt{2}}{4} \end{aligned} \]
方程式 2sin^2 x - sin x - 1 = 0 を解け。(0 ≤ x ≤ 2π)
sin xについての2次方程式として解きます。sin x = yとおきます。
\[ \begin{aligned} 2y^2 - y - 1 &= 0 \\[10pt] \end{aligned} \]
2次方程式の解の公式を使って解きます。
\[ \begin{aligned} y &= \frac{1 \pm \sqrt{1 + 8}}{4} \\[10pt] &= \frac{1 \pm 3}{4} \\[10pt] y_1 &= \frac{1 + 3}{4} = 1 \\[10pt] y_2 &= \frac{1 - 3}{4} = -\frac{1}{2} \end{aligned} \]
したがって、\(\sin x = 1\) または \(\sin x = -\frac{1}{2}\)となります。
\(\sin x = 1\) となるxの値は、\(x = \frac{\pi}{2} + 2n\pi\) (\(n\)は整数)です。\(0 \leq x \leq 2\pi\)の範囲では、\(x = \frac{\pi}{2}\)です。
\(\sin x = -\frac{1}{2}\) となるxの値は、\(x = \frac{7\pi}{6} + 2n\pi\) または \(x = \frac{11\pi}{6} + 2n\pi\) (\(n\)は整数)です。\(0 \leq x \leq 2\pi\)の範囲では、\(x = \frac{7\pi}{6}\)と \(x = \frac{11\pi}{6}\)です。
これらの例題を通じて、三角比と三角関数の扱い方が身につくと思います。特に電気系の試験では、交流回路の計算や位相差の問題でこれらの知識が必須になります。次は自分で問題を解いてみましょう!
ほな、学んだことを使って実際に解いてみよか!答えは隠してあるから、自分で計算してから確認してな。答えを見るには「答えを表示」ボタンをクリックするか、答えの部分をタッチしてみてな!
直角三角形ABCにおいて、∠C = 90°、AB = 10 cm、∠A = 30°である。辺BCとACの長さを求めよ。
sin θ = 0.6のとき、三平方の定理を用いてcos θの値を求めよ。(0° ≤ θ ≤ 90°)
cos 75°の値を加法定理を用いて求めよ。
方程式 cos 2x = cos xを解け。(0 ≤ x < 2π)
インピーダンス\(Z = 50 + j30 \, \Omega\)の回路に、電圧\(v(t) = 200 \sin(314t) \, \text{V}\)を印加したとき、次の問題に答えよ。
(1) インピーダンスの大きさと位相角
(2) 流れる電流の式
(3) 有効電力と無効電力
練習問題はどうやった?正解できたかな?三角比と三角関数の基本をマスターすれば、交流回路の計算やフェーザー表示の理解がグンと深まります!特に加法定理は電気工学の計算でよく使うので、しっかり覚えておこう!