電気回路を理解する上で、直流と交流の根本的な違いを把握することは極めて重要です。直流回路では、電圧や電流は時間が経過しても一定の値を保ち続けます。例えば、乾電池を使った回路では、電圧は常に1.5Vを維持し、電流も一定です。このため、計算は実数の範囲で完結し、中学校で習うオームの法則(V = IR)をそのまま適用できます。
しかし、交流回路では状況が劇的に変わります。家庭用電源のように、電圧と電流が正弦波的に変化し、1秒間に50回または60回もの周期で変動します。さらに厄介なのは、回路に含まれるコンデンサ(キャパシタ)やインダクタ(コイル)などの素子によって、電圧と電流の間に位相差と呼ばれる時間的なずれが生じることです。この位相差こそが、交流回路の計算を極めて複雑にする主要因となっているのです。
・電圧、電流が時間によらず一定値を保持
・オームの法則:\(V = IR\)が単純に適用可能
・計算は実数の四則演算のみで完結
・位相という概念が存在しない
・エネルギーの流れが一方向で理解しやすい
・電圧、電流が時間とともに正弦波的に変化
・異なる素子間で位相差が発生
・実数だけでは位相情報を表現不可能
・三角関数を用いた複雑な時間関数が必要
・エネルギーの流れが双方向で複雑
位相差という概念は、交流回路の理解において最も重要でありながら、最も理解しにくい概念の一つです。簡単に言えば、位相差とは、電圧の波形と電流の波形が異なるタイミングで変化する現象を指します。これは、水の波で例えると、二つの波が同じ周期で振動しているものの、一方の波のピークが他方の波のピークより少し早く、または遅く現れる状況に似ています。
この位相差が生じる根本的な理由は、回路に含まれるコンデンサやインダクタが持つ独特な性質にあります。これらの素子は、単純に電気を通すだけでなく、電気エネルギーを一時的に蓄積したり放出したりする能力を持っているのです。
コンデンサは電荷を蓄積する能力を持つ素子です。交流が印加されると、以下のような特徴的な動作をします:
・電流が電圧より90°進む現象が発生
・電荷の蓄積と放出に時間が必要なため遅延が生じる
・容量性リアクタンス:\(X_C = \frac{1}{\omega C}\)
・周波数が高いほどリアクタンスが小さくなる
・直流に対しては無限大の抵抗を示す
このメカニズムを理解するために、コンデンサを「電気のダム」として想像してください。水(電流)がダムに流れ込む際、まず水位(電圧)が上がる前に、大量の水が流れ込みます。
インダクタは磁気エネルギーを蓄積するコイル状の素子です。その動作特性は以下の通りです:
・電流が電圧より90°遅れる現象が発生
・磁束の変化に対して逆起電力で抵抗
・誘導性リアクタンス:\(X_L = \omega L\)
・周波数が高いほどリアクタンスが大きくなる
・直流に対しては単なる導線として機能
インダクタは「電気の慣性」を持つ素子と考えることができます。重い物体を動かすのに時間がかかるように、インダクタも電流の変化に対して「抵抗」を示します。
交流の電圧と電流は、以下のような三角関数で表現されます:
\(v(t) = V_m \cos(\omega t + \phi_v)\)
\(i(t) = I_m \cos(\omega t + \phi_i)\)
各パラメータの意味:
・\(V_m, I_m\):それぞれ電圧、電流の最大値(振幅)
・\(\omega\):角周波数(\(\omega = 2\pi f\)、fは周波数)
・\(\phi_v, \phi_i\):それぞれ電圧、電流の初期位相
・\(t\):時間変数
\(\Delta \phi = \phi_v - \phi_i\)
この位相差\(\Delta \phi\)が正の場合、電圧が電流より進んでいることを意味し、負の場合は電圧が電流より遅れていることを表します。位相差は通常、度(°)またはラジアン(rad)で表現され、360°は一周期に相当します。
交流回路を三角関数のみで解析しようとすると、数学的に非常に複雑な計算が必要になります。特に、複数の交流信号を扱う場合や、複雑な回路網を解析する場合には、計算の複雑さが指数関数的に増大します。
最も基本的な例として、異なる位相を持つ2つの交流電圧を足し合わせる場合を考えてみましょう:
\(v_1(t) = V_1\cos(\omega t + \phi_1)\)
\(v_2(t) = V_2\cos(\omega t + \phi_2)\)
これらを加算すると:
\(v_{total}(t) = v_1(t) + v_2(t) = V_1\cos(\omega t + \phi_1) + V_2\cos(\omega t + \phi_2)\)
この計算を実行するためには、三角関数の加法定理を使用する必要があります:
\(\cos(A + B) = \cos A \cos B - \sin A \sin B\)
結果として、元の式は以下のような複雑な形になります:
\(v_{total}(t) = V_1[\cos(\omega t)\cos\phi_1 - \sin(\omega t)\sin\phi_1] + V_2[\cos(\omega t)\cos\phi_2 - \sin(\omega t)\sin\phi_2]\)
さらに整理すると:
\(v_{total}(t) = [V_1\cos\phi_1 + V_2\cos\phi_2]\cos(\omega t) - [V_1\sin\phi_1 + V_2\sin\phi_2]\sin(\omega t)\)
この計算の問題点:
・加法定理や積和の公式を多用する必要がある
・計算ステップが多く、ミスが発生しやすい
・結果の物理的意味が直感的に理解しにくい
・複数の素子を含む回路では計算が実質的に不可能になる
・コンピュータープログラムでの実装も複雑になる
このような計算の複雑さは、実際の電気工学の現場では深刻な問題となります。例えば、電力系統の設計、モーター制御システムの開発、無線通信回路の設計などでは、数十、数百の素子を含む複雑な回路を解析する必要があります。従来の三角関数による方法では、このような複雑な系統の解析は現実的ではありません。
複素数の導入により、交流回路の解析は文字通り革命的な変化を遂げました。これは単なる計算手法の改良ではなく、交流現象に対する根本的な理解の仕方を変える パラダイムシフトと言えるでしょう。複素数を使うことで、先ほど見たような複雑な三角関数の計算が、まるで魔法のように単純な代数計算に置き換わります。この魔法の背後にあるのが、数学史上最も美しい公式の一つとされるオイラーの公式です。
\(e^{j\theta} = \cos\theta + j\sin\theta\)
この公式は、18世紀の偉大な数学者レオンハルト・オイラーによって発見されました。この式は「指数関数の複素数乗」と「三角関数」を結びつける極めて重要な関係式で、現代の工学や物理学の基礎となっています。
公式の意味を深く理解する:
・左辺:複素数の指数表現(極形式)
・右辺:実部(\(\cos\theta\))と虚部(\(j\sin\theta\))からなる直交形式
・\(j\):虚数単位(電気工学では\(i\)の代わりに\(j\)を使用)
・\(\theta\):複素平面上での角度(偏角)
オイラーの公式は、複素平面上で単位円上の点を表現する2つの方法を統一しています。角度\(\theta\)で回転したベクトルは、座標\((\cos\theta, \sin\theta)\)で表現できると同時に、\(e^{j\theta}\)という指数形式でも表現できるのです。
オイラーの公式を使うと、交流の時間関数を以下のように表現できます:
\(v(t) = V_m \cos(\omega t + \phi) = \text{Re}[V_m e^{j(\omega t + \phi)}]\)
ここで、\(\text{Re}[\cdot]\)は実部を取る操作を意味します。
この表現の革新性は、複雑なコサイン関数を「複素指数関数の実部」として捉えることで、指数関数の計算規則をそのまま交流計算に適用できることです。指数関数は加法・乗法において非常に扱いやすい性質を持っているため、計算が飛躍的に簡単になります。
オイラーの公式の真の価値は、交流の「振幅」と「位相」という2つの独立した情報を、一つの複素数で同時に表現できることにあります。これにより、従来は別々に扱う必要があった振幅計算と位相計算が統一され、一度の計算で両方の結果が得られるようになります。
従来の方法(三角関数):
\(A\cos(\omega t + \phi) + B\cos(\omega t + \psi)\)
この計算には複雑な三角関数の加法定理が必要でした。
複素数による方法(オイラーの公式適用後):
\(\text{Re}[(A e^{j\phi} + B e^{j\psi}) e^{j\omega t}]\)
括弧内の計算は単純な複素数の加算!三角関数の複雑な公式は一切不要です。
具体的な計算例:
2つの交流電圧:
\(v_1(t) = 10\cos(\omega t + 30°)\)
\(v_2(t) = 15\cos(\omega t + 45°)\)
複素数表現(フェーザ):
\(\dot{V}_1 = 10e^{j30°} = 10∠30°\)
\(\dot{V}_2 = 15e^{j45°} = 15∠45°\)
加算結果:
\(\dot{V}_{total} = \dot{V}_1 + \dot{V}_2\)(単純な複素数の加算)
フェーザ(Phasor)は、交流の振幅と位相を一つの複素数で表現する革新的な手法です。この名前は「位相ベクトル(Phase Vector)」から派生しています。
フェーザの定義と特徴:
・振幅と位相を複素数で表現:\(\dot{V} = V_m e^{j\phi}\)
・時間依存項\(e^{j\omega t}\)を一時的に省略して計算
・複素平面上で回転する複素数ベクトルとして視覚化
・ベクトルの長さが振幅、角度が位相を表現
フェーザの幾何学的解釈:
フェーザは複素平面上で一定の角速度\(\omega\)で回転するベクトルと考えることができます。このベクトルの実部の時間変化が、実際の交流波形に対応します。この視覚化により、位相差や振幅の関係が直感的に理解できるようになります。
フェーザ表現により、交流回路の計算が直流回路と同じレベルまで簡素化されます。これは工学史上の大きな進歩の一つと言えるでしょう。
簡素化される計算操作:
・加減算が直接実行可能:三角関数の加法定理が完全に不要
・位相差が自動的に考慮:複素数の角度として自然に表現
・振幅と位相が同時に計算:別々の計算プロセスが不要
・回路解析手法の直接適用:キルヒホッフの法則がそのまま使用可能
工学的な意義:
この簡素化により、エンジニアは複雑な数学計算に時間を取られることなく、回路の設計や最適化により多くの時間を割くことができるようになりました。また、コンピュータープログラムでの実装も容易になり、現代の電気工学の発展に大きく貢献しています。
複素数を使った交流計算の本質は、「時間とともに一定の角速度で回転する複素数ベクトル」として交流現象を捉えることです。この革新的な視点により、以下のような直感的理解が可能になります:
この視覚化により、複雑な数式の背後にある物理現象が直感的に理解できるようになります。まさに抽象的な数学と具体的な物理現象を結ぶ美しい橋渡しであり、数学と工学の理想的な融合例と言えるでしょう。
実用的なメリット:
・回路設計時の直感的な判断が可能
・トラブルシューティングの効率化
・学習者にとっての理解の促進
・異なる専門分野間でのコミュニケーション向上
複素数の導入により実現される最も重要な概念の一つが複素インピーダンスです。これにより、直流回路で慣れ親しんだオームの法則が、位相差を含む複雑な交流回路でも全く同じ形で適用できるようになります。これは電気工学における理論的統一の傑作と言えるでしょう。
\(\dot{Z} = R + jX\)
この式で表される複素インピーダンス\(\dot{Z}\)は、以下の2つの成分から構成されます:
・\(R\):抵抗成分(実部) - エネルギーを消費する成分
・\(X\):リアクタンス成分(虚部) - エネルギーを蓄積・放出する成分
抵抗(Resistor):
\(\dot{Z}_R = R\)
・純実数(虚部は0)
・周波数に依存しない
・位相差を生じない(0°)
インダクタ(Inductor):
\(\dot{Z}_L = j\omega L\)
・純虚数(実部は0)
・周波数に比例して増加
・電流を90°遅らせる効果
コンデンサ(Capacitor):
\(\dot{Z}_C = \frac{1}{j\omega C} = -j\frac{1}{\omega C}\)
・純虚数(実部は0、負の虚部)
・周波数に反比例して減少
・電流を90°進ませる効果
大きさ(絶対値):
\(|\dot{Z}| = \sqrt{R^2 + X^2}\)
これは交流に対する全体的な「抵抗」の大きさを表します。
位相角(偏角):
\(\theta = \arctan\left(\frac{X}{R}\right)\)
これは電圧と電流間の位相差を直接示します。
位相角の解釈:
・\(\theta > 0\):誘導性(インダクタンス優勢)
・\(\theta < 0\):容量性(キャパシタンス優勢)
・\(\theta = 0\):純抵抗性
直列接続:
\(\dot{Z}_{total} = \dot{Z}_1 + \dot{Z}_2 + \dot{Z}_3 + \cdots\)
直流回路と全く同じ加算規則が適用できます。
並列接続:
\(\frac{1}{\dot{Z}_{total}} = \frac{1}{\dot{Z}_1} + \frac{1}{\dot{Z}_2} + \frac{1}{\dot{Z}_3} + \cdots\)
これも直流回路と同一の計算規則です。
具体的な計算例:
RLC直列回路の場合:
\(\dot{Z} = R + j\omega L + \frac{1}{j\omega C} = R + j\left(\omega L - \frac{1}{\omega C}\right)\)
この一つの式で、振幅特性と位相特性の両方が完全に表現されます。
複素インピーダンスの最大の威力は、直流回路で慣れ親しんだオームの法則が交流回路でも全く同じ形で使用できることです:
\(\dot{V} = \dot{I} \cdot \dot{Z}\)
この式は表面上は直流回路のオームの法則(V = IR)と同じように見えますが、その内容は遥かに豊富です:
この一つの式に含まれる情報:
・電圧の振幅と電流の振幅の関係
・電圧と電流の位相差
・周波数依存性
・エネルギーの流れの方向
従来の三角関数による方法では、これらの情報を得るために複数の複雑な計算が必要でしたが、複素数を使えば一度の計算で全てが求まります。
複素数を交流回路解析に導入することで得られる利点は、単なる計算の簡素化を遥かに超えています。これは電気工学の理論と実践の両面において、パラダイムシフトをもたらした革新と言えるでしょう。
複素数による最も重要な貢献は、直流回路と交流回路の解析手法を統一したことです。これにより、位相差を含む複雑な交流の計算が、直流回路のような代数的な計算に完全に変換されました。
統一される解析手法:
・キルヒホッフの電圧則(KVL):回路の任意のループにおいて、電圧降下の総和はゼロ
・キルヒホッフの電流則(KCL):回路の任意の節点において、流入電流と流出電流の総和はゼロ
・節点解析法:各節点の電位を未知数とする連立方程式
・ループ解析法:各ループの電流を未知数とする連立方程式
・重ね合わせの定理:線形回路における複数電源の影響の合成
・テブナンの定理・ノートンの定理:複雑な回路の等価回路変換
これらの強力な解析ツールが、複素数の導入により交流回路でもそのまま適用できるようになったのです。これは、電気工学の学習と実践において計り知れない価値を持っています。
計算ステップ数の劇的削減:
・三角関数の複雑な展開や合成が完全に不要
・加法定理、積和の公式などの使用頻度がゼロに
・直流回路と同等の計算手順で交流回路を解析可能
・計算ミスの発生確率が大幅に減少
複素平面による幾何学的解釈:
・位相関係が複素平面上の角度として視覚的に把握可能
・振幅比較がベクトルの長さとして直感的に理解
・回路の周波数特性がベクトルの軌跡として表現
・共振現象やフィルタ特性の幾何学的解釈
電力計算の簡潔な表現:
複素電力の概念により、有効電力、無効電力、皮相電力の関係が一つの複素数で表現されます:
\(\dot{S} = P + jQ\)
・P:有効電力(実際に消費される電力)
・Q:無効電力(蓄積・放出される電力)
・|\(\dot{S}\)|:皮相電力(見かけの電力)
複素数による交流回路解析を学ぶということは、単に計算手法を身につけること以上の意味があります。これは「適切な数学的道具の選択が、複雑な問題を劇的に簡単にする」という普遍的な真理を体験することです。
学習の本質的価値:
・数学的思考力の向上:抽象化と具体化のバランス感覚
・問題解決能力の発達:複雑な問題を単純な要素に分解する能力
・創造性の育成:異なる分野の知識を結びつける発想力
・工学的センスの醸成:理論と実践を結ぶ直感力
この学習を通じて獲得される能力は、電気工学の枠を超えて、あらゆる工学分野、さらには自然科学や社会科学の問題解決にも応用できる普遍的なスキルとなります。
記号:R
電圧-電流関係:\(V = IR\)
位相関係:同相
複素数表現:\(Z = R\)
記号:L
電圧-電流関係:\(V = L\frac{di}{dt}\)
位相関係:電圧が90°進む
複素数表現:\(Z = j\omega L\)
記号:C
電圧-電流関係:\(i = C\frac{dv}{dt}\)
位相関係:電流が90°進む
複素数表現:\(Z = \frac{1}{j\omega C}\)
\(\omega = 2\pi f\) (角周波数)
\(X_L = \omega L\) (誘導性リアクタンス)
\(X_C = \frac{1}{\omega C}\) (容量性リアクタンス)
ここで、\(f\):周波数 [Hz]、\(L\):インダクタンス [H]、\(C\):キャパシタンス [F]
交流回路では、電圧と電流の間に位相差が生じます。この位相差は、エネルギーの授受や電力の計算に重要な影響を与えます。
電圧と電流は同じタイミングで変化(同相)
位相差:0°
電圧が電流より90°進む
位相差:+90°
電流が電圧より90°進む
位相差:-90°
フェーザー(phasor)は、正弦波の交流量を複素平面上のベクトルとして表現する方法です。時間的に変化する交流量を、回転するベクトルとして捉えることで、計算を大幅に簡素化できます。
\(v(t) = V_m \cos(\omega t + \phi)\)
\(\downarrow\)
\(\dot{V} = V_m e^{j\phi} = V_m(\cos\phi + j\sin\phi)\)
または実効値を使って:
\(\dot{V} = V e^{j\phi} = V(\cos\phi + j\sin\phi)\)
ここで、\(V = \frac{V_m}{\sqrt{2}}\):実効値
・三角関数の微分・積分が不要
・加法定理の計算が不要
・代数的な四則演算で解決
・複素平面上でベクトル表示
・位相関係が一目で分かる
・回路の動作が直感的に理解
・R、L、Cを同じ形式で表現
・複雑な回路も同じ手法で解析
・コンピュータでの計算に適している
フェーザー表示は定常状態の交流回路にのみ適用できます。過渡現象や非線形回路には直接適用できないことを理解しておきましょう。
\(v(t) = V_m \cos(\omega t + \phi_v) \leftrightarrow \dot{V} = V e^{j\phi_v}\)
\(i(t) = I_m \cos(\omega t + \phi_i) \leftrightarrow \dot{I} = I e^{j\phi_i}\)
直交形式での表現:
\(\dot{V} = V_r + j V_x\)
\(\dot{I} = I_r + j I_x\)
ここで、\(V_r, I_r\):実部(同相成分)、\(V_x, I_x\):虚部(直交成分)
\(e^{j\theta} = \cos\theta + j\sin\theta\)
これにより、極形式と直交形式を相互変換できます:
\(\dot{V} = V e^{j\phi} = V(\cos\phi + j\sin\phi) = V\cos\phi + j V\sin\phi\)
\(\dot{V} = V \angle \phi\)
\(V = |\dot{V}|\):大きさ
\(\phi = \arg(\dot{V})\):位相角
\(\dot{V} = V_r + j V_x\)
\(V_r = V\cos\phi\):実部
\(V_x = V\sin\phi\):虚部
インピーダンス(Impedance)は、交流回路における電圧と電流の比を表す複素数です。直流回路の抵抗に相当する概念ですが、位相情報も含んでいます。
\(\dot{Z} = \frac{\dot{V}}{\dot{I}} = \frac{V e^{j\phi_v}}{I e^{j\phi_i}} = \frac{V}{I} e^{j(\phi_v - \phi_i)}\)
直交形式では:
\(\dot{Z} = R + j X\)
ここで、\(R\):抵抗成分(レジスタンス)、\(X\):リアクタンス成分
インピーダンス:\(\dot{Z} = R\)
極形式:\(R \angle 0°\)
位相角:0°
インピーダンス:\(\dot{Z} = j\omega L\)
極形式:\(\omega L \angle 90°\)
位相角:+90°
インピーダンス:\(\dot{Z} = \frac{1}{j\omega C} = -j\frac{1}{\omega C}\)
極形式:\(\frac{1}{\omega C} \angle -90°\)
位相角:-90°
抵抗 \(R = 10\) Ω、インダクタンス \(L = 0.1\) H、キャパシタンス \(C = 100 \times 10^{-6}\) F が直列に接続されている。周波数 \(f = 50\) Hz のとき、合成インピーダンスを求めよ。
→ 横スクロールして下さい →
\[ \begin{aligned} X_L &= \omega L = 100\pi \times 0.1 \\[10pt] &= 10\pi \approx 31.4 \text{ Ω} \\[10pt] X_C &= \frac{1}{\omega C} = \frac{1}{100\pi \times 100 \times 10^{-6}} \\[10pt] &= \frac{1}{0.01\pi} \approx 31.8 \text{ Ω} \end{aligned} \]
→ 横スクロールして下さい →
\[ \begin{aligned} \dot{Z} &= \dot{Z_R} + \dot{Z_L} + \dot{Z_C} \\[10pt] &= 10 + j 31.4 - j 31.8 \\[10pt] &= 10 - j 0.4 \end{aligned} \]
→ 横スクロールして下さい →
\[ \begin{aligned} |\dot{Z}| &= \sqrt{10^2 + (-0.4)^2} \\[10pt] &= \sqrt{100.16} \approx 10.01 \text{ Ω} \\[10pt] \phi &= \arctan\left(\frac{-0.4}{10}\right) \\[10pt] &= \arctan(-0.04) \approx -2.3° \end{aligned} \]
・直列回路:インピーダンスを加算 \(\dot{Z} = \dot{Z_1} + \dot{Z_2} + \cdots\)
・並列回路:アドミタンスを加算してからインピーダンスに変換
・複素数の四則演算を確実にマスターすることが重要
アドミタンス(Admittance)は、インピーダンスの逆数で定義される複素数です。特に並列回路の解析において威力を発揮します。
\(\dot{Y} = \frac{1}{\dot{Z}} = \frac{\dot{I}}{\dot{V}}\)
直交形式では:
\(\dot{Y} = G + j B\)
ここで、\(G\):コンダクタンス [S]、\(B\):サセプタンス [S]
インピーダンス:\(\dot{Z} = R\)
アドミタンス:\(\dot{Y} = \frac{1}{R} = G\)
位相角:0°
インピーダンス:\(\dot{Z} = j\omega L\)
アドミタンス:\(\dot{Y} = \frac{1}{j\omega L} = -j\frac{1}{\omega L}\)
位相角:-90°
インピーダンス:\(\dot{Z} = -j\frac{1}{\omega C}\)
アドミタンス:\(\dot{Y} = j\omega C\)
位相角:+90°
抵抗 \(R = 20\) Ω、インダクタンス \(L = 0.05\) H、キャパシタンス \(C = 200 \times 10^{-6}\) F が並列に接続されている。周波数 \(f = 60\) Hz のとき、合成アドミタンスと合成インピーダンスを求めよ。
→ 横スクロールして下さい →
\[ \begin{aligned} \dot{Y_R} &= \frac{1}{R} = \frac{1}{20} = 0.05 \text{ S} \\[10pt] \dot{Y_L} &= \frac{1}{j\omega L} = \frac{1}{j \times 377 \times 0.05} \\[10pt] &= \frac{1}{j 18.85} = -j 0.053 \text{ S} \\[10pt] \dot{Y_C} &= j\omega C = j \times 377 \times 200 \times 10^{-6} \\[10pt] &= j 0.075 \text{ S} \end{aligned} \]
→ 横スクロールして下さい →
\[ \begin{aligned} \dot{Y} &= \dot{Y_R} + \dot{Y_L} + \dot{Y_C} \\[10pt] &= 0.05 - j 0.053 + j 0.075 \\[10pt] &= 0.05 + j 0.022 \text{ S} \end{aligned} \]
→ 横スクロールして下さい →
\[ \begin{aligned} \dot{Z} &= \frac{1}{\dot{Y}} = \frac{1}{0.05 + j 0.022} \\[10pt] &= \frac{1}{0.05 + j 0.022} \times \frac{0.05 - j 0.022}{0.05 - j 0.022} \\[10pt] &= \frac{0.05 - j 0.022}{0.05^2 + 0.022^2} \\[10pt] &= \frac{0.05 - j 0.022}{0.002984} \\[10pt] &\approx 16.8 - j 7.4 \text{ Ω} \end{aligned} \]
→ 横スクロールして下さい →
\[ \begin{aligned} |\dot{Z}| &= \sqrt{16.8^2 + (-7.4)^2} \\[10pt] &= \sqrt{282.24 + 54.76} \approx 18.4 \text{ Ω} \\[10pt] \phi &= \arctan\left(\frac{-7.4}{16.8}\right) \approx -23.8° \end{aligned} \]
直列回路では、各要素に同じ電流が流れ、電圧は各要素のインピーダンスに比例して分配されます。
\(\dot{Z_{total}} = \dot{Z_1} + \dot{Z_2} + \cdots + \dot{Z_n}\)
\(\dot{I} = \frac{\dot{V_{source}}}{\dot{Z_{total}}}\)
\(\dot{V_k} = \dot{I} \times \dot{Z_k}\)
電源電圧 \(\dot{V} = 100 \angle 0°\) V、抵抗 \(R = 30\) Ω、インダクタンス \(L = 0.1\) H が直列に接続されている。周波数 \(f = 50\) Hz のとき、回路の電流と各要素の電圧を求めよ。
→ 横スクロールして下さい →
\[ \begin{aligned} \omega &= 2\pi \times 50 = 100\pi \text{ rad/s} \\[10pt] X_L &= \omega L = 100\pi \times 0.1 \\[10pt] &= 10\pi \approx 31.4 \text{ Ω} \end{aligned} \]
→ 横スクロールして下さい →
\[ \begin{aligned} \dot{Z} &= \dot{Z_R} + \dot{Z_L} = 30 + j 31.4 \text{ Ω} \\[10pt] |\dot{Z}| &= \sqrt{30^2 + 31.4^2} \\[10pt] &= \sqrt{900 + 985.96} \approx 43.4 \text{ Ω} \\[10pt] \phi_Z &= \arctan\left(\frac{31.4}{30}\right) \approx 46.3° \end{aligned} \]
→ 横スクロールして下さい →
\[ \begin{aligned} \dot{I} &= \frac{\dot{V}}{\dot{Z}} = \frac{100 \angle 0°}{43.4 \angle 46.3°} \\[10pt] &= 2.30 \angle -46.3° \text{ A} \\[10pt] \dot{I} &= 2.30(\cos(-46.3°) + j\sin(-46.3°)) \\[10pt] &= 1.58 - j 1.66 \text{ A} \end{aligned} \]
→ 横スクロールして下さい →
\[ \begin{aligned} \dot{V_R} &= \dot{I} \times \dot{Z_R} \\[10pt] &= (1.58 - j 1.66) \times 30 \\[10pt] &= 47.4 - j 49.8 \text{ V} \\[10pt] |\dot{V_R}| &= 30 \times 2.30 = 69.0 \text{ V} \\[15pt] \dot{V_L} &= \dot{I} \times \dot{Z_L} \\[10pt] &= (1.58 - j 1.66) \times j 31.4 \\[10pt] &= j 49.6 + 52.1 = 52.1 + j 49.6 \text{ V} \\[10pt] |\dot{V_L}| &= 31.4 \times 2.30 = 72.2 \text{ V} \end{aligned} \]
並列回路では、各要素に同じ電圧が印加され、電流は各要素のアドミタンスに比例して分配されます。
\(\dot{Y_{total}} = \dot{Y_1} + \dot{Y_2} + \cdots + \dot{Y_n}\)
\(\dot{I_{total}} = \dot{V_{source}} \times \dot{Y_{total}}\)
\(\dot{I_k} = \dot{V_{source}} \times \dot{Y_k}\)
電源電圧 \(\dot{V} = 200 \angle 30°\) V、抵抗 \(R = 50\) Ω、キャパシタンス \(C = 100 \times 10^{-6}\) F が並列に接続されている。周波数 \(f = 60\) Hz のとき、各枝の電流と電源電流を求めよ。
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\[ \begin{aligned} \omega &= 2\pi \times 60 = 120\pi \text{ rad/s} \approx 377 \text{ rad/s} \\[10pt] X_C &= \frac{1}{\omega C} = \frac{1}{377 \times 100 \times 10^{-6}} \\[10pt] &\approx 26.5 \text{ Ω} \end{aligned} \]
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\[ \begin{aligned} \dot{Y_R} &= \frac{1}{R} = \frac{1}{50} = 0.02 \text{ S} \\[10pt] \dot{Y_C} &= j\omega C = j \times 377 \times 100 \times 10^{-6} \\[10pt] &= j 0.0377 \text{ S} \end{aligned} \]
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\[ \begin{aligned} \dot{I_R} &= \dot{V} \times \dot{Y_R} \\[10pt] &= 200 \angle 30° \times 0.02 = 4.0 \angle 30° \text{ A} \\[10pt] \dot{I_C} &= \dot{V} \times \dot{Y_C} \\[10pt] &= 200 \angle 30° \times 0.0377 \angle 90° \\[10pt] &= 7.54 \angle 120° \text{ A} \end{aligned} \]
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\[ \begin{aligned} \dot{I_R} &= 4.0(\cos 30° + j\sin 30°) \\[10pt] &= 4.0(0.866 + j 0.5) = 3.46 + j 2.0 \text{ A} \\[10pt] \dot{I_C} &= 7.54(\cos 120° + j\sin 120°) \\[10pt] &= 7.54(-0.5 + j 0.866) \\[10pt] &= -3.77 + j 6.53 \text{ A} \end{aligned} \]
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\[ \begin{aligned} \dot{I_{source}} &= \dot{I_R} + \dot{I_C} \\[10pt] &= (3.46 + j 2.0) + (-3.77 + j 6.53) \\[10pt] &= -0.31 + j 8.53 \text{ A} \\[10pt] |\dot{I_{source}}| &= \sqrt{(-0.31)^2 + 8.53^2} \approx 8.54 \text{ A} \\[10pt] \phi &= \arctan\left(\frac{8.53}{-0.31}\right) \approx 92.1° \end{aligned} \]
交流回路では、複素電力を用いることで、有効電力、無効電力、皮相電力を統一的に扱うことができます。
\(\dot{S} = \dot{V} \times \dot{I}^* = P + j Q\)
ここで:
\(P = \text{Re}(\dot{S})\):有効電力 [W]
\(Q = \text{Im}(\dot{S})\):無効電力 [var]
\(|\dot{S}| = \sqrt{P^2 + Q^2}\):皮相電力 [VA]
\(\cos\phi = \frac{P}{|\dot{S}|}\):力率
\(\dot{I}^*\) は \(\dot{I}\) の複素共役
有効電力:\(P = I^2 R\)
無効電力:\(Q = 0\)
力率:\(\cos\phi = 1\)
有効電力:\(P = 0\)
無効電力:\(Q = I^2 X_L > 0\)
力率:\(\cos\phi = 0\)(遅れ)
有効電力:\(P = 0\)
無効電力:\(Q = -I^2 X_C < 0\)
力率:\(\cos\phi = 0\)(進み)
電源電圧 \(\dot{V} = 100 \angle 0°\) V、抵抗 \(R = 8\) Ω、誘導性リアクタンス \(X_L = 6\) Ω が直列に接続されている。この回路の有効電力、無効電力、皮相電力、力率を求めよ。
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\[ \begin{aligned} \dot{Z} &= R + j X_L = 8 + j 6 \text{ Ω} \\[10pt] |\dot{Z}| &= \sqrt{8^2 + 6^2} = \sqrt{64 + 36} = 10 \text{ Ω} \\[10pt] \phi_Z &= \arctan\left(\frac{6}{8}\right) = \arctan(0.75) \approx 36.9° \end{aligned} \]
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\[ \begin{aligned} \dot{I} &= \frac{\dot{V}}{\dot{Z}} = \frac{100 \angle 0°}{10 \angle 36.9°} \\[10pt] &= 10 \angle -36.9° \text{ A} \\[10pt] \dot{I}^* &= 10 \angle 36.9° \text{ A(複素共役)} \end{aligned} \]
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\[ \begin{aligned} \dot{S} &= \dot{V} \times \dot{I}^* \\[10pt] &= 100 \angle 0° \times 10 \angle 36.9° \\[10pt] &= 1000 \angle 36.9° \text{ VA} \\[10pt] \dot{S} &= 1000(\cos 36.9° + j \sin 36.9°) \\[10pt] &= 1000(0.8 + j 0.6) = 800 + j 600 \text{ VA} \end{aligned} \]
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\[ \begin{aligned} P &= \text{Re}(\dot{S}) = 800 \text{ W} \\[10pt] Q &= \text{Im}(\dot{S}) = 600 \text{ var} \\[10pt] |\dot{S}| &= 1000 \text{ VA} \end{aligned} \]
共振は、誘導性リアクタンスと容量性リアクタンスが等しくなる現象です。複素数を使うことで、共振条件や共振時の特性を明確に理解できます。
\(X_L = X_C\)
\(\omega L = \frac{1}{\omega C}\)
\(\omega_0 = \frac{1}{\sqrt{LC}}\) (共振角周波数)
\(f_0 = \frac{1}{2\pi\sqrt{LC}}\) (共振周波数)
・合成リアクタンス = 0
・インピーダンス = R(最小)
・電流が最大
・力率 = 1
・\(\dot{Z} = R + j(X_L - X_C) = R\)
・\(\dot{I} = \frac{\dot{V}}{R}\)
・位相差 = 0°
抵抗 \(R = 10\) Ω、インダクタンス \(L = 0.1\) H、キャパシタンス \(C = 10 \times 10^{-6}\) F が直列に接続されている。共振周波数を求め、共振時の電流と各要素の電圧を計算せよ。電源電圧は \(\dot{V} = 50 \angle 0°\) V とする。
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\[ \begin{aligned} f_0 &= \frac{1}{2\pi\sqrt{LC}} \\[10pt] &= \frac{1}{2\pi\sqrt{0.1 \times 10 \times 10^{-6}}} \\[10pt] &= \frac{1}{2\pi\sqrt{10^{-6}}} \\[10pt] &= \frac{1}{2\pi \times 10^{-3}} \approx 159.2 \text{ Hz} \end{aligned} \]
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\[ \begin{aligned} X_L &= \omega_0 L = 1000 \times 0.1 = 100 \text{ Ω} \\[10pt] X_C &= \frac{1}{\omega_0 C} = \frac{1}{1000 \times 10 \times 10^{-6}} \\[10pt] &= 100 \text{ Ω} \\[10pt] \text{確認:} &X_L = X_C \text{ ✓} \end{aligned} \]
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\[ \begin{aligned} \dot{Z} &= R + j(X_L - X_C) \\[10pt] &= 10 + j(100 - 100) = 10 \text{ Ω} \end{aligned} \]
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\[ \begin{aligned} \dot{V_R} &= \dot{I} \times R = 5 \times 10 = 50 \text{ V} \\[10pt] \dot{V_L} &= \dot{I} \times j X_L = 5 \times j 100 = j 500 \text{ V} \\[10pt] &\rightarrow |\dot{V_L}| = 500 \text{ V} \\[10pt] \dot{V_C} &= \dot{I} \times (-j X_C) = 5 \times (-j 100) \\[10pt] &= -j 500 \text{ V} \rightarrow |\dot{V_C}| = 500 \text{ V} \end{aligned} \]
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\[ \begin{aligned} \dot{V_L} + \dot{V_C} &= j 500 + (-j 500) = 0 \\[10pt] \text{つまり、L}&\text{とCの電圧は大きさが等しく} \\[10pt] &\text{位相が180°異なる} \end{aligned} \]
共振時には、LとCの両端電圧が電源電圧の10倍になっています!これは共振回路の特徴的な現象で、実際の回路設計では絶縁や耐圧を十分考慮する必要があります。
三相交流システムでは、3つの電圧(電流)が120°ずつ位相差を持って存在します。複素数を使うことで、この複雑な関係を効率的に扱えます。
\(\dot{V_a} = V \angle 0°\)
\(\dot{V_b} = V \angle -120°\)
\(\dot{V_c} = V \angle 120°\)
または:
\(\dot{V_a} = V\)
\(\dot{V_b} = V \times a^2\)
\(\dot{V_c} = V \times a\)
ここで、\(a = e^{j120°} = -\frac{1}{2} + j\frac{\sqrt{3}}{2}\)(120°回転演算子)
\(a = e^{j120°} = -\frac{1}{2} + j\frac{\sqrt{3}}{2}\)
\(a^2 = e^{j240°} = -\frac{1}{2} - j\frac{\sqrt{3}}{2}\)
\(a^3 = e^{j360°} = 1\)
\(1 + a + a^2 = 0\) (重要!)
線間電圧 \(V_L = 200\) V、各相のインピーダンス \(\dot{Z} = 10 + j 5\) Ω のY結線三相負荷がある。各相電流と線電流を求めよ。
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\[ \begin{aligned} \dot{V_{an}} &= 115.5 \angle 0° \text{ V} \\[10pt] \dot{V_{bn}} &= 115.5 \angle -120° \text{ V} \\[10pt] \dot{V_{cn}} &= 115.5 \angle 120° \text{ V} \end{aligned} \]
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\[ \begin{aligned} |\dot{Z}| &= \sqrt{10^2 + 5^2} = \sqrt{125} \approx 11.18 \text{ Ω} \\[10pt] \phi_Z &= \arctan\left(\frac{5}{10}\right) \approx 26.57° \\[10pt] \dot{Z} &= 11.18 \angle 26.57° \text{ Ω} \end{aligned} \]
\[ \begin{aligned} \dot{I_a} &= \frac{\dot{V_{an}}}{\dot{Z}} = \frac{115.5 \angle 0°}{11.18 \angle 26.57°} \\[10pt] &= 10.33 \angle -26.57° \text{ A} \\[10pt] \dot{I_b} &= \frac{\dot{V_{bn}}}{\dot{Z}} = \frac{115.5 \angle -120°}{11.18 \angle 26.57°} \\[10pt] &= 10.33 \angle -146.57° \text{ A} \\[10pt] \dot{I_c} &= \frac{\dot{V_{cn}}}{\dot{Z}} = \frac{115.5 \angle 120°}{11.18 \angle 26.57°} \\[10pt] &= 10.33 \angle 93.43° \text{ A} \end{aligned} \]
・平衡三相では、一相分を計算すれば全体が分かる
・回転演算子 \(a\) を使うと計算が簡潔になる
・Y結線:線電圧 = \(\sqrt{3}\) × 相電圧、線電流 = 相電流
・Δ結線:線電圧 = 相電圧、線電流 = \(\sqrt{3}\) × 相電流
下図の回路において、電源電圧 \(\dot{E} = 100 \angle 0°\) V、\(R_1 = 20\) Ω、\(R_2 = 30\) Ω、\(X_L = 40\) Ω、\(X_C = 50\) Ω のとき、電流 \(\dot{I}\) を求めよ。
【回路図】E --- R₁ --- (R₂ ∥ jX_L) --- (-jX_C) ---
三相平衡負荷(Y結線)において、線間電圧 \(V_L = 380\) V、線電流 \(I_L = 15\) A、力率 \(\cos\phi = 0.8\)(遅れ)のとき、三相電力を求めよ。
直列RLC回路で、\(R = 50\) Ω、\(L = 0.2\) H とする。周波数 \(f = 60\) Hz で共振させるために必要なキャパシタンス \(C\) を求め、共振時のQ値を計算せよ。
理想変圧器の巻数比が \(n = N_1/N_2 = 2\) である。二次側に負荷インピーダンス \(\dot{Z_2} = 10 + j 5\) Ω が接続されているとき、一次側から見た等価インピーダンスを求めよ。
RCローパスフィルタ(\(R = 1000\) Ω、\(C = 1 \times 10^{-6}\) F)の遮断周波数を求め、遮断周波数の2倍の周波数での利得と位相を計算せよ。