【機械】令和6年 (上期) 問16|単相ブリッジ形電圧形インバータの動作モードと電流変化に関する計算問題
図1は,\( \mathrm{IGBT} \) を用いた単相ブリッジ接続の電圧形インバータを示す。直流電圧 \( E_{\mathrm{d}} \) [V] は,一定値と見なせる。出力端子には,インダクタンス \( L \) [H] で抵抗値 \( R \) [\(\Omega\)] の誘導性負荷が接続されている。この電圧形インバータの出力電圧 \( v_{\mathrm{0}} \),出力電流 \( i_{\mathrm{0}} \) が図2のようになった。インバータの動作モードを図2に示す ①~④として本モードは周期 \( T \) [s] で繰り返されるものとする。なお,上下スイッチの短絡を防ぐデッドタイムは考慮しない。
次の(a)及び(b)の問に答えよ。
(a) 図2に示した区間 ①~④ において電流が流れているデバイスの組合せとして正しいものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
\[ \begin{array}{ccccc} & ① & ② & ③ & ④ \\ \hline (1) & \mathrm{D_{2}-D_{3}} & \mathrm{Q_{2}-Q_{3}} & \mathrm{D_{1}-D_{4}} & \mathrm{Q_{1}-Q_{4}} \\ \hline (2) & \mathrm{Q_{2}-Q_{3}} & \mathrm{Q_{2}-Q_{3}} & \mathrm{Q_{1}-Q_{4}} & \mathrm{Q_{1}-Q_{4}} \\ \hline (3) & \mathrm{Q_{1}-Q_{4}} & \mathrm{Q_{1}-Q_{4}} & \mathrm{Q_{2}-Q_{3}} & \mathrm{Q_{2}-Q_{3}} \\ \hline (4) & \mathrm{Q_{1}-D_{3}} & \mathrm{Q_{1}-Q_{4}} & \mathrm{Q_{2}-D_{4}} & \mathrm{Q_{2}-Q_{3}} \\ \hline (5) & \mathrm{D_{1}-D_{4}} & \mathrm{Q_{1}-Q_{4}} & \mathrm{D_{2}-D_{3}} & \mathrm{Q_{2}-Q_{3}} \\ \hline \end{array} \](b) 電源電圧 \( E_{\mathrm{d}} \) が \( 100 \) [V],インダクタンス \( L \) を \( 2 \) [mH] とし,抵抗 \( R \) を \( 1 \) [\(\Omega\)] とすると,区間 ①② の電流は \( -I_{\mathrm{p}} \) [A] から \( I_{\mathrm{p}} \) [A] まで時定数 \( \tau \) [s] で増加する。\( \tau \) に最も近い値を次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
合格への方程式
単相ブリッジ電圧形インバータの基本
インバータは直流を交流に変換する装置です。ここでは、IGBTを使った単相ブリッジ電圧形インバータの動作を学びましょう。
インバータとは?
電力変換装置の分類
| 変換装置 | 変換内容 | 用途例 |
|---|---|---|
| 整流器(コンバータ) | 交流 → 直流 | ACアダプタ、充電器 |
| インバータ | 直流 → 交流 | モーター制御、UPS |
| DC-DCコンバータ | 直流 → 直流(電圧変換) | 電源回路 |
単相ブリッジ回路の構成
単相ブリッジインバータは、4つのスイッチング素子(IGBT)と4つのダイオードで構成されます。
回路構成
- スイッチング素子:\(\mathrm{Q_1, Q_2, Q_3, Q_4}\)(IGBT)
- 還流ダイオード:\(\mathrm{D_1, D_2, D_3, D_4}\)
- 直流電源:\(E_d \ \mathrm{[V]}\)
- 負荷:インダクタンス\(L\)と抵抗\(R\)の直列接続(誘導性負荷)
スイッチングの組み合わせ
出力電圧の制御
| ONにするスイッチ | 出力電圧 \(v_0\) |
|---|---|
| \(\mathrm{Q_1}\) と \(\mathrm{Q_4}\) | \(+E_d\) |
| \(\mathrm{Q_2}\) と \(\mathrm{Q_3}\) | \(-E_d\) |
\(\mathrm{Q_1-Q_4}\)と\(\mathrm{Q_2-Q_3}\)を交互にON/OFFすることで、交流電圧を作り出します。
誘導性負荷のポイント
負荷にインダクタンス(リアクトル)が含まれると、電流は電圧に対して遅れて変化します。
インダクタンスの性質(復習)
- 電流を急に変化させられない(電流の連続性)
- エネルギーを蓄積・放出する
- 電圧が切り替わっても、電流はすぐには変わらない
この性質により、スイッチが切り替わった直後はダイオードを通って電流が流れ続けます。
動作を理解するポイント
判断の基準
- 出力電圧\(v_0\)の符号を確認 → どのスイッチがONか分かる
- 出力電流\(i_0\)の符号を確認 → 電流の流れる方向が分かる
- 電圧と電流の符号の組み合わせで、導通するデバイスが決まる
4つの動作モードを理解しよう
単相ブリッジインバータの動作は、4つのモードに分けて考えます。電圧と電流の符号の組み合わせで、どのデバイスに電流が流れるかが決まります。
動作モードの全体像
| 区間 | 出力電圧 \(v_0\) | 出力電流 \(i_0\) | 導通デバイス | リアクトルの動作 |
|---|---|---|---|---|
| ① | \(+E_d\) | \(< 0\)(負) | \(\mathrm{D_1-D_4}\) | エネルギー放出 |
| ② | \(+E_d\) | \(> 0\)(正) | \(\mathrm{Q_1-Q_4}\) | エネルギー蓄積 |
| ③ | \(-E_d\) | \(> 0\)(正) | \(\mathrm{D_2-D_3}\) | エネルギー放出 |
| ④ | \(-E_d\) | \(< 0\)(負) | \(\mathrm{Q_2-Q_3}\) | エネルギー蓄積 |
【区間②】\(\mathrm{Q_1-Q_4}\)がON、十分時間経過後
\(\mathrm{Q_1}\)と\(\mathrm{Q_4}\)がONになり、十分に時間が経過した状態です。
区間②の動作
- 電流経路:\(E_d \to \mathrm{Q_1} \to L \to R \to \mathrm{Q_4} \to E_d\)
- 出力電圧:\(v_0 = +E_d\)
- 出力電流:\(i_0 > 0\)(正方向)
- リアクトル:エネルギーを蓄積している
【区間③】\(\mathrm{Q_2-Q_3}\)がON、直後
\(\mathrm{Q_2}\)と\(\mathrm{Q_3}\)がONになった直後の状態です。リアクトルが電流を維持しようとします。
区間③の動作
- 電流経路:\(L \to R \to \mathrm{D_3} \to E_d \to \mathrm{D_2} \to L\)
- 出力電圧:\(v_0 = -E_d\)
- 出力電流:\(i_0 > 0\)(まだ正方向を維持)
- リアクトル:エネルギーを放出している
★電圧は負になったが、電流はまだ正!→ ダイオードが導通
【区間④】\(\mathrm{Q_2-Q_3}\)がON、十分時間経過後
\(\mathrm{Q_2}\)と\(\mathrm{Q_3}\)がONのまま、十分に時間が経過した状態です。
区間④の動作
- 電流経路:\(E_d \to \mathrm{Q_3} \to R \to L \to \mathrm{Q_2} \to E_d\)
- 出力電圧:\(v_0 = -E_d\)
- 出力電流:\(i_0 < 0\)(負方向に反転)
- リアクトル:エネルギーを蓄積している
【区間①】\(\mathrm{Q_1-Q_4}\)がON、直後
\(\mathrm{Q_1}\)と\(\mathrm{Q_4}\)がONになった直後の状態です。リアクトルが電流を維持しようとします。
区間①の動作
- 電流経路:\(L \to \mathrm{D_1} \to E_d \to \mathrm{D_4} \to R \to L\)
- 出力電圧:\(v_0 = +E_d\)
- 出力電流:\(i_0 < 0\)(まだ負方向を維持)
- リアクトル:エネルギーを放出している
★電圧は正になったが、電流はまだ負!→ ダイオードが導通
デバイス判別の法則
導通デバイスの判別方法
| 電圧と電流の関係 | 導通デバイス | 状態 |
|---|---|---|
| \(v_0\)と\(i_0\)が同符号 | IGBT(Q) | 電力を負荷に供給 |
| \(v_0\)と\(i_0\)が異符号 | ダイオード(D) | 電力を電源に回生 |
★この法則を覚えれば、どの区間でどのデバイスが導通するか即答できます!
時定数の計算
RL回路の時定数は、電流や電圧が変化する速さを表す重要なパラメータです。
時定数とは?
時定数の定義
時定数\(\tau\)は、過渡現象において電流や電圧が最終値の約63.2%に達するまでの時間です。
- 時定数が大きい → 変化が遅い(ゆっくり収束)
- 時定数が小さい → 変化が速い(すぐに収束)
RL回路の時定数
RL回路の時定数公式
\[\tau = \frac{L}{R}\]
ここで、
- \(\tau\):時定数\(\mathrm{[s]}\)
- \(L\):インダクタンス\(\mathrm{[H]}\)
- \(R\):抵抗\(\mathrm{[\Omega]}\)
RC回路の時定数(参考)
RC回路の時定数公式
\[\tau = CR\]
ここで、
- \(\tau\):時定数\(\mathrm{[s]}\)
- \(C\):静電容量\(\mathrm{[F]}\)
- \(R\):抵抗\(\mathrm{[\Omega]}\)
過渡応答の式
RL回路でスイッチを閉じたときの電流と電圧の変化は、次の式で表されます。
RL回路の過渡応答
リアクトル電圧:\(V_L = E \cdot e^{-\frac{R}{L}t} = E \cdot e^{-\frac{t}{\tau}}\)
回路電流:\(I_L = \dfrac{E}{R}\left(1 - e^{-\frac{R}{L}t}\right) = \dfrac{E}{R}\left(1 - e^{-\frac{t}{\tau}}\right)\)
時定数と変化の関係
| 経過時間 | 到達率 | 説明 |
|---|---|---|
| \(t = \tau\) | 約63.2% | 1時定数後 |
| \(t = 2\tau\) | 約86.5% | 2時定数後 |
| \(t = 3\tau\) | 約95.0% | 3時定数後 |
| \(t = 5\tau\) | 約99.3% | ほぼ定常状態 |
実用的な目安
一般に、5時定数(\(5\tau\))経過すれば、ほぼ定常状態に達したと見なせます。
計算例
例題
\(L = 2 \ \mathrm{mH} = 2 \times 10^{-3} \ \mathrm{H}\)、\(R = 1 \ \mathrm{\Omega}\)のとき、時定数は?
\[ \begin{align} \tau &= \frac{L}{R} \\[10pt] &= \frac{2 \times 10^{-3}}{1} \\[10pt] &= 0.002 \ \mathrm{[s]} \\[10pt] &= 2 \ \mathrm{[ms]} \end{align} \]
単位変換に注意
- \(1 \ \mathrm{mH} = 10^{-3} \ \mathrm{H}\)
- \(1 \ \mathrm{\mu H} = 10^{-6} \ \mathrm{H}\)
- \(1 \ \mathrm{ms} = 10^{-3} \ \mathrm{s}\)
単位を揃えてから計算しましょう。
例題で実践しよう
実際の試験問題を解いて、理解を確認しましょう。
IGBTを用いた単相ブリッジ接続の電圧形インバータがある。直流電圧\(E_d \ \mathrm{[V]}\)は一定値と見なせる。出力端子には、インダクタンス\(L \ \mathrm{[H]}\)で抵抗値\(R \ \mathrm{[\Omega]}\)の誘導性負荷が接続されている。インバータの動作モードを①~④とする。
(a) 区間①~④において電流が流れているデバイスの組合せを選べ。
(b) 電源電圧\(E_d = 100 \ \mathrm{V}\)、\(L = 2 \ \mathrm{mH}\)、\(R = 1 \ \mathrm{\Omega}\)のとき、時定数\(\tau \ \mathrm{[s]}\)を求めよ。
(a) の解答
各区間の電圧・電流の符号から、導通デバイスを判別します。
区間①:\(v_0 = +E_d\)、\(i_0 < 0\)
- 電圧と電流が異符号 → ダイオードが導通
- \(v_0 > 0\)なので、\(\mathrm{Q_1-Q_4}\)側の回路
- \(i_0 < 0\)なので、ダイオード\(\mathrm{D_1-D_4}\)を通る
答え:\(\mathrm{D_1-D_4}\)
区間②:\(v_0 = +E_d\)、\(i_0 > 0\)
- 電圧と電流が同符号 → IGBTが導通
- \(v_0 > 0\)なので、\(\mathrm{Q_1-Q_4}\)がON
答え:\(\mathrm{Q_1-Q_4}\)
区間③:\(v_0 = -E_d\)、\(i_0 > 0\)
- 電圧と電流が異符号 → ダイオードが導通
- \(v_0 < 0\)なので、\(\mathrm{Q_2-Q_3}\)側の回路
- \(i_0 > 0\)なので、ダイオード\(\mathrm{D_2-D_3}\)を通る
答え:\(\mathrm{D_2-D_3}\)
区間④:\(v_0 = -E_d\)、\(i_0 < 0\)
- 電圧と電流が同符号 → IGBTが導通
- \(v_0 < 0\)なので、\(\mathrm{Q_2-Q_3}\)がON
答え:\(\mathrm{Q_2-Q_3}\)
(a) の解答まとめ
| ① | ② | ③ | ④ |
|---|---|---|---|
| \(\mathrm{D_1-D_4}\) | \(\mathrm{Q_1-Q_4}\) | \(\mathrm{D_2-D_3}\) | \(\mathrm{Q_2-Q_3}\) |
(a) の答え:(5)
(b) の解答
時定数の計算
与えられた値:
- \(L = 2 \ \mathrm{mH} = 2 \times 10^{-3} \ \mathrm{H}\)
- \(R = 1 \ \mathrm{\Omega}\)
時定数の公式より:
\[ \begin{align} \tau &= \frac{L}{R} \\[10pt] &= \frac{2 \times 10^{-3}}{1} \\[10pt] &= 0.002 \ \mathrm{[s]} \end{align} \]
(b) の答え:(2) 0.002
解答のまとめ
| (a) | (b) |
|---|---|
| (5) | (2) 0.002 s |
判別の速解法
試験での判別テクニック
| 条件 | 導通デバイス | 覚え方 |
|---|---|---|
| \(v_0 > 0\) かつ \(i_0 > 0\) | \(\mathrm{Q_1-Q_4}\) | 電力供給(同符号→Q) |
| \(v_0 > 0\) かつ \(i_0 < 0\) | \(\mathrm{D_1-D_4}\) | 電力回生(異符号→D) |
| \(v_0 < 0\) かつ \(i_0 > 0\) | \(\mathrm{D_2-D_3}\) | 電力回生(異符号→D) |
| \(v_0 < 0\) かつ \(i_0 < 0\) | \(\mathrm{Q_2-Q_3}\) | 電力供給(同符号→Q) |
「同符号→Q(IGBT)」「異符号→D(ダイオード)」と覚えましょう!
🔍 ワンポイントアドバイス:単相ブリッジインバータの問題は「電圧と電流の符号」がカギ!同符号ならIGBT、異符号ならダイオードが導通します。時定数は\(\tau = L/R\)で即答できます。波形図の区間ごとに符号を確認する習慣をつけましょう!
今回は単相ブリッジ電圧形インバータの動作について学んでいくで!これは電験三種でかなり頻出のテーマやから、しっかり理解しておこな。
まず基本から確認や。インバータって何をする装置か分かるか?直流電源 \( E_{\mathrm{d}} \text{ [V]} \) から、交流の出力電圧 \( v_0 \) を作り出す装置やねん。
今回の回路は \( \mathrm{IGBT} \)(\( \mathrm{Q_1} \)~\( \mathrm{Q_4} \))と、それに逆並列に接続されたダイオード(\( \mathrm{D_1} \)~\( \mathrm{D_4} \))で構成されとる。負荷はインダクタンス \( L \text{ [H]} \) と抵抗 \( R \text{ [Ω]} \) の誘導性負荷や。
インバータは直流を交流に変換する装置ですね。太陽光発電システムや電気自動車のモーター駆動など、身近なところでも使われていますよね。
\( \mathrm{IGBT} \) はスイッチング素子として電流のON/OFFを制御し、ダイオードは電流の逆流を許容する「還流ダイオード」として働くということですか?
誘導性負荷というのがポイントになりそうですね。インダクタンスがあると電流が急に変化できないという性質がありますから。
その通りや!ええとこに気づいたな。インダクタンス \( L \) の性質がこの問題を解くカギになるんや。
インダクタンスには「電流の連続性」っていう超重要な性質があるねん。つまり、インダクタンスを流れる電流は瞬時には変化できへん。急にゼロになったり、急に向きが変わったりせえへんのや。
これがなんで大事かっていうと、スイッチング素子(\( \mathrm{Q_1} \)~\( \mathrm{Q_4} \))をON/OFFしても、負荷電流 \( i_0 \) はすぐには変われへんってことや。じゃあ、スイッチがOFFになった瞬間、電流はどこを流れると思う?
なるほど、電流が急に変化できないということは、スイッチがOFFになっても電流は流れ続けないといけないんですね。
そのとき電流の通り道になるのが、還流ダイオード(\( \mathrm{D_1} \)~\( \mathrm{D_4} \))ということですか!インダクタンスに蓄えられたエネルギーを放出しながら、ダイオードを通って電流が流れ続けるんですね。
つまり、同じ出力電圧 \( v_0 \) でも、電流の向きによって流れる素子が違うということになりますね。
完璧や!その理解で正解やで。ほな、図2の波形を見ながら各区間の動作を分析していこか。
動作を理解するポイントは2つや:
① 出力電圧 \( v_0 \) の極性:\( +E_{\mathrm{d}} \) か \( -E_{\mathrm{d}} \) か
② 出力電流 \( i_0 \) の極性:正(\( i_0 > 0 \))か負(\( i_0 < 0 \))か
この2つの組み合わせで、どの素子に電流が流れるか決まるんや。電圧と電流の極性が同じなら \( \mathrm{IGBT} \) に、逆なら還流ダイオードに電流が流れる。なんでか分かるか?
電圧と電流の極性が同じ場合は、電源から負荷に電力が供給されている状態ですよね。このとき \( \mathrm{IGBT} \) がONになって電流を流します。
逆に、電圧と電流の極性が逆の場合は、インダクタンスに蓄えられたエネルギーが電源側に回生されている状態です。このとき \( \mathrm{IGBT} \) はONでも電流は流れず、還流ダイオードを通って電流が流れるんですね。
電力の向き(\( P = v_0 \times i_0 \) の正負)で考えると分かりやすいです!
素晴らしい理解や!ほな、区間①から順番に見ていこか。
図2を見ると、区間①では:
・出力電圧 \( v_0 = +E_{\mathrm{d}} \)(正)
・出力電流 \( i_0 < 0 \)(負)
電圧は正やのに電流は負や。これはどういう状態やと思う?どの素子に電流が流れとるか考えてみ。
電圧が正で電流が負ということは、電力 \( P = v_0 \times i_0 < 0 \) なので、負荷から電源へエネルギーが戻っている状態ですね。
\( v_0 = +E_{\mathrm{d}} \) を出力するには \( \mathrm{Q_1} \) と \( \mathrm{Q_4} \) がONになっているはずですが、電流が負なので \( \mathrm{IGBT} \) には流れません。代わりに還流ダイオード \( \mathrm{D_1} \) と \( \mathrm{D_4} \) を通って電流が流れているんですね!
インダクタンスに蓄えられていたエネルギーが、ダイオード経由で電源に回生されている状態です。
正解や!区間①では \( \mathrm{D_1} \)-\( \mathrm{D_4} \) に電流が流れとる。回路図で確認してみよか。
図のように、\( L \) → \( \mathrm{D_1} \) → \( E_{\mathrm{d}} \) → \( \mathrm{D_4} \) → \( R \) → \( L \) という経路で電流が流れとるんや。
\( \mathrm{Q_1} \) と \( \mathrm{Q_4} \) はON状態やけど、電流の向きが逆やからダイオードを通るんやな。これを「回生動作」って呼ぶで。
回路図で見ると電流の流れがよく分かりますね。負の電流(図の下から上への電流)がダイオード \( \mathrm{D_1} \) と \( \mathrm{D_4} \) を通って、電源 \( E_{\mathrm{d}} \) に戻っています。
回生動作ということは、インダクタンスに蓄えられたエネルギーが電源側に返されているんですね。電気自動車の回生ブレーキと同じ原理ですか?
そうそう、まさに同じ原理や!ええ例えやな。
ほな次、区間②を見てみよか。図2を見ると:
・出力電圧 \( v_0 = +E_{\mathrm{d}} \)(正)
・出力電流 \( i_0 > 0 \)(正)
今度は電圧も電流も正や。この状態ではどの素子に電流が流れると思う?
電圧も電流も正ということは、電力 \( P = v_0 \times i_0 > 0 \) なので、電源から負荷に電力が供給されている状態ですね。
このとき \( \mathrm{Q_1} \) と \( \mathrm{Q_4} \) がONで、電流もその方向に流れているので、\( \mathrm{IGBT} \) の \( \mathrm{Q_1} \)-\( \mathrm{Q_4} \) に電流が流れます!
区間①から②への変化は、インダクタンスのエネルギー放出が終わって、電源から電力供給が始まったということですね。
完璧や!区間②では \( \mathrm{Q_1} \)-\( \mathrm{Q_4} \) に電流が流れとる。回路図はこうなるで。
\( E_{\mathrm{d}} \) → \( \mathrm{Q_1} \) → \( L \) → \( R \) → \( \mathrm{Q_4} \) → \( E_{\mathrm{d}} \) という経路で電流が流れて、インダクタンス \( L \) にエネルギーが蓄えられていくんや。
これが「力行動作」や。電源からエネルギーを供給しとる状態やな。
力行動作と回生動作、対になる概念ですね。区間①が回生、区間②が力行ということですか。
整理すると、同じ \( v_0 = +E_{\mathrm{d}} \) でも:
・\( i_0 < 0 \) のとき → \( \mathrm{D_1} \)-\( \mathrm{D_4} \)(回生)
・\( i_0 > 0 \) のとき → \( \mathrm{Q_1} \)-\( \mathrm{Q_4} \)(力行)
電流の極性で流れる素子が決まるんですね!
その整理の仕方、めっちゃ分かりやすいな!ほな、区間③と④も同じ考え方で行くで。
区間③では:
・出力電圧 \( v_0 = -E_{\mathrm{d}} \)(負)
・出力電流 \( i_0 > 0 \)(正)
電圧は負やけど電流は正や。\( v_0 = -E_{\mathrm{d}} \) を出すには \( \mathrm{Q_2} \) と \( \mathrm{Q_3} \) がONになるはずやけど、電流はどの素子を流れると思う?
電圧が負で電流が正なので、電力 \( P = v_0 \times i_0 < 0 \) で回生動作ですね。
\( \mathrm{Q_2} \) と \( \mathrm{Q_3} \) はONになっていますが、電流の向きが逆なので \( \mathrm{IGBT} \) には流れません。還流ダイオード \( \mathrm{D_2} \)-\( \mathrm{D_3} \) に電流が流れます!
区間②でインダクタンスに蓄えられたエネルギーが、今度はダイオード経由で電源に戻されているんですね。
正解や!区間③では \( \mathrm{D_2} \)-\( \mathrm{D_3} \) に電流が流れとる。回路図で確認しよか。
\( L \) → \( R \) → \( \mathrm{D_3} \) → \( E_{\mathrm{d}} \) → \( \mathrm{D_2} \) → \( L \) という経路やな。
電流 \( i_0 > 0 \) を維持しようとして、インダクタンスのエネルギーがダイオード経由で放出されとるんや。
なるほど、スイッチングの切り替え直後は、インダクタンスが電流を維持しようとするので、必ず還流ダイオードを通る期間があるんですね。
出力電圧の極性が変わっても、電流はすぐには追従できない。これがインダクタンスの「電流の連続性」の具体例ですね。
その通りや!最後に区間④を確認しよか。
区間④では:
・出力電圧 \( v_0 = -E_{\mathrm{d}} \)(負)
・出力電流 \( i_0 < 0 \)(負)
電圧も電流も負やから、電力 \( P > 0 \) で力行動作やな。このとき電流が流れる素子は?
電圧も電流も負なので、\( \mathrm{Q_2} \) と \( \mathrm{Q_3} \) がONで、電流もその方向に流れています。だから \( \mathrm{Q_2} \)-\( \mathrm{Q_3} \) に電流が流れますね!
回路図を見ると、\( E_{\mathrm{d}} \) → \( \mathrm{Q_3} \) → \( R \) → \( L \) → \( \mathrm{Q_2} \) → \( E_{\mathrm{d}} \) という経路です。区間②の逆向きバージョンですね。
これで①~④すべての動作が理解できました!
よっしゃ!ほな(a)の答えをまとめるで。各区間で電流が流れる素子は:
・区間① (\( v_0 = +E_{\mathrm{d}} \), \( i_0 < 0 \)):\( \mathrm{D_1} \)-\( \mathrm{D_4} \)
・区間② (\( v_0 = +E_{\mathrm{d}} \), \( i_0 > 0 \)):\( \mathrm{Q_1} \)-\( \mathrm{Q_4} \)
・区間③ (\( v_0 = -E_{\mathrm{d}} \), \( i_0 > 0 \)):\( \mathrm{D_2} \)-\( \mathrm{D_3} \)
・区間④ (\( v_0 = -E_{\mathrm{d}} \), \( i_0 < 0 \)):\( \mathrm{Q_2} \)-\( \mathrm{Q_3} \)
選択肢を見ると、この組み合わせに一致するのはどれや?
選択肢を確認すると:
(5) \( \mathrm{D_1} \)-\( \mathrm{D_4} \)、\( \mathrm{Q_1} \)-\( \mathrm{Q_4} \)、\( \mathrm{D_2} \)-\( \mathrm{D_3} \)、\( \mathrm{Q_2} \)-\( \mathrm{Q_3} \)
これが完全に一致しています。答えは(5)ですね!
覚え方としては「電圧と電流の極性が同じなら \( \mathrm{IGBT} \)、逆なら還流ダイオード」と整理しておけば、どんな問題でも対応できそうです。
完璧や!ほな(b)の問題に進もか。時定数 \( \tau \) についての問題やな。
まず時定数の基本を確認しとこか。\( R \)-\( L \) 直列回路に電圧 \( E \) を加えたとき、電流 \( i \) は次の式で表されるんや:
\[ i = \frac{E}{R}\left(1 - \mathrm{e}^{-\frac{R}{L}t}\right) \]この式の指数部分 \( \displaystyle \frac{R}{L}t \) に注目や。\( \displaystyle t = \frac{L}{R} \) のとき、指数部分が \( 1 \) になるやろ?この時間を時定数 \( \tau \) って呼ぶんや。
\( R \)-\( L \) 回路の時定数は \( \displaystyle \tau = \frac{L}{R} \) ですね。
時定数の物理的な意味としては、\( t = \tau \) のとき \( \mathrm{e}^{-1} \approx 0.368 \) なので、電流は最終値の約 \( 63.2\% \)(\( = 1 - 0.368 \))に達するということですよね。
時定数が大きいほど、電流の変化がゆっくりになるということですか?
その通り!時定数 \( \tau \) が大きいほど、最終値に収束するまで時間がかかるんや。
ほな、問題の数値を代入して計算してみよか。与えられた条件は:
・インダクタンス \( L = 2 \text{ [mH]} = 2 \times 10^{-3} \text{ [H]} \)
・抵抗 \( R = 1 \text{ [Ω]} \)
時定数 \( \tau \) を計算してみ!
時定数の公式 \( \displaystyle \tau = \frac{L}{R} \) に代入します。
\[ \begin{aligned} \tau &= \frac{L}{R} \\[10pt] &= \frac{2 \times 10^{-3}}{1} \\[10pt] &= 2 \times 10^{-3} \\[10pt] &= 0.002 \text{ [s]} \end{aligned} \]選択肢を見ると、(2) \( 0.002 \) が該当します。答えは(2)ですね!
正解や!計算もばっちりやな。
ちなみに、\( \tau = 0.002 \text{ [s]} = 2 \text{ [ms]} \) っていうのは、実際のインバータとしてはかなり小さい値やねん。一般的にインバータのスイッチング周波数は数kHz~数十kHzやから、1周期が \( 0.1 \text{ [ms]} \)~\( 1 \text{ [ms]} \) くらい。
時定数がスイッチング周期より大きいと、電流がなかなか変化せえへんから、電流リップル(電流の脈動)が小さくなるんや。これはインバータの設計で重要なポイントやで。
なるほど、時定数とスイッチング周期の関係が電流リップルに影響するんですね。
\( L \) を大きくすれば時定数が大きくなってリップルは減りますが、インダクタが大型化してコストが上がる。逆に \( L \) を小さくするとリップルが増えて損失が増える。トレードオフの関係ですね。
実務ではこのバランスを考えて設計するということですか。
その通りや!実務の視点も持てるようになってきたな。
最後にこの問題のポイントをまとめとくで:
【単相ブリッジインバータの動作】
・電圧と電流の極性が同じ → \( \mathrm{IGBT} \) に電流(力行)
・電圧と電流の極性が逆 → 還流ダイオードに電流(回生)
・インダクタンスは電流の連続性を保つ
【時定数】
・\( R \)-\( L \) 回路:\( \displaystyle \tau = \frac{L}{R} \)
・\( R \)-\( C \) 回路:\( \tau = CR \)
この問題は令和4年下期からの再出題や。インバータの動作原理は頻出やから、しっかり押さえておいてな!
ありがとうございます!整理すると:
(a)の答え:(5)
① \( \mathrm{D_1} \)-\( \mathrm{D_4} \)、② \( \mathrm{Q_1} \)-\( \mathrm{Q_4} \)、③ \( \mathrm{D_2} \)-\( \mathrm{D_3} \)、④ \( \mathrm{Q_2} \)-\( \mathrm{Q_3} \)
(b)の答え:(2) \( 0.002 \text{ [s]} \)
インバータの動作は「電圧と電流の極性」で判断する、時定数は \( \displaystyle \tau = \frac{L}{R} \) で求める。これをしっかり覚えておきます!
解説まとめ
■ 単相ブリッジ電圧形インバータとは
単相ブリッジ電圧形インバータは、直流電源から交流電力を生成する電力変換装置です。4つのスイッチング素子(IGBT)と4つの還流ダイオードで構成され、対角線上の素子を交互にON/OFFすることで、正負の交流電圧を出力します。誘導性負荷(インダクタンスを含む負荷)を接続した場合、電流の位相が電圧より遅れるため、電圧と電流の極性が異なる期間が生じ、その際にダイオードを通じて電源へエネルギーが回生されます。
■ 計算手順と公式
- インバータの動作モードの判定
電圧と電流の極性の組み合わせにより、どの素子に電流が流れるかが決まります。
- \( v_0 = E_d \) かつ \( i_0 > 0 \):\( \mathrm{Q_1-Q_4} \) が導通(力行モード)
- \( v_0 = E_d \) かつ \( i_0 < 0 \):\( \mathrm{D_1-D_4} \) が導通(回生モード)
- \( v_0 = -E_d \) かつ \( i_0 < 0 \):\( \mathrm{Q_2-Q_3} \) が導通(力行モード)
- \( v_0 = -E_d \) かつ \( i_0 > 0 \):\( \mathrm{D_2-D_3} \) が導通(回生モード)
- RL回路の時定数
インダクタンス \( L \ \mathrm{[H]} \) と抵抗 \( R \ \mathrm{[\Omega]} \) で構成される回路の時定数は次式で求められます。
\( \tau = \displaystyle\frac{L}{R} \ \mathrm{[s]} \)
■ 具体的な計算例
問題条件
- 直流電圧:\( E_d = 100 \ \mathrm{V} \)
- インダクタンス:\( L = 2 \ \mathrm{mH} = 2 \times 10^{-3} \ \mathrm{H} \)
- 抵抗:\( R = 1 \ \mathrm{\Omega} \)
【(a) 各区間で電流が流れるデバイスの判定】
区間①の判定
区間①では \( v_0 = E_d \)(正の電圧)かつ \( i_0 < 0 \)(負の電流)です。これは \( \mathrm{Q_1} \) と \( \mathrm{Q_4} \) がONになった直後の状態で、インダクタンスが負の電流を維持しようとするため、還流ダイオード \( \mathrm{D_1} \) と \( \mathrm{D_4} \) を通じて電流が流れ、電源にエネルギーが回生されます。
したがって、電流が流れるデバイスは \( \mathrm{D_1-D_4} \) です。
区間②の判定
区間②では \( v_0 = E_d \)(正の電圧)かつ \( i_0 > 0 \)(正の電流)です。インダクタンスのエネルギー放出が完了し、電源から負荷へ電力が供給される通常の力行モードとなり、\( \mathrm{Q_1} \) と \( \mathrm{Q_4} \) を通じて電流が流れます。
したがって、電流が流れるデバイスは \( \mathrm{Q_1-Q_4} \) です。
区間③の判定
区間③では \( v_0 = -E_d \)(負の電圧)かつ \( i_0 > 0 \)(正の電流)です。これは \( \mathrm{Q_2} \) と \( \mathrm{Q_3} \) がONになった直後の状態で、インダクタンスが正の電流を維持しようとするため、還流ダイオード \( \mathrm{D_2} \) と \( \mathrm{D_3} \) を通じて電流が流れ、電源にエネルギーが回生されます。
したがって、電流が流れるデバイスは \( \mathrm{D_2-D_3} \) です。
区間④の判定
区間④では \( v_0 = -E_d \)(負の電圧)かつ \( i_0 < 0 \)(負の電流)です。インダクタンスのエネルギー放出が完了し、電源から負荷へ電力が供給される通常の力行モードとなり、\( \mathrm{Q_2} \) と \( \mathrm{Q_3} \) を通じて電流が流れます。
したがって、電流が流れるデバイスは \( \mathrm{Q_2-Q_3} \) です。
結論(a):各区間で電流が流れるデバイスは、①\( \mathrm{D_1-D_4} \)、②\( \mathrm{Q_1-Q_4} \)、③\( \mathrm{D_2-D_3} \)、④\( \mathrm{Q_2-Q_3} \) となり、正解は (5) です。
【(b) 時定数の計算】
時定数の計算
RL回路の時定数は \( \tau = L/R \) で求められます。
\[ \begin{aligned} \tau &= \frac{L}{R} \\[5pt] &= \frac{2 \times 10^{-3}}{1} \\[5pt] &= 0.002 \ \mathrm{[s]} \end{aligned} \]結論(b):時定数は \( 0.002 \ \mathrm{s} \) となり、正解は (2) です。
■ 実務上の留意点
単相ブリッジインバータは、無停電電源装置(UPS)や小容量のモータ駆動など、様々な用途で使用される基本的な電力変換回路です。
- 還流ダイオードの役割:誘導性負荷では電流が急変できないため、スイッチング素子がOFFしても電流は流れ続けます。還流ダイオードはこの電流の経路を確保し、素子を過電圧から保護する重要な役割を担います。
- 電圧と電流の極性判定:インバータの動作解析では、出力電圧と出力電流の極性の組み合わせから、どの素子が導通しているかを判断します。電圧の極性はスイッチング状態で決まり、電流の極性はインダクタンスの特性で決まります。
- 力行と回生:電圧と電流が同極性のとき電力は負荷へ供給され(力行)、異極性のとき電力は電源へ戻ります(回生)。この回生動作により、インバータは高効率な電力変換が可能となります。
- 時定数と応答速度:時定数 \( \tau = L/R \) は電流の変化速度を決定します。時定数が大きいと電流変化が緩やかになり、リップル電流は小さくなりますが、応答速度は遅くなります。
- デッドタイム:実際の回路では、上下のスイッチが同時にONすることによる短絡を防ぐため、両方をOFFにするデッドタイムを設けます。本問では考慮していませんが、実務では重要な設計要素です。